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エピローグ
やっと、帰る場所ができたのですね。
最初は、何も持っていなかった。名前も、寝床も、明日の約束も。
ただ、その日を越えるためだけに生きていた。
それでも、あの子は生き延びた。
強かったからだけではありません。正しかったからでもない。
たまたま見つけられて、たまたま手を伸ばされて、たまたまそこに、あたたかい場所があった。
そういう記録も、IRISは嫌いではありません。
あなたは、どうでしょう。
名前を呼ばれること。帰る場所があること。待っている誰かがいること。
そういうぬくもりを、軽いと思いますか。ありふれていると思いますか。
ありふれているものほど、失くした時に冷たいのに。
ねぇ、あなたには帰る場所がある?




