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ブラック企業の社畜だった俺は、転生したらスキル無限獲得になった ~底辺人生からチートになって、最強に成り上がる~  作者: 奥野ミズオミ


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第6話


 街セルタに戻り、俺たちは急いで治癒院へと向かった。待ってろよシロ。



 もうすぐだからな。腕の中に抱えたシロは、もうほとんど暴れることなくい。



 時々「クゥン」と小さく鳴くだけで、俺の胸に顔を埋めている。モフモフだな。



 このモフモフの毛並みは、本当に中毒性が高い。シロを撫でるだけでどこかへ異世界の不安が消えていくような気がする。



「本当に、この子がシルバーウルフの幼体なの? 随分と人懐っこいわね」



 ライラは驚き半分、微笑み半分といった様子で、シロを覗き込む。



 ライラは獣人族だし、ウルフとも相性はいいっぽい。



「多分、俺が罠を外した時の純粋な『優しさ』が、この子にも伝わったんだと思う。俺のスキルは、理屈じゃない、心の繋がりに反応するから」



 俺は胸ポケットのプニにも語りかける。プニは小さくぷるんと跳ねて応じた。



 ライラの言い方だとシルバーウルフは凶暴な魔物の種なのかな。



 治癒院は、街の中心部から少し外れた、静かな場所にあった。



 木造の簡素な建物だが、清潔感があり、ハーブのような優しい香りが漂っている。



 さっそく治癒師にシロを見せると、やはり獣の幼体だと知って驚かれた。



 事情を説明すると快く治療を引き受けてくれた。良かった。



「小さな傷だが、罠のワイヤーが深く食い込んでいた。手当をして、あとは安静にしていればすぐに治る。しかし、シルバーウルフとは珍しい。野生に戻すのかね?」



 治癒師の老婦人が、俺に尋ねる。戻す気はないけどね。



「いえ、この子は俺たちの仲間になります。シロという名前をつけました」



 俺がそう言うと、シロは俺の足元で「クゥン!」と力強く鳴いた。そういうことってことだな。



 治癒師は俺とシロを見て、優しく微笑んだ。



「そうかい。人間に懐くシルバーウルフなんて聞いたことがないが、君の優しさゆえだろうね。大切にしてあげなさい」



 話では珍しいらしい。治癒院を出た俺たちは、次の依頼を受けるため、再びギルドに戻った。



 シロは、まだ怪我が完全に治っていないため、治癒院に預けておくことにした。



 不安そうに俺を見ていたな。泣く泣く別れを告げると、シロは名残惜しそうに俺の服の裾を舐めた。



「心配ないって。すぐに迎えに来るからな」



 後ろ髪を引かれながら、ライラと二人でギルドへ向かう。



 ギルドで受けた次の依頼は、『盗賊団の偵察』という、前回の薬草採取よりはるかに難易度の高いものだった。



 偵察ってのは、遠目に観察してればいいのかな。見てるだけならいいが。



 Dランクの俺には重すぎる依頼に見えたが、ライラが強く推薦した。



「コウイチの『夜目』と『嗅覚強化』は、偵察にはうってつけよ。特に夜間の森での動きは、普通の冒険者じゃ真似できない。私もいるし、偵察なら戦闘を避けられるから大丈夫」



 ライラは俺の新しいスキルを、すぐに実戦に組み込むことを提案する。



 彼女の、俺の能力に対する信頼と、冒険者としての判断力には、本当に感心する。



 さすが冒険者の経験があるだけ違うな。



「俺のチートスキルをすごくポジティブに捉えてくれるよな。普通の人は、俺の異常なスキルの獲得方法に引いたりしないのか?」



「それは、コウイチが悪いことに使っていないからよ。あなたのスキルは、命を救い、弱い者を助ける心から生まれている。そんな力を、誰が疑うっていうの?」



 ライラは、きっぱりと言い切った。その言葉が、俺の不安を完全に吹き飛ばしてくれる。



 ブラック企業でのことや、自分の存在価値への疑問が、ライラの真っ直ぐな言葉で洗い流されていくようだった。



「わかった。やろう! ライラが相棒なら、怖いものはない」



 新たに獲得した『嗅覚強化』を使ってみる。



 ギルドの中からも、依頼書が発する古い紙の匂いや、ライラの持つ剣の油の匂いまでを、鮮明に嗅ぎ分けているのを感じた。



 まるで動物になった気分だな。それとギルドには薬草を提出した。換金し資金が増えた。



 俺にとっては最初の換金になったし、嬉しさでいっぱいだ。この調子だな。



 新たに盗賊団を偵察する依頼を受けた。ギルドからは危険もあるので注意を指摘される。



 注意されると不安は増えるもの。いざ出発する。



 スキルの力は、想像以上に凄い。盗賊団の隠れ家があるという森へと向かう。



 途中、俺たちは街の周辺の、岩場と木々が入り混じる荒れた場所を歩いていた。




 夕方になったので暗くなる。しかし、俺の『夜目』スキルは、この暗闇を完全に無効化してくれてます。



 周囲の石ころの一つ一つまでが、くっきりと見える。



「この辺は魔物も少ないが、時々ロックベアが出ることがあるから注意が必要よ。奴らは硬い皮膚を持っているから、剣も魔法も通りにくい」



「わかった注意する」



 ライラがアドバイスしてくれた直後だった。岩陰の向こうから、甲高い悲鳴と、激しい爆発音が聞こえた。



 悲鳴だ!



「きゃああああ!」



 ドォンッ!!



 爆発音は、まるで花火が炸裂したような、派手な音だった。



 俺が前世の知識で知っている、魔法の音に近い。魔法なのかな。



 てことは魔法の戦闘が起きている?



「今の音と悲鳴! 人間だ!」



 ライラが緊張した声を上げる。



「魔物との戦闘か!? しかも、かなり強力な魔法なのかな」



 俺は『嗅覚強化』で周囲の匂いを分析した。



「血の匂いはまだ薄い。でも、硫黄のような焦げた匂いと、泥と土が混ざったような強い魔力の匂いがする。誰かが、必死に戦っている!」



 俺たちは、迷わず音の方向へ駆け出した。『俊足』を使う。



「先に行くよ!」



「おお〜い、待ちなさい〜」



 一瞬にしてライラを引き離し、俺は岩場を飛び越えていった。



 助けなければ。 誰かが命を落とそうとしている。



 俺の脳裏には、ゴブリンに襲われた時のライラや、罠にかかっていたシロの姿が重なる。



 この世界に来てから、弱い者が苦しむ姿を、もう見過ごすことができなくなっている。



 うんざりだ。岩陰を回り込むと、衝撃的な光景が目に飛び込んできた。



「蜥蜴の魔物だ!」



 蜥蜴みたいな姿をした魔物だった。怒りの雄叫びを上げている。



 魔物から数メートル離れた場所で、ボロボロのローブを着た、一人の少女がへたり込んでいた。



 大丈夫か?



 少女は、恐怖で顔面が青白くなり、杖を両手で強く握りしめているが、その手は小刻みに震えているみたい。



「ひっ、いや、来ないで」



 その様子から、彼女が先ほどの魔法を放った犯人であることは明らかだった。



 だが、彼女はすでに極限の恐怖に支配され、完全に戦意を喪失している風だな。



 魔物は、少女が放った魔法の威力を警戒しながらも、ゆっくりと、しかし確実に、少女へとにじり寄っていく。



 魔物を俺が止める!



「やめろ!」



 俺は叫び、ライラが追いつくのを待たずに、魔物と少女の間へ飛び出した。



 蜥蜴のような大きな口で威嚇してくる。ヤバそうな魔物だな。 



「俺は、お前たちを止める者だ!」



 懐から取り出したブロードソードを構える。



 これはギルドで買った、何の変哲もない鉄の剣だ。



 この剣を握る俺の腕には、『剛力』が宿っている。だから攻撃力はあるはずだ。



「ガアアア!」



 魔物は突然現れた俺に苛立ち、大きな爪で殴りかかってきた。



 そのスピードは凄まじく、並の冒険者なら一瞬で体が両断されていただろう。迫力あるなこいつ。



 俺の身体に染み付いた『俊足』は、ただの移動速度ではない。



 戦闘時の一瞬の反応速度をも向上させている。



 俺は、蜥蜴の爪の動きを完全に予測し、わずかに横へステップを踏む。



 その隙に、『剛力』を右手に集中。鉄の剣とは思えないほどの重量感を込める。



 蜥蜴の魔物の脇腹目掛けて、突きを放った。



「受けてみろ、蜥蜴!」



 グシャッ!



 硬い鱗を打ち破り、剣の先端が深々と蜥蜴の魔物の体内へ突き刺さる。感触はあったぞ。



「ギ、ギャアアアア!!」



 魔物は、断末魔の叫びを上げながら、その巨体を地面に横たえた。



 俺の『剛力』は、防御力が高そうに思える魔物さえも、一撃で仕留めてしまった。



 スキルを使いこなせたのかな。直後、息を切らしたライラが追いついてきた。



「コウイチ! あなた、たった一人で! こいつはハイリザードだぞ!」



「えっと強いのかな?」



「強いよ。コウイチは倒すとはな。成長したな」



「自分でも強いとわからずに倒していたようだ」



 ハイリザードという魔物らしいのをライラから教わる。蜥蜴だからリザードなのかな。



 ライラは、事態の急変に驚きを隠せないでいる。とりあえず魔物は死んだし、少女の方へと振り返った。



「もう大丈夫だ。危ない魔物は死んだよ」



 怯えている感じかな。少女は、まだ座り込んだまま。



 その瞳は恐怖と驚きで大きく見開かれていた。



 謎は彼女の周りには、先ほどの魔法の熱が残っていること。



「あ、あ、りがとう、ございます」



 震える声で感謝を述べる少女。



 そのローブは擦り切れ、髪も乱れている。年齢は十七、八歳くらいだろうか。



 小柄で、魔道士というよりは、迷子のようにも見える。子供っぽいな。



「君、大丈夫か? 怪我は?」



 俺は優しく声をかける。



「大丈夫です。その、魔力が暴発しただけで」



 少女は杖を抱え、俯いてしまった。臆病な性格なのだろう。



 臆病とはいえ、先ほどの魔法の威力は尋常ではなかった。



 一撃でハイリザードの鱗を焦がすほどの力は凄いとは思う。



 ただの見習いとは言えない、規格外の魔力を持っている証拠っぽく思える。



 もちろん俺は魔法の素人だし、知識は日本にいた時のものでしかないが。



 俺が少女に近づこうとした、その時だ。俺の視界が、一瞬、強く揺らめいた。



 ライラやスライムのプニ、シルバーウルフのシロと絆を結んだ時の、あの温かい光とは違う。



 熱を帯びた、激しい光だった。俺の目が、少女の身体から放出されている何かを見る。



 なんだ、この光は!? 視界の奥で、まるでマグマのように燃え上がっている。



 俺は、その少女から、周囲の空間を歪ませるほどの、莫大な魔力が漏れ出ているのを感じ取った。



 マグマみたいだな。彼女自身はそれを制御できていないのかな。



 恐怖で震えているが、その源泉は、まるで尽きることのない無限の泉のよう。



 この少女の純粋な、そして制御不能な『力』に触れる。



その瞬間、俺の魂と彼女の『魔力の根源』が、言葉を超えていった。



> 対象:名無しの見習い魔法使いとの間に深い『絆』を検出。



> 『絆結び(コネクション)』発動。



> 対象の特性より、スキル『魔力感知まりょくかんち』を獲得しました。



> 対象の特性より、スキル『火魔法』を獲得しました。



> 貴方のスキルリストに『魔力感知』『火魔法』を追加しました。




 四度目のスキル獲得です!



 俺の体内を、冷たい電流のようなものが流れた感覚。



 ライラとの絆で得た『剛力』のような肉体の変化でも、シロとの絆で得た感覚の変化でもない。



 もっと内側、魂に近い部分への、根本的な変化だ。



 まず、『魔力感知』。



 世界が一変した気分。俺の周囲のすべてが、まるで色分けされた世界のように見える。



 ライラからは、強い生命力と、わずかながら魔力が出ているのがわかる。



 倒したハイリザードからは、魔力は消えていく。死んだんだな。



 目の前の少女から噴き出している魔力は、まるで巨大な太陽のようだった。エネルギー感じるな。



 次は、『火魔法』。



 実際に火の魔法を使えるということかな?



  俺の体に魔法の詠唱や発動の知識が、自動的にインストールされた感覚があった。



 魔法って簡単に使えるのかな。習得に時間がかかると思うけど。



 俺は驚きを隠せずに、目の前の少女を見た。

 

「すごい魔力だ。まるで、この世界すべてを覆い尽くせるほどの、大きな力を持っている」



 俺の言葉に、少女は目を見開いてきた。



「え、あ、あなた、どうしてそれを? 誰も、私の魔力のことは」



 彼女が隠していたかった、制御不能な『力』。それを看破してしまったからかな。



 ライラが近づいてきた。



「コウイチ、今の光は何だったの!? またスキルを獲得したの? それに、この子、震えているわ」



「この子は、規格外の魔力を持っている。たぶん、俺の新しいスキルは、この子の『魔力』に反応して獲得したものだ」



 少女に優しい口調で話しかけてみる。



「君は、誰にも言われたことがないかもしれないけど、本当に強い。でも、その力が暴発して、君自身が怖いんだろ? 助けに来た俺の目の前で、震えているのは、戦うことよりも、自分の力が怖いからじゃないのか?」



 少女は、俺の言葉に涙を流す。小さな声で、自分の名前を言ってくれる。



「私はエルザ、です。見習いの、魔法使い。私は、力が暴走するのが怖くて、いつも上手く魔法を使えない。今日だって、ハイリザードを焼いてしまった後、体が動かなくなってね」



 エルザの瞳は、純粋な恐怖を感じているっぽい。



 その膨大な魔力は、彼女にとって祝福ではなく、呪いだったのだろうかな。



 でもうまく使えるようになれば凄い魔法使いになれそうだけどね。



「エルザ。怖がる必要はない。君の力は、誰かを傷つけるためのものじゃない。誰かを守るためにあるんだ」



 俺は、エルザの震える手に、そっと触れる。



 彼女の膨大な魔力と、俺の『魔力感知』が反応する。



「その力を、俺たちと一緒に、制御する方法を学んでいこう。俺は君の力で、『魔力感知』というスキルを手に入れた。君がどれほどすごい力を持っているか、俺にはわかる。だから、安心してくれ。俺たちは、君を傷つけたりしない。一緒に、冒険者になろう」



 俺の誘いに、エルザは涙を拭いた。



 ライラと俺を交互に見る。ライラは、温かくエルザに、


「そうよ、エルザ。コウイチは、とっても優しい人よ。彼の隣にいれば、あなたはもう、一人で魔物に怯える必要はないわ」



 エルザは、迷い、そして決意したように、立ち上がった。



「私、行きます! 私のこの力が、誰かを守れるならコウイチさん、ライラさん、私を、仲間にしてください!」



 その瞳には、臆病さの奥に隠されていたようだ。


 強い決意が宿っているな。俺が獲得した新しいスキル、『火魔法』の炎のように、力強いな。



 こうして、俺たちのパーティーに、臆病だが、規格外の魔力を持つ魔法使い、エルザが加わった。



 ものすごい早いペースで仲間が増えているな。



 俺の胸ポケットのプニが「ぴゅい!」と喜びの声を上げる。



 ライラは優しく笑い、俺はエルザの手を握る。俺の『絆結び』の物語は、ますます面白くなっていくといいな。

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