仕事
仕事には、終わりがある。
始まったものは、終わらせなければならない。
途中で置いておくと、残る。
残ったものは、形を変えて戻ってくる。
だから俺は、残さない。
相手の名前は確認する。
顔も確認する。
場所も確認する。
それ以上は、必要ない。
相手に家族がいるか。
借金があるか。
誰かに恨まれているか。
子供がいるか。
明日の予定があるか。
そういうことは、仕事には関係がない。
関係があると思った瞬間に、手が遅れる。
手が遅れれば、音が増える。
音が増えれば、人が見る。
人が見れば、仕事は終わらない。
その日の仕事も、予定通りに終わった。
正確には、終わったと思った。
廊下に出る前、隣の部屋の扉が少しだけ開いていることに気づいた。
中にいた男と目が合った。
男は声を出さなかった。
声を出す前に、俺が動いたからだ。
目撃者がいるなら、仕事はまだ終わっていない。
目撃者を残すことは、失敗ではない。
失敗より悪い。
未完了だ。
未完了の仕事は、必ず誰かのところへ戻ってくる。
依頼人のところへ。
俺のところへ。
家の近くへ。
だから、そこで終わらせる。
それは残酷さではない。
乱暴さでもない。
責任だった。
俺は終わった部屋を見て、時間を確認した。
予定より四分遅れていた。
それ以外に、問題はなかった。




