↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したらスキル無限になった ~底辺人生からチートになって、最強に成り上がる~  作者: おーちゃん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

91/97

91

 岩に隠れてミニキャンプをして、腹もいっぱいになった。


 出発となって、目指すは三つあると聞いている冷気の心臓を破壊すること。


 そうしないと女王エレノアの計画は止められないとされる。


「見えた。あれが、一つ目の『冷気の心臓』か」


 俺は吹き荒れる吹雪をさえぎるように手をかざし、谷の底にあるその冷気の心臓を見た。


 『迷いの樹氷林』を抜け、標高が一段と上がったその場所に、それはあった。


 周囲の景色から色を奪い取ったかのような、純白をしている。


 巨大な水晶の塊が、心臓の鼓動に似た不気味なリズムで、ドクン、ドクンと白い光を放っている。


 その光が放たれるたびに、大気が凍りつき、周囲の空間が物理的な音が響いていた。


「信じられない。あんな巨大な魔力の塊、初めて見ました」


 フィンの声が、寒さと恐怖で震えている。


「マリアンヌさんが言っていた通りだね。あそこから地脈の熱を吸い上げて、代わりに殺人的な冷気を散らしているんだ」


 俺の『空間把握』に伝わってくる情報は、もはや絶望的だった。


 心臓を中心とした半径数百メートルは、生命が生存できる温度を遥かに下回っている。


「兵がいないのも納得ね。近づくだけで魂まで凍りつくわ。でも、私たちにはこれがある!」


 ライラが、リズに特注した防寒防具の襟を触った。


 氷鋼蟹の甲殻から作られた鎧は、周囲の冷気を反射し、内側にリズが込めた「熱」を閉じ込めている。


「暖かいよ」


「本当に暖かい」


「行くぞ、みんな。一気に中心部まで駆け抜ける!」


 俺の号令と共に出た。


「わふん!」


 シロが先頭を走り、俺の足元を『氷結無効』の加護で固めてくれる。


 だが、「冷気の心臓」は侵入者を拒むように、自動的な防衛機構を作動させた。


 心臓から放たれた衝撃波が、周囲の氷を無数の刃に変えて、俺たちに降り注ぐ。


「エルザ、防御を!」


「はい! 聖なる盾、凍てつく空を拒絶せよ!」


 エルザが杖を突き立てると、俺たちの頭上に黄金の障壁が展開される。


 ガガガガッ! と激しい音が響き、障壁が冷気に刺されて白くなっていく。


「リズ、あの心臓の核を叩くにはどうすればいい!」


 俺は迫り来る氷の槍を『絆雷』で叩き落としながら叫んだ。


「普通の衝撃じゃダメだよ! あいつは外側の氷をいくら砕いても、無限に再生する。心臓の鼓動が止まる瞬間、魔力が反転して『熱』を放出する一瞬がある。そこを叩きな!」


 リズは自分の神槌を握り締め、地面を滑るように進みながら、タイミングを計っている。


「熱を放出する瞬間? よし、『熱感知』で捉える!」


 俺は全精神を心臓の拍動に集中させた。


 ドクンドクン。


 青白い光が収縮し、次の爆発的な膨張に備える一瞬。


 確かに、水晶の奥深くで、吸い取られた熱が凝縮され、行き場を失っている場所があった。


「ライラ、リズ、俺をあそこまで飛ばしてくれ!」


「無茶言わないでよ! でも、あんたならやると思ったわ!」


 ライラが俺の背中に手を当て、風の魔力を溜める。


「リズ、衝撃のタイミングを合わせろ!」


「分かってるって! あんたを打ち出すのは、私の槌が一番だ!」


 リズが槌を大きく振りかぶり、地面に最高の一撃を叩きつけた。


「――今だ!!」


 リズが引き起こした人工的な地震と、ライラの疾風が俺を空へと突き上げる。


 俺は『黄金の羽』を展開し、さらに加速した。


 周囲の温度が急激に下がり、防具の限界を超えた冷気が俺の肌に来た。


 まつ毛が凍り、視界が白くかすんだ。


 負けるか! 


 ここで止めなきゃ、王都のあのみんなが笑い合える場所がなくなるんだ!


 俺の脳裏に、スタミナ飯を振る舞ってくれたマリアンヌさんや、送り出してくれた街の人々の顔が浮かんだ。


 心臓が大きく光り輝き、最大級の冷気が放たれようとした、その時に。


 俺は『水鏡の盾』を反転させ、自分自身の魔力を剣先に集中させた。


「シロ、最後の一押しを頼む!」


「わふぅぅぅん!!」


 シロの吠えが、俺の背後から絆の魔力をブーストさせる。


 剣先が冷気の心臓の表面に接触した。


「絆雷・極点突破――灼熱の雷鳴!!」


 ドォォォォォォォォン!!


 俺が突き立てた剣から、王都の絆と聖獣の浄化、そして仲間たちから託された熱量が、一気に水晶の内部へと流れ込んだ。


 凝縮されていた熱が暴走を始め、内側から水晶を焼き切っていく。


「ギィィィィィィィン!!」


 冷気の心臓が、叫びのような音を上げ、ひび割れた。


 次の瞬間、溜め込まれていた魔力が大爆発を起こし、俺は吹き飛ばされた。


「うわああああああ」


「コウイチさん!」


 エルザが放った光の網が、空中で俺の身体を受け止めた。


 俺は地面に転がりながらも、必死に顔を上げた。


 そこにあったのは、かつての水晶ではない。


 粉々に砕け散り、ただの石となった残こりと、そこから立ち上る湯気だった。


 心臓が破壊されたことで、地脈から吸い上げられていた熱が解放され、谷の温度がみるみるうちに上昇していく。


「暖かい」


「やったのか?」


 俺の言葉に応えるように、吹き荒れていた吹雪が嘘のように止んだ。


「やった、やったわ! 一つ目の心臓を制覇よ!」


 ライラが駆け寄ってきて、俺の肩を力一杯叩いた。


「痛いよ」


「コウイチさん、凄いです! この一帯の冷気が和らいでいます!」


 フィンが魔導書で測定しながら、興奮気味に叫んでいる。


 リズも槌を肩に担ぎ、満足そうに鼻を鳴らした。


「ふん、私の防具のおかげだね。でも、あんたの最後の一撃さ、悪くなかったよ」


「わふん! わふん!」


 シロが俺の周りを嬉しそうに駆け回り、プニもポカポカとした熱を放ちながら俺の頬を撫でた。


 俺は立ち上がり、粉砕された心臓を見つめた。


 大いなる凍結グランド・フリーズを止めるための、最初の一歩。


 俺たちは、四天王の打ち込んだ「クサビ」を一つ、確実に引き抜いたのだ。


 だが、安心に浸る暇はない。


「マリアンヌさんの話では、あと二つ。北へ進むほど、残りの心臓はより強固な守りに固められているはずだ」


 俺の言葉に、仲間たちが再び表情を引き締めた。


 空を見上げると、厚い雲の向こう側で、さらに高い山脈が俺たちを見下ろしている。


 けれど、今の俺たちに不安はなかった。


 この極寒の地でさえ、俺たちは自分たちの手で熱を生み出し、道を切り拓くことができる。


 王都で培った絆は、氷の女王が用意したどんな絶望よりも、ずっと強くて温かい。


「よし。まずは体を温めて、次の冷気の心臓を目指そう」


 俺たちは、破壊された冷気の心臓に咲き始めた、小さな花を一度だけ振り返り、さらなる北の最果てを目指して歩き出した。


 伝説の四天王、氷冠の女王エレノアへの道はまだ遠いが、俺たちの足取りは、王都を出た時よりもずっと力強くなっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。