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エピローグ
飢えは、見苦しいものではありません。
ただ、隠しにくいだけです。
空いた腹は音を立てますし、足りないものは目に出ます。
取り繕う前に、零れてしまう。
だから、飢えはきれいです。
あの子は空腹でした。
ひどく、はっきりと。
言葉より先に、生きるための不足を抱えていました。
それでも、奪いませんでした。
奪う方が、ずっと楽だったのに。
正しさが報われる保証なんて、どこにもなかったのに。
あたたかい皿は、救いではありません。
ひとつの選択にすぎません。
けれど、生きる場所を変えるには、それで十分なこともある。
飢えたまま終わる記録も、たくさんあります。
手を伸ばしても、何も掴めないまま終わるものも。
これは、そうではなかった記録。
だから少しだけ、やさしく見えたでしょう。
では、あなたに聞きます。
あなたは飢えたことがある?




