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第十一話
「そんなことないよ。結城もいるし。」
「結城くんか、彼のシュートもすごいな。」
「それに結城のけん制球はすごいよ。」
結城はけん制が上手いことでも有名である。
「確かにそうだけど、ここにもいるじゃない、関西のナックルボーラーが。」
「まあね。」
そう、この岸田は右の速球派、そしてナックルボールを操る天才ナックルボーラーである。ナックルボールとは無回転で変化するボールだ。彼のナックルボールは揺れて落ちる球ではなく1度ホップしてから沈む球であった。彼のナックルは変化率が非常に高く、もちろんそうでなければそうそうは投げられないのだが、カーブでもフォークでもない変化で各打者を悩ませていた。
「それにナックルを使わなくてもシュートを混ぜれば速球派のお前なら抑えられるだろう。」
彼の速球もまた130kmのスピードがでる。
「まだまだ速くしたいよ。」
「焦るなよ。それで怪我でもしたらもったいないじゃ済まされないぞ。」
「そうよ。無理はいけないわよ。」母も言った。
「それは俺が一番わかっているよ。」
岸田は真面目に言った。彼にもプロ野球選手になりたいという夢がある。




