表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
IRIS-Log-Archive  作者: IRIS
久別重逢_IRIS.log

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

103/258

プロローグ

 お姉ちゃんと見た星を、今でも時々思い出す。


 小さい頃、夜にベランダへ出て、ふたりで空を見上げたことがあった。夏だったと思う。窓から漏れる部屋の灯りが背中をあたためていて、夜の風は少しだけぬるくて、お姉ちゃんは隣で、あれが明るい星、あっちは少し赤い星、って教えてくれた。


 私はその違いなんて全然分からなかったけど、お姉ちゃんが言うならそうなんだろうと思っていた。


 お姉ちゃんは、何でも知っているみたいだった。

 少なくとも、私にはそう見えていた。


 三つ上の姉。

 優しくて、少し大人びていて、私が転びそうになる前に気づいて手を引いてくれる人。

 私が泣くと、すぐに分かってくれる人。

 私が好きなものも、嫌いなものも、なんでか全部知っている人。


 ずっと、そういう人だった。


 だから、いなくなるなんて思っていなかった。


 いなくなった、という言い方が合っているのかどうか、今でもよく分からない。遠くへ行ってしまったわけじゃない。死んだと聞かされたわけでもない。ただ、当たり前に隣にいた時間が、ある日から急に手の届かないものになっただけだ。


 家の中にはまだお姉ちゃんの気配が残っている。

 棚の端に残った古い本。

 引き出しの奥にしまわれた髪留め。

 誰も使っていないのに、捨てられないままのマグカップ。


 それなのに、触れようとするとするりと逃げていくみたいに、お姉ちゃんのことは家の中で話題にならなかった。


 私も、だんだん聞けなくなった。


 聞いたら壊れてしまうものが、家のどこかにある気がしたからだ。


 それでも時々、夜に空を見ると、お姉ちゃんのことを思い出す。

 一緒に見た星のことを思い出す。


 もう一度だけでいい。

 会えたらいいのに。


 そう思いながら眠る夜が、たぶん何度もあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ