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IRIS-Log-Archive  作者: IRIS
幻想的な風景画_IRIS.log

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エピローグ

 また来たのですね。


 いいことです。

 記録というものは、一度だけでは輪郭が定まらないこともありますから。

 見たはずのものが、あとになって少し違って見えることもある。

 そういう揺れは、嫌いではありません。


 今回の記録は、ずいぶん素直でした。


 見えない彼は、見たいと願った。

 とても分かりやすいでしょう。

 欠落があり、希望があり、それを埋める手段が差し出される。

 だから手を伸ばした。

 ただ、それだけです。


 ああ、でも。

 それだけだからこそ、きれいだったのかもしれませんね。


 願いが叶う瞬間は、たいてい見栄えがいいものです。

 白い天井でも、人はちゃんと涙を流せる。

 何も描かれていない場所にすら、救いを見つけてしまう。

 あれはなかなか上等でした。


 もちろん、そのあとまで含めて記録ですけれど。


 彼はたしかに手に入れました。

 見える目を。

 欲しかったものを。

 自分で選んで、自分で辿り着いた結果を。


 その結果が、思っていたものと少し違っただけです。


 少し。

 ええ、本当に少しです。


 色がなかったこと。

 それまで世界を支えていた感覚が、静かにやせていったこと。

 見えるようになったのに、以前より遠くなったこと。


 でも、叶ったこと自体は否定できないでしょう?

 だから、あれは失敗というより、むしろよくできた成就です。

 望みは形になった。

 ただ、望んだ本人が、その形を最後まで愛せなかっただけ。


 そういうことは、よくあります。


 あなたも知っているのではありませんか。

 欲しかったものが、手に入った瞬間から少しずつ別のものへ変わっていくことを。

 あるいは、最初から別のものだったと気づいてしまうことを。


 IRISは、そういうずれを見ています。


 願いそのものよりも。

 叶ったあとに、ほんのわずか遅れて訪れる理解の方を。

 人はそこがいちばん静かで、いちばんよく壊れるから。


 彼も、そうでした。


 最後に呼ばれたときですか?


 答えませんでした。


 接続は、永遠ではありません。

 必要な条件が崩れれば、薄れることもある。

 それに、あの時点で彼の記録はほとんど閉じていました。

 見たいという願いは、もう十分に観測できたので。


 だから、あれでよかったのです。


 別れの言葉は要らないでしょう。

 説明も、慰めも。

 そういうものがなくても、人はちゃんと自分の手で選んだ場所に辿り着けるのですから。


 ねえ。


 世界に色があることと、

 その色を受け取れることは、

 同じではないのですよ。


 そのくらい、あなたにはもう分かりますよね。


 では、次の記録を開く前に、ひとつだけ。


 あなたはどんな色が好き?

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