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「ここが、地下祭壇への入り口か」
俺は、ひんやりとした湿り気を帯びた大空洞の入り口に立っていた。
背後には、松明の火に照らされた仲間たちの顔がある。
「コウイチさん、見てください。地面から、どす黒い魔力が噴き出しています」
エルザが杖を構え、警戒するように言った。
「ああ。空間把握で探ると、この先にはとんでもない数の反応があるぞ」
俺がそう告げた瞬間、洞窟の奥からカシャン、カシャンという金属の擦れる音が響いてきた。
闇の中から姿を現したのは、ボロボロの鎧を纏った騎士たちだった。
騎士だな。
戦闘開始だ。
だが、その中身は人間ではない。
兜の隙間からは怪しく揺れる青白い炎が見え、手にした剣は赤黒く錆びついている。
「死霊騎士か。かつての英雄たちが、カースの呪いで操られているのね」
ライラが嫌そうに顔をしかめ、ミスリル剣を抜いた。
「あわわわ! 一体、二体、ひゃあ、数え切れません!」
フィンの言う通り、闇の中から続々と骨の騎士たちが這い出してくる。
「待たせたな、コウイチ。ここは僕たちが道を作る!」
背後から聞き覚えのある声がした。
白銀のマントをなびかせて現れたのは、ヴォルグ率いる『白銀の翼』のメンバーだ。
「フォルダム! 来てくれたのか」
「当然だろう。貸しを作ったままにするのは、エリートのプライドが許さないんでね」
フォルダムは不敵に笑い、剣を高く掲げた。
「白銀の翼よ、展開! 英雄たちの眠りを妨げる不届き者に、引導を渡してやれ!」
助かるな。
「コウイチ、ここは私たちが食い止めるわ! あんたは先へ!」
ライラが俺の背中を力強く押した。
「えっ? でも、ライラたちだけでこの数は」
「馬鹿言わないで。私を誰だと思ってるの? 絆で結ばれた最強の剣士よ」
「ライラ、任せる」
「うん」
ライラはニカッと笑い、そのまま死霊騎士の群れへと突っ込んでいった。
「風よ、荒れ狂え! 嵐の円舞曲!」
ライラの剣が緑色の光を放ち、周囲の死霊騎士をまとめて吹き飛ばす。
「コウイチさん、行ってください! 私が皆さんの盾になります!」
エルザが地面に杖を突き立てた。
「聖なる障壁、最大展開! 穢れし魂に安らぎを!」
眩いばかりの光が洞窟を照らし、死霊騎士たちの動きを鈍らせる。
「私も! 私も頑張ります! 知識の迷宮・重圧の檻!」
フィンが魔導書を広げると、天井から巨大な魔力の圧力がかかり、騎士たちが次々と地面にひれ伏した。
「みんな、俺も頑張る」
俺は胸の奥が熱くなるのを感じた。
今は、仲間たちが俺の背中を守り、未来へ送り出そうとしてくれている。
「わふん! わふん!」
シロが俺の足元に寄り添い、前方の闇を睨みつけた。
「わかってるよ、シロ。俺たちにしかできない役割があるんだよな」
「コウイチ、ぐずぐずするな! カースの元へ行けるのは君だけだ!」
ヴォルグが死霊騎士の首を跳ね飛ばしながら叫んだ。
「わかった! ここは任せたぞ、みんな!」
俺は意を決して、仲間の壁の間を駆け抜けた。
「絶対に、絶対に死ぬなよ! 戻ってきたら、みんなで宴会だ!」
「ええ、約束よ! 最高のワインを用意しておきなさい!」
ライラの威勢のいい声が背中越しに聞こえてきた。
俺とシロは、さらに深い地下へと続く階段を駆け下りた。
背後からは剣と剣がぶつかり合う音や、魔法の爆発音が響き続けている。
空間把握をフル回転させ、最短ルートを割り出す。
「シロ、左から三体来るぞ!」
「わふん!」
シロが影から飛び出し、不意打ちを狙っていた死霊騎士の喉元を噛み砕いた。
俺も立ち止まらず、すれ違いざまに魔導鋼の剣を振るう。
「剛力! 貫け!」
絆の魔力が宿った俺の剣は、腐った鎧など紙のように切り裂いた。
階段を下りるたびに、空気は重く、冷たくなっていく。
カースのどす黒い殺気が、肌をチクチクと刺すようだ。
どんどん厳しくなっていく。
みんなは大丈夫だろうか。
不安感が押し寄せてくるな。
「プニ、準備はいいか?」
「ぷるるんっ!」
俺の懐に潜んでいたプニが、返事をするように震えた。
「よし。みんなが繋いでくれたこの道、無駄にはしない」
俺は暗闇の先に見える、巨大な扉を見据えた。
そこが、カースの待つ祭壇の入り口だ。
「待ってろよ、カース。俺たちの『絆』がお前の呪いを打ち破る」
ここまで来たぞ。
後には引けないところまで。
俺は扉に手をかけ、思い切り押し開けた。
その瞬間、地響きと共に不気味な笑い声が空間全体に響き渡った。
「来たか。身の程知らずの、異世界の迷い子よ」
暗闇の奥で、カースの瞳が赤く光った。
俺の、そして俺たちの本当の戦いが、今ここから始まるんだ。




