表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
IRIS-Log-Archive  作者: IRIS
愛する君に花束を_IRIS.log

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

169/269

花屋の人

最初に会った時から、ユリさんはやさしかった。


「少し待ってね。今、包むから」


そう言って、花を抱える手つきがきれいだった。

花を乱暴に置くことがない。

茎をそろえて、紙を巻いて、紐を結ぶ。

その動きが静かで、見ていると胸の奥まで落ち着いた。


僕は配達票を握ったまま、ぼんやりその手を見ていた。


「アネモネ、好き?」


突然そう聞かれて、僕は慌てた。


「え、いや、好きとかは」

「きれいよ。花言葉も、わりと有名」


ユリさんは笑った。

笑うと、年上の人らしい落ち着きが少しやわらいで、近く感じた。


「何て意味ですか」

「色々あるけどね。期待とか、希望とか」


その日、僕は届け先までの道で、包み紙の端からのぞく赤いアネモネを何度も見た。


別に、僕に向けて言ったわけじゃない。

分かっている。

でも、そういう何でもない一言が、ずっと残ることってある。


それから花を受け取りに行くたび、僕は少しだけ話すようになった。


百合。

薔薇。

カーネーション。

かすみ草。


花には名前があって、意味がある。

僕はそれを、ユリさんの口から聞くのが好きだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ