称えられる職人
軍の使いが工房へ来たのは、その三日後だった。
よく磨かれた靴。無駄のねぇ制服。いかにもお堅い顔。だが態度は悪くなかった。むしろ妙に丁寧だった。
「ジン殿」
「殿はやめろ。気持ち悪い」
「では、ジン殿」
「おい」
相手は少しだけ口の端を上げた。冗談の通じる男らしい。
持ってきたのは礼状と、正式な追加依頼、それから視察の案内だった。
「現場の兵からも評価が高いです。扱いやすい、壊れにくい、切れ味が違うと」
「そりゃそうだろ」
「自信がおありで」
「事実だ」
使いの男は頷いた。
「その技量を、帝国としても広く示したいと考えています」
「示す?」
「職人を称える記録映像です。後進の励みにも、帝国の威信にもなる」
「俺を映すってのか」
「はい」
正直、面映ゆい。
だが断る理由もなかった。腕のある職人が称えられて何が悪い。いいもんを作る奴が報われるなら、それはまっとうなことだ。
使いが帰ったあと、ガドがまた現れた。どこで聞きつけたのか知らねぇが、鼻が利く。
「お前、今度は映るらしいな」
「話が早ぇな」
「街じゅう早いよ。ジンが帝国お抱えみてぇになるって」
「そこまでは言ってねぇ」
「でも気分は悪くねぇだろ」
「……まあな」
ガドは工房の棚に並ぶ品を見回した。
「すげぇもんだよな。鍋作ってた男が、今じゃ帝国の武器の質まで決める」
「鍋も武器も同じだ」
「お前はそう言うと思った」
「使う奴に応えるよう作る。それだけだ」
「だから強ぇんだろうな」
その日は、少し遅くまで仕事をした。
火の前で汗を流しながら、俺は自分のこれまでを思い返していた。若い頃は、うまくいかねぇことも多かった。叩いても叩いても思う形にならず、悔しくて眠れねぇ夜もあった。それでも続けてきた。続けて、積んで、ようやくここまで来た。
認められるのは、悪くねぇ。
誰が何と言おうと、悪い気分じゃなかった。




