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清浄の谷から帰った。
まるで日本で都市部から地方の温泉宿に宿泊に行ったくらいに体は楽になった。
温泉好きな日本人の俺には最高だった。
「よし、今日も一日頑張ろう。みんな、無理はしないでくれよ」
「はい!」
「できるかな?」
俺の言葉に、仲間たちが力強く頷いた。
カースを倒して王都に平和が戻ったけれど、激戦の傷跡は街のあちこちに残っている。
崩れた石壁や、ひび割れた大通り。
俺たちはギルドからの高額な報酬を一度断り、ボランティアとして復興の手伝いをすることに決めた。
自分たちが守ったこの街を、自分たちの手で元通りにしたいと思ったからだ。
まあ、俺も建築とか全くの未経験なんだが。
「コウイチさん! そこの重い瓦礫、危ないですから避けてください!」
フィンの明るい声が響く。
彼女が魔導書を開くと、巨大な石の塊がふわふわと宙に浮き上がった。
「私の重力魔法で浮かせます! 今のうちに下の掃除をお願いします!」
「助かるよ、フィン。俺は『空間把握』で、建物の基礎にヒビが入っていないか確認する」
俺は目を閉じ、意識を街の構造へと集中させた。
目には見えない微細な亀裂も、今の俺には手に取るように分かる。
亀裂は何かあったら崩れることになる。
だから今のうちに補修が必要になる。
「ライラ、その左側の柱はまだ強度が足りない。補強が必要だ」
「了解! ギルドから持ってきた予備の建材、持っていくわよ!」
ライラが細い腕で大きな丸太を軽々と担ぎ、崩れかけた民家へと駆け寄る。
彼女のテキパキとした動きに、近所のおばちゃんたちが「さすが英雄様だねぇ」と感心の声を上げた。
「英雄なんて柄じゃないわよ。ただの力自慢なんだから」
なんて照れながら言い返しているけれど、ライラの顔はどこか嬉しそうだ。
意外とライラは大工の仕事は適任なのかもな。
エルザは、怪我をした職人たちの治療や、炊き出しの準備を手伝っていた。
「傷はもう大丈夫ですよ。でも、今日はあまり無理をしないでくださいね」
彼女の優しい光の魔法が、人々の心と体を癒していく。
「ありがとう、聖女様。おかげで明日からも頑張れそうだ」
「聖女だなんて。私はただ、皆さんの笑顔が見たいだけなんです」
エルザの周りには、いつも自然と温かい輪ができていた。
まさしく聖女と言っても疑問はない。
「わふん!」
シロも、崩れた家から家財道具を運び出す手伝いをして、子供たちに大人気だ。
「シロ、そっちの荷物をお願い。プニは、隙間に入り込んだゴミを回収してくれ」
「ぷるるんっ!」
俺たちは泥だらけになりながら、日が暮れるまで働き続けた。
日本で働いていた時は、誰のために頑張っているのか分からなくなることが多かった。
でも今は違う。
目の前で「ありがとう」と言ってくれる人たちのために力を使えることが、こんなに誇らしい。
「はい、これ。お疲れ様」
夕暮れ時、近くのパン屋のおじさんが、焼きたての大きなパンを差し入れてくれた。
「いいんですか? 俺たち、ボランティアですから」
「当たり前だろ。あんたたちが頑張ってくれたおかげで、明日から店を開けられそうなんだ」
おじさんの力強い握手に、俺は胸が熱くなった。
報酬はお金じゃない。
この街の人たちと心を通わせる、この瞬間こそが本当の報酬なんだと感じた。




