2,夕胡蝶
コツコツ
コツコツ
なんか軽く2時間ぐらいフラニーチェリを回ってるんだけど、まだ全部を回り切れていないみたい。
道中たくさんの植物があってとても大切に育てられていることが分かったんだけど
まだ夕胡蝶に会えないのかな
「、、、もうすぐ夕胡蝶に会えますよ」
あ、なんか会いたかったのがばれたみたい。はずかしいな。
少し照れていると、分厚い扉の前についた。そして女性の研究員さんがその扉の前で一言。
「この先長い廊下が続きますが、そのまま進めば綾乃様がいらっしゃいます」
「、、、え?あなたは来ないんですか?」
「はい。私はここまでです」
なんでこの人は入らないのかな。それとも入れないのかな。まあとにかく綾乃さんに会えるし、夕胡蝶も観れるし楽しみだな。
分厚い門を開け、中へ入る。言われた通りすごく長い廊下が続いており、LEDライトが怪しく光っている。息をのみ進もうとしたところで、後ろから扉を閉める音が聞こえる。完全に閉まる前、女性の研究員さんが何かつぶやいていた気がするが気にせず進む。
(なんだかだんだん寒くなってきた気がする。上着持ってくればよかったかな)
長い廊下を進むたび、部屋の気温は低くなっているみたいだ。それに
(、、甘い香り、、どこかで嗅いだことあるような)
夕胡蝶のある部屋に近づけば近づくほど、甘い香りが濃くなってくる。そして一際赤黒い扉の前に誰か立っているようだ。
「久しぶりだね。陽向くん」
そこには綾乃さんがいた。以前お会いしたときは短髪だったけど、今は髪を伸ばしているみたいだ。髪を結んでいる。ただいつにもまして色気がすごい。同じ性別のはずなのにオーラが全然違うな。
「ご無沙汰してます!綾乃さん」
綾乃さんは陽向が5歳の時に出会ったみたい。出会った当時、何かしらがきっかけで綾乃さんを助けたらしいんだけどまったく記憶がないんだよね。人間の持つ忘却の機能はすごいね。
どこか他人事になりつつも世間話をする。
「聞いたよ、今タピオカが流行ってるんだってね」
「ははは、タピオカはもう流行ってないですよー」
何言ってるんですかみたいな感じで返答したら、めっちゃ驚いてた。笑顔のはずなのにひきつっているような。
「、、、それは、、、本当かい?、、」
「はい。」
「がはっ!」
視えない何かに攻撃を食らったような声をだした。
今度こそ本当にノックアウトしたようだ、四つん這いになってしまった。
「やはり年を積み重ねを感じるな。いい意味でも、悪い意味でも」
「?」
「私はまだ覚えているよ。君が5歳の姿をね。今よりももっと小さくてもっとあどけなかった。でもこんなに成長してたくましくなって、普通の親はこんな気持ちなのかな」
急に何言いだしてんだろう、この人は。四つん這いの状態で綾乃さんは明後日の方向を見ているようだが、とりあえず本来の目的を達成したいので、話を戻す。
「、、、とにかく、今日は夕胡蝶を見せてくれるんですよね?」
綾乃さんはびくっとしながらこちらを見る。そして一瞬で体裁を整えようと美しくたつ。
「あ、ああそうだったね、では夕胡蝶のもとへ行く前に禁止事項のことなんだけど、当たり前だが撮影や録画、口外しちゃだめだよ。なにせ一般公開してない秘密の花だからね。君のことだから大丈夫だと思うんだけど」
なんか信頼されてるんだけど、こわー。
「あと絶対に花弁の奥を10秒以上見てはだめだ。」
「どうしてですか?」
理由を聞いたら、綾乃さんは考える素振りをして一言
「そうだな。企業秘密ってことで」
唇に人差し指を持っていきつつ、ウインクしてきた。色気しかないこの人にされたら同性の陽向もドキドキしてしまう。
「ではゆこうか」
ギィィと音を立てつつ赤黒い色をした重い扉を開ける。
「夕胡蝶へ」
開けた瞬間にまばゆい光が差し込んでくる。思わずぎゅっと目を閉じる。
目の前にはガラス張りになった壁がある。その先に
「、、、これが夕胡蝶」
「ああ、美しいだろう。」
花弁の先まで橙色の夕日を連想させるような色。椿のように力強さと百合のような儚い姿であった。陽向は今まで見てきた花の中で一番美しいと感じた。
「すごい、、、すごいです!」
本当に言葉が出ない。出ないというよりも言葉では表すことのできないほどすごいのだ。
「そうだろう」
綾乃さんは嬉しそうにしつつも、なぜか悲しそうな眼をしていた。
「だがこれじゃない」
「?」
どうゆういみだろうか。綾乃さんは花の調合とかしてるしもしかしたら、いろんな花を作りたいのかもしれない。もっと美しい花を作りたいのかも




