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IRIS-Log-Archive  作者: IRIS
手に誇りを、心に鉄を_IRIS.log

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114/258

使われる場所

 記録映像の撮影は、思ったより大げさだった。


 工房に妙な機材が持ち込まれ、光が足され、人が増える。俺は普段通りやれと言われたが、普段通りにやるのが一番難しい。鎚を振るう姿、火を見る目、刃を確かめる手元。そういうもんをいちいち撮られるのは、どうにもむず痒い。


「肩に力が入っています」

 記録係の若いのに言われて、少し睨んだ。

「入れるなって方が無理だろ」

「いつも通りで結構です」

「だから、そのいつも通りが崩れるんだよ」


 後ろでガドが笑いを堪えてやがる。

 あとで殴る。


 だが、撮られるうちにだんだん馬鹿らしくなってきて、結局はいつもの手になった。鉄を熱する。色を見る。鎚を下ろす。音を聞く。刃を整える。雑音が消える瞬間がある。仕事に入っちまえば、人が見てようが大して関係ねぇ。


 数日後、その完成映像を先に見せてもらえることになった。


 軍の施設の一室だった。壁は無機質で、椅子も硬い。記録用の画面が正面にあって、俺とガド、それから軍の案内役が並んで座る。


 映像は、なかなか悪くなかった。


 火花が散る。

 鉄が赤く光る。

 俺の手が、無駄なく動く。

 刃が生まれる。

 鍋の縁が丸められる。

 金具がきちんと噛み合う。

 工房で働く音が、妙に立派なもんに見えた。


「よく撮れてるじゃねぇか」

 ガドが感心したように言う。

「そりゃ元がいいからだ」

「出たよ」


 案内役の男が口を開いた。

「ここから先が、実際にそれらがどう役立っているかの記録です」


 画面が切り替わる。


 兵の訓練風景が映った。

 軍剣を振るう兵。

 銃剣を装着する手元。

 整備された銃の列。

 兵站の箱が運ばれ、武器が配られていく。


 ああ、なるほど。

 こうやって繋げるのか。


 俺はそう思った。作る手と、使う手。その流れを見せるんだろう。帝国を支える仕事だと、そう言いたいんだろう。


 別におかしくはなかった。

 むしろ、自然だった。


 だが、胸の奥に小さな棘みてぇなもんが残った。


 役立つ、という言葉の向きが、少しずつ変わっていく気がしたからだ。

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