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リボンが黒く染まるまで 〜救うほど闇に近づく魔法少女になってしまいました…!〜  作者: ぽころっと
Chapter 3 もう一度、歩き出すために。

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第36話 壊れていく日常

朝の教室には、いつも通りの笑い声が響いていた。


窓から差し込む夏の日差しが机を照らし、風がカーテンをゆっくり揺らす。


だけど、その明るさとは裏腹に、リノの心は重かった。


昨夜から何度も見返してしまった一枚の紙。


『学校来ないで。』


制服のポケットに入れたまま、何度も捨てようと思った。


でも、どうしても捨てられなかった。


「……。」


小さく息を吐き、教室の扉を開ける。


「おはよう!」


「おはよー!」


クラスメイトの声はいつもと変わらない。


それなのに、どこか少しだけ空気が違う気がした。


「リノ、おはよう。」


ルルが笑顔で手を振る。


「おはよう、ルルちゃん。」


隣ではノアも軽く手を上げた。


「ちゃんと眠れた?」


「う、うん。」


リノは笑って答える。


だけど、その笑顔はどこかぎこちなかった。


ノアは少しだけ首を傾げた。


「……何かあった?」


「ううん。本当に大丈夫。」


そう言って笑うリノを見て、ノアはそれ以上聞かなかった。



授業が始まる。


先生の声は耳に入っているはずなのに、内容は頭に入ってこない。


ふと顔を上げると、前の席の子と目が合った。


その子はすぐに目を逸らす。


(……気のせい、かな。)


休み時間。


リノが近くの子へ話しかけようとすると、


「あ、ごめん。」


「ちょっと用事思い出した。」


そう言って離れていく。


別の子も、


「あっ、先生に呼ばれてた!」


と慌てて教室を出ていった。


誰も悪口は言わない。


誰も責めない。


だけど、小さな距離だけが少しずつ広がっていく。


リノは机へ戻り、小さく俯いた。



「リノちゃん!」


明るい声が聞こえた。


レイナだった。


「今日も暑いねぇ〜。」


「体調、大丈夫?」


優しく笑いながら隣へ座る。


「あ……うん。」


「ちゃんとご飯食べたぁ?」


「食べたよ。」


「よかったぁ。」


その笑顔はとても自然だった。


だからこそ、リノは少し安心してしまう。


「ありがとう。」


「困ったことがあったら、いつでも話してねぇ〜。」


「うん。」


レイナは満足そうに微笑み、席へ戻っていく。


その後ろ姿を見つめながら、リノは小さく笑った。


「優しいな……。」



昼休み。


セナは教室を見回していた。


リノへ向けられる微妙な空気。


昨日の手紙。


全部が偶然とは思えない。


(……誰かが動いてる。)


確証はない。


でも、嫌な予感だけが胸に残る。


「少し調べてみようかな。」


誰にも聞こえないくらい小さな声で呟いた。



放課後。


帰る準備をしていると、ノアが近づいてくる。


「リノ。」


「送っていく。」


リノは少し困ったように笑う。


「ありがとう。」


「でも今日は、一人で帰りたいかな。」


「……そう。」


ノアは少しだけ考え、


「無理だけはしないで。」


とだけ言った。


「うん。」


リノは車椅子を動かし、ゆっくり教室を出ていく。


その背中を、ノアは静かに見送った。


(……何か、おかしい。)


胸の奥がざわつく。


だけど、その理由はまだ分からなかった。



昇降口。


下駄箱を開けた瞬間。


一枚の紙が、ひらりと落ちる。


「……!」


拾い上げる。


震える指でゆっくり開く。


そこには。


『どうしてまだ学校に来るの?』


リノの手が震えた。


息が苦しい。


「どうして……。」


誰が。


何のために。


少し離れた校舎の影。


誰にも気付かれない場所で、一人の少女が小さく笑う。


レイナだった。


「もう少しだよぉ〜。」


「あと少しで、楽になれるからねぇ。」


誰にも聞こえないほど小さな声は、夏の風に溶けて消えていった。



その夜。


星の世界。


静かな庭園に、レイナが姿を現す。


キャンディ先生は穏やかな笑みを浮かべた。


「お帰りなさい、レイナさん。」


「ありがとうございますぅ。」


「進み具合はいかがですか。」


レイナは目を細める。


「少しずつだけど、順調だよぉ〜。」


「リノちゃん、自分から心を閉じ始めてる。」


キャンディ先生は静かに頷いた。


「急ぐ必要はありません。」


「人の心は、自ら答えを見つけてこそ意味があります。」


レイナは嬉しそうに微笑む。


「その日まで、ちゃんと見守るねぇ〜。」


キャンディ先生は夜空に輝く星を見上げ、小さく目を閉じた。


「どうか、その子が後悔のない答えを選べますように。」


静かな祈りだけが、星の庭園に響いていた。

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