高尚な誤り
張り込みまでの間、私は被害の出た家をさらに二軒見て回った。
結論から言えば、どこもよく似ていた。
被害は女性の私室。
窓からの侵入。
高価なものには手をつけない。
そして盗まれるのは、どう考えても換金目的とは思えない品だけ。
二軒目の家では、若い令嬢が泣きそうな顔で「お願いですから父には」と言い、三軒目の未亡人は青白い顔で「これを面白半分に広めたら承知しませんよ」と言った。
私は両者に同じだけ丁寧に頷いた。
事件を扱う者に必要なのは、同情ではなく礼儀だ。もっとも、私は礼儀を十分に備えているつもりでいる。
三軒目の帰り道、ワットソン君が歩調を合わせながら言った。
「シャーク、本当に階級への挑戦だと思っているんですか」
「もちろんです」
「しかし、盗まれているのが盗まれている物ですからね」
「だからこそですよ」
私はステッキを鳴らし、通りを曲がった。
「宝石を盗む者は金を欲しがる。銀器を盗む者は売値を欲しがる。だが、こういう品を選ぶ者は、それそのもの以上の意味を欲しがる」
「意味というか……執着では?」
「執着とは意味の濃縮です」
「妙にそれっぽいことを言いますね」
「それっぽいのではありません。正しいのです」
ワットソン君は肩をすくめた。
「ではお聞きしますが、その高尚ぶった犯人は、なぜ洗いたてばかり狙うんでしょう」
「清潔さへの異様なこだわりでしょうね」
「高尚ですねえ」
「あるいは、使用済みを盗るほど露骨ではないという、本人なりの品性の主張かもしれない」
「それ、余計にどうしようもない感じがしませんか」
私は少しだけ考え、素直に認めた。
「たしかに、どうしようもない」
「でしょう」
「ですが、どうしようもない者ほど、自分をどうしようもなく見せたがらないのです。そこに必ず偽装がある」
ワットソン君は口元を押さえて笑った。
「私は時々、あなたがものすごく賢いのか、妙な方向へだけ全力なのか分からなくなります」
「両立は可能です」
「胸を張って言うことではないでしょう」
その時、通りの向こうから洗濯籠を抱えた女中が出てきた。籠の上には白布が重ねられ、その隙間からレースの端が揺れている。
私は足を止めた。
「なるほど」
「何がです?」
「舞台です」
「はい?」
「犯人は暗闇に忍び込み、秘めたる領域から獲物を奪うのではない。むしろ、その直前から見ている可能性がある」
「洗濯の時点から、ということですか」
「そうです。屋敷の内情に詳しいのか、あるいは周囲を観察しているのか」
「そっちはずいぶんまともな推理ですね」
「私は常にまともです」
「そこは争点でしょう」
私は無視した。
女中が籠を抱えたまま裏口へ消える。あの程度の短い観察でも、犯人には十分だ。洗いたての品がどこへ運ばれ、誰の部屋へ戻されるかを見ていれば、狙いは定められる。
「今夜です」
私は断言した。
「来るなら、今夜。犯人は被害者の羞恥に慣れてしまっている。成功を重ねた犯罪者は、自分の見つからなさを才能だと勘違いする」
「それは聞こえがいいですね」
「実際には、ただ調子に乗っているだけですが」
「その物言い、今夜の犯人にそのまま渡したいですよ」
私は微笑んだ。
調子に乗った人間ほど、捕まる瞬間の顔が面白い。
夜を待つ理由としては、それで十分だった。




