第四十話
「遠慮しとく。」
結城は断った。知香は結城が歌を歌うのが苦手なことを知っていた。
「昨日は宝箱にしまって、っていう歌詞が私は好きだな。」
「今度、合唱祭で聞かせてもらうよ。」
結城と岸田が通っている中学校では9月に合唱祭がある。
「聡志だって歌うんだよ。」
「じゃあ、俺風呂に入るから。」
「あっ、逃げた。永治くんは上手いよね。」
「じゃあね。」
結城は本当に歌が苦手なようだ。
「では、今日は合唱祭でも歌う曲を歌ってみましょう。」
音楽の立石先生が言った。岸田と結城が通う中学校でのことである。
「では、合唱部を中心にソプラノ、アルト、男声パートに分かれて音取りをしてみましょう。」
・・・ついに来たか。
「まあ、そんなにくよくよしなくても。」
岸田が声を掛ける。
「俺だって得意じゃないよ。」
「永治が言うなよ。」
「本当に言ってるんだよ。」
その後、歌を歌ったが結城は散々だった。
「聡志。」
知香が声を掛ける。
「・・・。」
結城は黙って教室に帰ってしまった。
「ああいう時は声掛けちゃだめでしょ。」
岸田が知香に言った。
「こっちは心配してるのに。」
「またまた。知香ちゃんそこは抑えないと。」
「永治くんは優しいのね。」
「知香ちゃんだって・・全く・・。」
「ストライク、バッターアウト。」
結城は三振を奪った。
「ナイスピッチング。」
打撃投手交代の際、岸田が言った。
「ありがとう。」
打撃投手だが本格的な結果を結城は残していた。城岡も打ち取っていた。
・・こうやって練習しているところを見れば知香の態度も変わるのになと岸田は思った。
「ストライク、バッターアウト。」




