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IRIS-Log-Archive  作者: IRIS
青春と霧_IRIS.log

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197/258

プロローグ

 人は一人で生きていけない。気高く生きるとか、人を離れさせる馬鹿みたいな行為だ。


 そう思ってる。


 別に、すごく特別なことじゃないだろ。人に合わせるのなんて普通だし、多少キャラを変えるのだって当たり前だ。相手によって話し方が変わるのも、笑うところが変わるのも、空気読んでるだけの話でしかない。そこで「これが本当の自分だから」とか言い出して場を冷やすやつの方が、よっぽど不器用で迷惑だと思う。


 一人でいられるやつは、それでいい。


 でも俺は違う。


 一人は嫌だ。

 昼休みに机で一人、放課後も一人、帰り道も一人。そういうのを平気な顔でやれるほど、俺は強くない。だから誰かといる。誰とでもいる。別に難しいことじゃない。話を合わせて、適当に笑って、向こうが気持ちよく喋れるようにしてやれば、大体どこにでも入れる。


 教室の後ろでだるそうにしてるやつらと駄弁るのもできるし、真面目な顔して進路の話してる連中の横に座るのもできる。部活帰りの流れに乗るのも、帰る方向が同じやつと何となく一緒に歩くのも、夜に通話に入って適当に喋るのも、全部それなりにできる。


 別に誰かを騙してるつもりはない。


 相手が見たい俺を、ちょっとずつ出してるだけだ。


 それの何が悪いのか分からない。むしろ、そうやってちゃんと人と繋がっていける方が偉いだろ。自分を守るみたいな顔して一人でいる方が、よっぽど馬鹿みたいだ。


 少なくとも、俺はそう思ってる。


 思ってる、はずだ。


 朝の教室は、いつも少し曇って見える。窓の外が晴れてても関係ない。人が増える前の空気は、机も椅子も妙に余って見えて、そこに一人で座ってると世界の輪郭がはっきりしすぎる。だから俺は、できるだけその時間を短くする。


 教室に入った時、すでに何人か来ているのが見えた。後ろの方で昨日の動画の話をしてるやつら、前の方で小テストの確認をしてるやつら、その中間でぼんやり端末をいじってるやつ。俺は一瞬だけ教室を見渡して、それから迷わず後ろへ向かった。


「おはよ」


「お、ユウ」


「昨日あれ見た?」


 それだけで十分だ。座る場所はできる。笑う場所も、適当に相づち打つところも、すぐ決まる。


 皆そうしてる。

 俺もそうしてる。

 ただ少し、それが上手いだけだ。


 だから、大丈夫だと思ってる。


 ちゃんと人と繋がれてるって。


 少なくとも、誰もいないところに一人で立ってるよりは、ずっとましだって。

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