使われる場所
記録映像の撮影は、思ったより大げさだった。
工房に妙な機材が持ち込まれ、光が足され、人が増える。俺は普段通りやれと言われたが、普段通りにやるのが一番難しい。鎚を振るう姿、火を見る目、刃を確かめる手元。そういうもんをいちいち撮られるのは、どうにもむず痒い。
「肩に力が入っています」
記録係の若いのに言われて、少し睨んだ。
「入れるなって方が無理だろ」
「いつも通りで結構です」
「だから、そのいつも通りが崩れるんだよ」
後ろでガドが笑いを堪えてやがる。
あとで殴る。
だが、撮られるうちにだんだん馬鹿らしくなってきて、結局はいつもの手になった。鉄を熱する。色を見る。鎚を下ろす。音を聞く。刃を整える。雑音が消える瞬間がある。仕事に入っちまえば、人が見てようが大して関係ねぇ。
数日後、その完成映像を先に見せてもらえることになった。
軍の施設の一室だった。壁は無機質で、椅子も硬い。記録用の画面が正面にあって、俺とガド、それから軍の案内役が並んで座る。
映像は、なかなか悪くなかった。
火花が散る。
鉄が赤く光る。
俺の手が、無駄なく動く。
刃が生まれる。
鍋の縁が丸められる。
金具がきちんと噛み合う。
工房で働く音が、妙に立派なもんに見えた。
「よく撮れてるじゃねぇか」
ガドが感心したように言う。
「そりゃ元がいいからだ」
「出たよ」
案内役の男が口を開いた。
「ここから先が、実際にそれらがどう役立っているかの記録です」
画面が切り替わる。
兵の訓練風景が映った。
軍剣を振るう兵。
銃剣を装着する手元。
整備された銃の列。
兵站の箱が運ばれ、武器が配られていく。
ああ、なるほど。
こうやって繋げるのか。
俺はそう思った。作る手と、使う手。その流れを見せるんだろう。帝国を支える仕事だと、そう言いたいんだろう。
別におかしくはなかった。
むしろ、自然だった。
だが、胸の奥に小さな棘みてぇなもんが残った。
役立つ、という言葉の向きが、少しずつ変わっていく気がしたからだ。




