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花束
花束ができあがるまで、僕は何も言えなかった。
言葉を探しても、指の輪ばかり目に入る。
そんなもの、見えていればすぐ分かったはずだ。
半年もあったのに。
ユリさんは最後にリボンを結んで、満足そうに花束を見た。
「きれい。きっと喜ぶよ」
そう言って、僕に抱えさせてくれた。
重かった。
花の重さだけじゃなかった。
「がんばってね」
ユリさんは、明るい声で言った。
僕が誰に渡すつもりなのか、何も知らない人みたいに。
いや、実際、知らなかったんだろう。
僕は一度も言わなかったのだから。
それから、ふと思い出したみたいに、自分の左手を少し持ち上げた。
「最近、結婚したんです。君も告白成功するといいね」
と言われて、僕は立ち尽くしてしまった。




