銀髪の少女
次の夜も、お姉ちゃんは夢に出てきた。
今度は少し違う場所だった。明るくも暗くもない、不思議な場所。壁も天井もないのに、どこか室内みたいでもあって、息苦しさはないのに静かすぎる空間だった。
「また来た」
思わずそう言うと、お姉ちゃんが少し笑った。
「来たよ」
「また会えると思わなかった」
「私は会いたかったよ」
「私も」
それだけで胸がいっぱいになってしまう。
少し話しているうちに、私はそこで初めて、もう一人いることに気づいた。
少し離れたところに、女の子が立っていた。
白いドレス。
白っぽい銀髪。
年は小さく見えるのに、立ち方だけは妙に静かで、幼く見えない。
昨日はいなかった気がする。
いたのかもしれないけれど、私はお姉ちゃんしか見えていなかった。
「……誰?」
聞くと、女の子はまっすぐ私を見た。
その目は冷たいわけじゃないのに、ひどく澄んでいた。
「IRIS」
「アイリス?」
その子は小さく頷いた。
「ユナは、会いたかったのでしょう」
「え」
「だから見せているだけ」
意味が分からなかった。
見せている、って何を。
お姉ちゃんのことを?
この場所を?
この夢を?
「どういうこと?」
「そのままの意味よ」
IRISの声は静かだった。
優しいような、優しくないような、不思議な声だった。怒っているわけでも笑っているわけでもない。ただ、事実を言っているだけみたいな声。
私はお姉ちゃんを見た。
お姉ちゃんは困ったように少し笑って、それ以上は何も言わなかった。
「夢、なの?」
私がそう聞くと、IRISは少しだけ首を傾けた。
「あなたがそう思うなら」
「はっきりしてよ」
「ユナにとって大事なのは、そこではないでしょう」
そう言われて、言い返せなかった。
たしかにそうだった。
仕組みなんてどうでもいい。
お姉ちゃんに会えることの方が大事だった。
その夜は、三人で少しだけ話した。
といっても、IRISはほとんど喋らなかった。私とお姉ちゃんの会話を、ただ聞いていることの方が多かった。けれど、たまに私が迷うと、その続きを許すみたいにそこに立っていた。
朝起きてからも、IRISの姿は変にくっきり残っていた。
お姉ちゃんの夢は、会いたい気持ちが見せたものだと自分に言い聞かせられたかもしれない。けれど、あの銀髪の少女だけは違った。会いたいから作ったにしては、私の願いから少し外れたところに立っている感じがあった。
だから、少しだけ怖かった。
でも、それ以上に次の夜が待ち遠しかった。




