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プロローグ
鉄は嘘をつかない。
叩きが甘けりゃ、甘い音が返る。熱が足りなけりゃ、色で分かる。研ぎが雑なら、刃は目に見えないところで鈍る。どれだけ立派な口を利こうが、どれだけ綺麗事を並べようが、鉄の前じゃ意味はねぇ。
手を抜いたもんは、そのまま残る。
だから、手を抜かない。
それだけだ。
包丁だろうが、鍋だろうが、釘だろうが、剣だろうが、俺の手を通ったもんなら、俺が誇れなきゃならねぇ。使う奴が誰だろうと、どこで使おうと、作る時にやることは変わらない。
いいもんを作る。
それだけを、ずっとやってきた。
それで十分だと思っていた。




