退屈
俺はユウ。中学二年生だ。
自己紹介としては、それでほとんど終わりだった。
勉強は真ん中くらい。運動も真ん中くらい。顔もたぶん真ん中くらい。クラスの中で特別浮いているわけでも、特別好かれているわけでもない。
部活は一年の終わりにやめた。
理由は「合わなかったから」と言ってあるけど、本当は続けるほどの熱意がなかっただけだ。やめたあと、少しだけ惜しまれるかと思ったけれど、案外みんなあっさりしていた。
そういうところだなと思う。
俺がいなくても、別に何も変わらない。
朝、教室に入ると、もういくつかのグループができている。
昨日のテレビの話で盛り上がっているやつ。ゲームのランキングを見せ合っているやつ。今度のテストやばいって笑っているやつ。
俺も話しかけられれば返すし、こっちから混ざることもある。けど、誰かの会話の中心にいる感じは、一度もない。
「ユウ、英語のワークやった?」
隣の席の男子が聞いてきたので、「半分だけ」と答える。
「終わったら見せて」と言われて、「いいよ」と返す。
それだけだ。
それだけで会話は成立する。
でも、そこから先へはあまり続かない。
授業中、窓の外を見る。
校庭の隅の木が風で揺れていて、その向こうにマンションのベランダが並んでいる。
先生が何か説明している。黒板に英単語。ノートに書き写す手。
全部が薄い膜一枚向こうで起きているみたいに見えるときがあった。
放課後、友達と帰る日もある。
コンビニで肉まんを買って、誰が担任に目をつけられたとか、どこのクラスがうるさかったとか、どうでもいい話をしながら歩く。
その時間は嫌いじゃない。むしろ楽だ。
でも、一人になった瞬間、また戻る。
このまま何も起きないまま終わっていくんだろうな、っていう感覚に。
俺は別に世界を救いたいわけじゃない。
立派な人間になりたいわけでもない。
ただ、何かになりたいとは思っていた。
誰かに必要とされるもの。
何かを持っているやつ。
他のやつにはない、ひとつだけでも確かなものがある人間。
それが何なのかは分からない。
分からないけど、今の自分がそうじゃないことだけは分かる。
家に帰ると、母さんが夕飯の支度をしていた。
「手、洗って」
「うん」
「学校どうだった?」
「普通」
それで会話はだいたい終わる。
悪くない。
悪くないけど、何かが決定的に埋まる感じもしない。
夜、自分の部屋でスマホを見ながら、ヒーローものの切り抜き動画を流した。
選ばれた少年が特別な力を手に入れて、誰かを助けて、最後には名前を呼ばれるやつ。
ありがちな話だ。
でも、嫌いじゃない。
むしろ好きだ。
羨ましいから。
寝る前、暗い天井を見上げながら思う。
俺にも何かひとつだけ、そういうのがあればなと。
誰にも言えないくらい子どもっぽい願いだ。
けれど、そのときの俺には、それが一番本当の気持ちだった。




