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ブラック企業の社畜だった俺は、転生したらスキル無限獲得になった ~底辺人生からチートになって、最強に成り上がる~  作者: おーちゃん


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第48話 神獣パレード



 空から黄金の呪いが消え、王都には穏やかな朝が訪れた。

 その日の王都は、いつにも増してざわついていた。半壊した巨神の姿に怯えていた民衆たちが、城門の向こうからやってくる獣を目にしたからだ。


「リアム様。街の人たちの視線が、今までにないほど刺さりますわね。それも、恐怖ではなくて、もっと、こう、キラキラしたものが」


 馬車を先導するように悠然と歩く俺の隣で、アリシアが少しだけ複雑そうな顔をして言った。


「恐怖で支配するのも楽だが、こういう視線の変化も、たまには悪くないな」


 俺が視線を向けた先。そこには、真っ白でふかふかの毛並みを日光に輝かせながら、楽しそうに歩く白銀の狼、シロがいた。


「クゥ、ワン!」


 シロが軽く吠えると、その声に合わせて柔らかな風が吹き抜け、沿道の人々に花の香りを運ぶ。


「わあぁ! 見て、お母さん! リアム様のわんちゃん、とっても大きいのに、お目々が優しくて可愛い!」


「本当ね。あんなに神々しい生き物、見たことがないわ。リアム様は、恐ろしい巨人だけじゃなくて、こんなに素敵な守護獣まで従えていらしたのね」


 民衆の声が、波のように広がっていく。

 恐怖の象徴だった悪役貴族リアムは、今や奇跡の白い狼を連れた貴公子として、街の人々の憧れの的に変わるかもな。そうなってくれたらシロには感謝か。


「主、支持率が急上昇しています。これ、計算通りですか?」


 影から現れたセレーナが、手に持った記録板を俺に見せる。


「計算? まさか。俺はただ、巨神アバターを失った後の穴埋めに神獣の形にし、シロを再起動しただけだ。民衆が勝手に俺を聖なる騎士と勘違いしてくれるなら、そのままにさせておけ。管理がしやすくなるからな」


「クゥーン」


 シロが俺の言葉に同意するように、腰に鼻を寄せた。俺がその大きな頭を無造作に撫でると、沿道の女性たちから「キャーッ!」という黄色い悲鳴が上がる。


「リアム様、なんだか少し、ジェラシーを感じてしまいますわ。私への視線より、シロちゃんへの視線の方が熱烈なんですもの」


 アリシアが頬を膨らませると、俺は苦笑して彼女の頭も軽く撫でた。


「シロとは別の意味で目立っているだろ、アリシア。さて、パレードはここまでだ。屋敷に戻って、マモンの件を整理するぞ」


 屋敷に到着すると、そこには留守を守っていた王女たちが、掃除用具やブラシを持って待ち構えていた。


「リアム様、お帰りなさいませ! そしてシロちゃん、ようこそ私たちの屋敷へ!」


 末姫のエレナが、キラキラとした瞳でシロに飛びつく。シロもまた、嬉しそうに彼女をペロペロと舐め回した。


「わっ、くすぐったいですわ! シロちゃん、やめてくださいまし!」


「エレナ様、ずるいですわ! 私もシロちゃんの毛並みを整えて差し上げたいのに!」


 フィオナが大きなブラシを持って駆け寄る。クラリスは、シロのために用意した特製の魔導おやつのお肉をお皿に盛り付けていた。


「シロちゃん、これは私の祈りを込めたお肉ですわ。たくさん食べて、またリアム様を守ってくださいね」


「ハグッ、モグモグ、ワンッ!」


 美味しそうにおやつを食べるシロの姿に、屋敷の空気はかつてないほど和やかになっていた。

 そんな幸せな光景を、中庭の隅っこから、うつろな瞳で見つめる影があった。


「あ、ああああ。僕は何をしているんだろう」


 鎖に繋がれたまま、地面に座り込んでいるのは、勇者カイルだった。

 彼は昨夜、巨神が壊れたのを見て今こそ神の審判が下ったと歓喜したのも束の間、現れたモフモフの神獣のあまりの可愛さに、心がポッキリと折れてしまっているようだ。


「クゥ?」


 シロが、一通り王女たちに可愛がられた後、トコトコとカイルの元へ歩み寄った。


「く、来るな! 僕は勇者だぞ! 君のような、リアムの使い魔に屈したりはしないぞ」


 カイルの抵抗を無視して、シロは彼の膝に大きな頭をゴロンと乗せた。

 ふかふかの毛をカイルの手に押し付ける。


「あ、あたたかい」


 カイルの手が、無意識にシロの毛の中に沈んでいく。


「なんだ、この感触。雲? いや、天国の綿菓子か? ああ神様。僕は今、人生で一番、救われている気がします」


 カイルの瞳から、一筋の涙が溢れ落ちた。


「リアム。君は、こんな卑怯な武器を用意していたのか。暴力や魔力では屈しない僕の心を、この究極の癒やしで溶かそうとするなんて。君は、なんて恐ろしい男なんだ」


「おい、勝手に目覚めるな。ただの狼だぞ」


 俺はバルコニーからその様子を見ていた。


「リアム様、カイル様がなんだか、幸せそうな顔をしてシロちゃんに埋もれていますわ。あれ、いいのでしょうか?」


 アリシアが心配そうに尋ねる。


「勝手にしておけ。戦う気力を失って、シロのふもふも毛のブラッシング係にでもなるなら、それはそれで有効な再利用だ」


「主。マモンからの通信が入りました。どうやら、シロをただのペットだと思って、油断しているようです」


 セレーナが差し出した水晶に、マモンの不愉快な笑い声が響く。


『ふん、リアム! あんな可愛らしいわんちゃんを連れて街を練り歩くとは、焼きが回ったな! 次の戦いでは、そのわんちゃんの首に黄金の鎖をかけて、私のペットにしてやるからな!』


「強欲な奴め。シロの価値を毛並みだけで判断するとは。セレーナ、マモンにはこう返しておけ。シロはコレクションよりも、指を噛みちぎるのが楽しみなようだとな」


「御意。きっと、マモンは震え上がるでしょうね」


 夕暮れ時、中庭に降り、シロの隣に座った。

 王女たちは家事に戻り、カイルはシロの足元でふかふかだ、これが世界の真理なんだと呟きながら眠りについている。


「シロ。こいつらに好かれすぎだぞ」


「クゥーン」


 シロが俺の膝に頭を乗せ、甘えるように鳴く。

 俺は疲れから、ため息をつきながらも、その柔らかい毛並みを指で撫でた。


「まあいい。シロがいるおかげで、王女たちの魔力も安定している。マモンを討つ時、風が必要になるからな。それまでは、せいぜいこの贅沢な暮らしを楽しめ」


 脳内には、まだ語られていない原作の続きが浮かんでいた。

 強欲のマモンは、これから王都の食料路を断ち、物理的に減らしてきて、民衆を苦しめようとするだろう。

 今の俺にはシロという新しい手札がある。


「マモンが奪おうとする日常を、俺がこのシロの風で守り抜いてみせる。それが、お前にとって最大の屈辱になるだろうからな」


 俺の冷たい、しかしどこか優しい視線が、シロの白い毛並みに注がれる。

 悪役貴族と、神獣シロ。

 異色のコンビが、崩れかけた世界に、新しい風を吹き込もうとしていた。


「リアム様ー! シロちゃんのお風呂の準備ができましたわー!」


 家の中から響く王女たちの明るい声。


「やれやれ。俺も、少

しだけ手伝ってやるか」


 俺は立ち上がり、シロと一緒に賑やかな屋敷へと入っていった。マモンとの戦いは、これからが本当の本番だとシロに話しかけた。

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