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エピローグ
人は、見たこともないものによく似た話を好む。
海の底にいるものへ名をつけ、効き目をつけ、価値をつける。
そうして噂は、事実であるから残るのではなく、面白く、恐ろしく、欲を刺激するから残っていく。
人魚を食べれば不老不死。
そんな話を、村の者たちは半ば笑いながら口にしていた。
けれど笑い話は、ときどき本当に誰かを喰う。
その日、皿を囲んでいた者たちにとって、あれは珍しい獲物でしかなかった。
祝いの席に出された、運のいい一皿だった。
だがひとりの男にとっては、花を渡し、声を聞き、会いたいと願った相手の最期だった。
同じ白い花でも、あるときは想いのしるしになり、あるときは料理を飾る添え物になる。
花は変わらない。
意味を変えるのは、いつも人の側だ。
この記録でも、海は静かだった。
潮は満ちて、引いた。
噂は残り、花は枯れ、貝がらだけが手元に残った。
人は噂を語る。
そして時折、誰かの本物の愛は、その噂ひとつに食い潰される。
あなたは噂話は好き?




