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プロローグ
真面目に生きるって、馬鹿みたいじゃない?
真面目なやつが損をする。遅刻しない、愛想よくする、頼まれごとを断らない、嫌なことがあっても笑う。そういうのをきちんと積み上げた人間が、ちゃんと報われるところなんて、私は見たことがない。
だったら、最初から勝ち方を変えればいい。
私は絶対、損なんてしたくない。
子どもの頃からそうだった。
母が作った煮物を親戚に出す前、私は小皿を一枚運んだだけなのに、「アヤちゃんはよくお手伝いして偉いわね」って頭を撫でられた。洗濯物だって、畳み終わった山の一番上を二枚だけ揃えただけで、「しっかり者ね」と褒められた。
ああ、って思った。
全部やる必要なんてないんだ、って。
見えるところだけ整っていれば、人は勝手にその奥まで想像してくれる。
それはとても楽で、とても賢くて、とても美しいやり方に思えた。
だから私は、今日までずっとそうしてきた。
見えるところだけを、丁寧に整えて。




