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プロローグ
自分は人を見る目があると思う。
そう言うと、少し格好つけているみたいに聞こえるかもしれない。
だから、胸の中でだけそう思っている。
あの人はやさしい人だとか。
この人は怒っているけど本当は困っているだけだとか。
そういうのは、なんとなく分かる気がしていた。
だから、ユリさんのことも、きっとちゃんと見えていると思っていた。
僕は町の配達をしている。
店から頼まれた品を受け取って、別の店へ運ぶ。
酒屋の箱、紙袋に入った菓子、包まれた反物、祝いの品。
その中に、ときどき花がある。
花を届ける日は、少しだけうれしい。
仕入れ先の花屋に、ユリさんがいるからだ。
半年。
たった半年なのに、僕の中ではずいぶん長い時間になっていた。




