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「北の魔術師、南の武人、そして変幻自在の道化師か」
俺はバルカスさんの言葉を口にしながら、いろりでパチパチとはじける火を見つめていた。
カースであんなに大変だったのに、あと三人もいるなんて、正直に言えば気が遠くなる。
「何をそんなに深刻な顔をしておる。お主は一人で戦ったわけではあるまい?」
バルカスさんが、俺の膝で丸くなって寝ているシロを顎で指した。
「そうですね。俺にはシロも、ライラたちもいます」
「わふ」
寝言のように鼻を鳴らしたシロの頭を撫でる。
少しだけ不安が消えていくのを感じた。
谷に来て勉強になった。
来てよかったな。
翌朝、谷の空気はさらに澄み渡り、滝のしぶきが虹を作っていた。
俺たちは旅立ちの準備を整え、小屋の前に並んだ。
「バルカスさん、お世話になりました。温泉、最高でした」
「いつでも来い。ただし、次はもっと面白い土産話を持ってくることだ」
「そうなれればいいです」
バルカスさんは腕を組み、いつもの厳しい表情に戻っていた。
だが、俺が背を向けようとした時、彼がそっと声をかけてきた。
「コウイチ。そのボロボロの剣では、次の四天王には届かんぞ。リズを探せ」
「やっぱり、リズさんなんですね。彼女は今、どこに?」
「あやつは気まぐれだ。今は『黄金の息吹』が吹く、東の火山のふもとにいるという噂がある」
東の火山。ここからはかなりの距離がある。
迷っている暇はないか。
王都でもリズという名前を聞いたのは偶然ではない。
腕のいい鍛冶師なのは間違いないな。
「ありがとうございます。必ず彼女を見つけ出して、剣を直してもらいます」
俺たちはバルカスさんに深く一礼し、清浄の谷を後にした。
「よーし! 次はリズさん探しですね! 私、美味しいお弁当たくさん作りますよ!」
フィンが元気よくカバンを揺らしながら歩き出す。
「氷に、武人に、道化師かぁ。どんな奴らかしらね」
ライラが腰の剣を確かめながら、どこかワクワクしたように言った。
「誰が来ても、私たちの光は消せません。そうでしょう、コウイチさん?」
エルザが隣に並んで、穏やかな笑みを浮かべる。
「ああ。まずはリズに会って、みんなの武器も点検してもらおう。万全の状態で次へ進むんだ」
「会うのが大変です。本当に会えるか微妙ですので」
俺は、自分の中に新しい力が湧いてくるのを感じていた。
カースとの戦いで得た「不屈の絆」が、俺の心を支えてくれている。
谷を下りて街道に出ると、遠くに東の山が見えた。
もしかしたら伝説の鍛冶屋がいて、新しい冒険が待っているのかもしれない。
「行くぞ、シロ!」
「わふんっ!!」
シロが勢いよく走り出し、俺たちを先導する。
さあ、新たな旅にする。




