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IRIS-Log-Archive  作者: IRIS
仕事の流儀_IRIS.log

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248/258

近い仕事

次の仕事は、近かった。


住所を見た時、最初にそう思った。


駅から二つ。

学校からも遠くない。

家から歩けば、三十分はかからない。


普段なら受けない。


生活圏で仕事をするのは、よくない。

見たことのある道が増える。

知っている店が増える。

知っている顔に出くわす可能性が増える。


仕事は、家から離しておくべきだった。


けれど、その仕事は後始末だった。


誰かが途中で投げた。

対象は残り、話は広がり、依頼人は慌てた。

最初に受けた人間は消えた。


残ったものを、俺が終わらせる。


そういう仕事だった。


俺は断らなかった。


中途半端な仕事ほど、戻ってくる。

戻ってくる前に終わらせる方がいい。


その日は、朝から雲が低かった。


ミオは玄関で黄色い傘を持っていた。


「今日は忘れない」


自分からそう言った。


「そうしろ」


「サナちゃんちに置いてきたら、お父さん怒る?」


「怒る前に、取りに戻らせる」


「えー」


「残したものは、取りに戻ることになる」


ミオは俺の口真似をした。


「なる」


「わかってるならいい」


ナツキが後ろからミオの髪を整えた。


「帰る時、暗くなる前にね」


「うん」


「寄り道しない」


「うん」


俺は靴を履いた。


ミオも靴を履いた。

片方の踵を踏んでいたので、俺はしゃがんで直した。


「ちゃんと履け」


「時間ない」


「そういう時に転ぶ」


ミオは黙って足を上げた。


俺は靴の踵を直し、紐を引いた。

強すぎないように結ぶ。


「はい」


「ありがと」


ミオは傘を持って、玄関を出た。


俺は少し遅れて家を出た。


道の角で、ミオの黄色い傘が揺れているのが見えた。

まだ開いていない傘を、剣みたいに振って歩いていた。


「振るな」


少し大きめに言うと、ミオは振り返って舌を出した。


それから、まっすぐ走っていった。


俺はその背中を見送ってから、逆の道へ曲がった。

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