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いよいよ、その時がやってきた。
俺たちは朝早くに宿を出て、静まり返った王都の道をギルドへと向かった。
空はまだ薄暗くて、冷たい空気が身を引き締めてくれる。
「ついに来たのね。カースとの対戦が」
「来たな」
「行きましょう」
「みんな、忘れ物はないか?」
俺が声をかけると、ライラが腰の剣を叩いて見せた。
「準備万端よ。あんたこそ、震えてないでしょうね?」
「震えてないよ」
俺が苦笑いすると、シロが優しく俺の手を舐めてくれた。
実は怖いのはあった。
しかし逃げるわけにはいかないので進む。
ギルドの重い扉を開けると、そこにはマリアンヌさんが一人で待っていた。
いつもは賑やかな酒場も、今は戦場へ向かう作戦本部のようだ。
「こんにちは。作戦ですよね」
「それで呼んだわ」
「ついに」
「来たわね、あんたたち。顔つきが変わったじゃない」
マリアンヌさんは大きな地図をテーブルに広げた。
「座りなさい。これが作戦よ」
俺たちは真剣な表情で、地図を囲んだ。
「カースが潜んでいるのは、王都の真下にある『古の封印祭壇』よ」
マリアンヌさんの指が、地図の中央を指し示す。
「かつてこの国を建国した英雄たちが、悪神を封じ込めた場所だわ」
「カースの狙いは、その封印を解いて、王都そのものを呪いの源に変えることね」
エルザが杖を握る手に力を込めた。
「そんなこと、絶対にさせません。王都の人たちが危ないです」
「戦略を伝えるわ。まずはフォルダムたちが入り口の広間を制圧する」
マリアンヌさんは俺の目を見据えた。
「カースは自分の周りに、負の感情を増幅させる結界を張っているわ」
「普通の冒険者じゃ、近づくだけで心が壊されてしまうのよ」
「でも、あんたたちには『絆』の力がある。それが唯一の対抗手段よ」
絆の力。俺たちがこれまで積み重ねてきた思い出の結晶だ。
「いい、コウイチ。カースの本体を叩けるのは、あんたの剣だけよ」
「ライラが道を作り、エルザが闇を払い、フィンが仕掛けを見破る」
「そしてシロが、あんたの魂を現実へと繋ぎ止める」
「誰一人が欠けても、この戦いには勝てないわ。わかってるわね?」
マリアンヌさんの厳しい声の中に、母親のような温かさを感じた。
「わかりました。俺たち、必ずカースを止めてきます」
俺が答えると、フィンが元気よく手を挙げた。
「はいっ! 怖いキノコの話も、巨大ひよこの話も、全部思い出に変えてぶつけます!」
「ふふ、そうね。私たちの思い出は、カースの呪いよりもずっと重いわ」
ライラが不敵に笑う。
マリアンヌさんは満足そうに頷き、棚から古びた酒瓶を取り出した。
「これは縁起物よ。戻ってきたら、最高級のステーキと一緒に開けましょう」
「それまで、預かっておくわ。絶対に、取りに来なさいよ」
「俺は約束します」
「もちろん戻るぞ」
「必ず帰りますよ」
「約束します」
俺たちは一人ずつ、マリアンヌさんと固い握手を交わした。
ギルドを出る時、俺は振り返って一度だけ頭を下げた。
外に出ると、太陽が昇り始めていた。
「よし、行こう。地下祭壇への入り口は、王宮の裏手だ」
俺たちは迷いのない足取りで歩き出した。
通りすがりのパン屋のおじさんが、俺たちに手を振ってくれた。
公園で遊んでいた子供たちが、「頑張れー!」と声を上げてくれた。
この何気ない日常が、俺たちの戦う理由だ。
王宮の地下へと続く隠し階段。
「行くぞ」
「うん、行こう!」
「私はみんなが居れば怖くないです!」
「フィンの言うとおりだ」
一段ずつ下りるたびに、周囲の温度が下がっていくのがわかる。
「空間把握、起動。ここから先は、もう敵の勢力圏だぞ」
「わふん!」
シロが先陣を切って暗闇へと踏み込んだ。
俺たちの絆を試す、試練が始まった。




