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花言葉
「薔薇は、やっぱり特別ですか」
ある日、僕は訊いた。
ユリさんは束ねていた花から顔を上げて、少しだけ首をかしげた。
「特別って?」
「その、告白とか」
「そうね。いちばん分かりやすいかも」
そう言って、ユリさんは赤い薔薇を一本持ち上げた。
花びらがまだ固く巻いていて、これから開く途中だった。
「何本にするかでも意味が変わるっていう人もいるわ」
「へえ」
「でも、ほんとはね」
ユリさんは薔薇を戻しながら笑った。
「渡す人が、ちゃんと選んだってことが一番大事なんじゃないかな」
その言葉で、僕は決めてしまった。
薔薇にする。
ほかの花じゃない。
一番まっすぐで、一番分かりやすい花にする。
アネモネの期待も。
百合の清らかさも。
かすみ草の添えられる感じも、きれいだと思う。
でも、僕が渡したいのは薔薇だ。
回りくどいのは違う気がした。
僕は不器用だし、うまく言えない。
だからこそ、花くらいは真っ直ぐにしたかった。
九十九本。
店先で見かけた誰かが、百本は一本足りない感じがするけど、九十九本は完成している感じがすると言っていた。
その意味が本当かどうかは知らない。
でも、僕にはしっくりきた。
足りないようで、もう十分なくらい、いっぱいの数。
それが、僕の半年に似ていた。




