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お城での表彰式から一夜明けた。
俺たちは宿屋で、これからの作戦を練り直していた。
「ねえ、コウイチ。ちょっといいかしら」
ライラが珍しく、神妙な顔をして俺を呼んだ。
「どうしたんだ? 昨日のパーティーで食べ過ぎたか?」
「そんなわけないでしょ! 実はね、街の外に私の同族が来てるみたいなの」
ライラの耳が、ぴくりと動いた。
獣人族。ライラと同じ、誇り高き戦士の民だ。
王都なので、色々な種族がいるので、獣人族がいても不思議はないか。
「ライラさんの同族って、狼族の方々ですか?」
エルザが不思議そうに首を傾げた。
「ええ。それも、私の村の戦士長。嫌な予感がするわ」
「事情があるみたいだな。行ってみようか。みんな一緒なら心配は要らないだろう」
「それなら行ける」
ライラの表情は暗い。
なんでだろうか?
戦士長と何かあったのかな。
俺たちは、ライラに付き添って街の西門付近にあるキャンプ地へ向かった。
そこには、筋骨隆々の獣人たちが数人、焚き火を囲んでいた。
確かにライラが言っていたように、雰囲気は良くないな。
「戻ったか。一族の恥さらしめ」
一際体の大きな、灰色の毛並みの男が立ち上がった。
背中には巨大な斧を背負っている。
「ガロン。どうしてここへ来たの」
ライラが鋭い目つきで睨みつけた。
男はガロンという名前だ。
「長からの命令だ。お前を連れ戻しに来た。人間と群れるなど、戦士の誇りはどこへ行った!」
ガロンと呼ばれた男の声は、地鳴りのように低かった。
いきなりライラとガロンが口論になってしまった。
俺は仲裁に入りたいが、とても入れるタイミングではないか。
「私は戻らないわ。私はここで、大切な仲間を見つけたの」
ライラが俺たちの前に一歩出た。
「仲間だと? そんな弱そうな人間がか?」
ガロンが俺を見て、鼻で笑った。
俺らを相当に下に見ているな。
あまり口論には入れないが、ここは俺も反論した。
「そこまで言うことはないだろ。俺たちはライラの仲間だ」
俺が口を挟むと、ガロンの眼光がさらに鋭くなった。
「ならば証明してみろ。我ら獣人族は力こそが法。ライラを返してほしくば、俺を倒してみろ」
「ちょっと! いきなり決闘なんて、野蛮すぎます!」
フィンが慌てて割って入ったが、ライラがそれを止めた。
「いいわ。ガロン、私が勝ったら二度と私の前に現れないで」
「フン、お前一人ではない。その『仲間』とやらを全員出せ。まとめて相手をしてやる」
ガロンは周りの獣人たちに合図を送った。
どうやら、四対四の団体戦になるらしい。
街の中で争いは避けたいが、ライラがかかっているので引けないな。
相手の言う事に受けて立つしかない。
「受けて立とう。ライラは俺たちのパーティーに欠かせないんだ」
俺は魔導鋼の剣を抜いた。
「わふん!」
シロもガロンに向かって牙を剥く。
「エルザ、フィン、バックアップを頼む」
「はい、コウイチさん。聖なる加護を皆様に!」
エルザが杖を振ると、俺たちの体が淡い光に包まれた。
「行くぞ! 剛力!」
俺は地面を蹴り、ガロンの懐に飛び込んだ。
ガロンの斧が唸りを上げて振り下ろされる。
ドォォォォォン!
地面が割れ、土煙が舞い上がった。
「重いな。でも、バルカスさんの特訓に比べれば!」
俺は「空間把握」で斧の軌道を読み、最小限の動きで避けた。
「ライラ! 今だ!」
「了解! 俊足・双連斬!」
ライラがガロンの死角から、電光石火の速さで斬りかかった。
ガロンは斧の柄でそれを受け止めたが、ライラの力に驚いた顔をした。
「ほう、以前より腕を上げたな。人間とつるんで鈍ったかと思ったが」
「鈍ってなんかないわ! 絆があるから、私は強くなれるの!」
横から、他の獣人たちが俺たちを包囲しようとしてきた。
「あわわわ! 私もやりますよ! 古代魔法・泥濘の罠!」
フィンが地面を指差すと、獣人たちの足元が深い泥沼に変わった。
「ぬおっ!? 足が抜けん!」
「シロ、火炎放射!」
「わふん!」
シロの炎が泥を焼き固め、獣人たちの足を完全に封じ込めた。
「これが、俺たちの戦い方だ!」
俺は剣に魔力を込めた。
一人だけじゃない。
力を合わせて戦うのが、俺たちの戦い方だ。
「魔力譲渡、ライラへ全出力!」
俺の黄金の魔力が、ライラの剣に流れ込む。
ライラのミスリル剣が、太陽のように眩しく輝いた。
「これで終わりよ! 絆の共鳴・蒼天断!」
ライラが空高く跳ね上がり、青い一閃を振り下ろした。
ガロンの巨大な斧が、真っ二つに割れた。
衝撃波が広がり、ガロンは仰向けにひっくり返った。
「負けた。俺の斧を壊すとはな」
ガロンは空を見上げたまま、ぽつりと呟いた。
周囲の獣人たちも、戦意を喪失して座り込んだ。
「ガロン、わかったでしょ。私は一人じゃないの」
ライラが剣を収め、ガロンに手を差し出した。
「ああ。お前が選んだ道は、俺たちが思っていたよりずっと強かったようだ」
ガロンはその手を取り、ゆっくりと立ち上がった。
「長には、ライラは死んだと報告しておこう。自由にするがいい」
「ありがとう、ガロン」
ライラの目に、少しだけ涙が浮かんでいた。
ライラは俺たちの顔を順番に見て、深く頭を下げた。
「みんな、ごめんね。私の勝手な都合に付き合わせちゃって」
「何を言ってるんだ。俺たちは仲間だろ?」
俺が言うと、ライラは恥ずかしそうに笑った。
「そうですね。ライラさんは、私たちの大切な家族です」
エルザがライラの肩を抱いた。
「むふふ、これでまた一緒に美味しいものが食べられますね!」
フィンが空気を読まずに、また食べ物の話を始めた。
「わふん!」
シロもしっぽを振って、ライラに寄り添った。
「コウイチ。私、もっと強くなるわ。あんたを、このパーティーを守るために」
ライラが俺の目を見て、力強く言った。
その瞳には、一族の誇りを超えた、新しい決意が宿っていた。
絆がさらに深まったことを、俺は確信した。




