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「はぁ、はぁっ! ちょっと、みんな速すぎだってば!」
フィンの情けない叫び声が背後で響く。
俺たちは数千匹というキラービーの猛追を振り切るため、果樹園のさらに奥へ。
地図にも載っていないような深い深い森の最深部へと逃げ込んだ。
そこは、さっきまでの羽音の嵐が嘘みたいに静まり返った、不思議な場所だった。
見たこともないような巨大な花が咲き乱れている。
甘い蜜の香りが肺の奥まで満たしていく。
なんだか、ここだけ世界の時間が止まっているみたいだ。
「ここはどこ?」
「地図でもちょっとわからないな」
ふと、大きな花びらの影で何かが動いた。
「ん? 誰か、いるのか?」
俺が声をかけると、そこには背中にガラス細工みたいな透き通った羽。
小さな女の子が座り込んでいた。
「誰?」
「まさか妖精?」
「エルザは知っているの?」
「たぶん妖精では」
エルザが、壊れ物に触れるような優しい声で歩み寄る。
女の子はビクッとして顔を上げた。
その大きな瞳には、今にもこぼれそうな大粒の涙がたまっている。
「あぅ。ひっ、ひぐっ。お家が、私のお家がぁ」
「落ち着いて。何があったの? 俺たちが力になるよ」
俺が膝をついて目線を合わせる。
妖精の女の子はボロボロになった自分の羽を抱きしめて、ぽつりぽつりと話し出した。
「怖い女王蜂が、急にやってきて、私のお家を乗っ取っちゃったの。あの子たちが黄金リンゴの蜜をいっぱい吸って、どんどん大きくなっちゃって。もう、私じゃどうしようもなくて」
「なるほどな。あのハチどもの異常な殺気は、黄金リンゴの魔力のせいだったってわけか」
「魔力だ」
ライラが剣の柄を握り直し、周囲を鋭く睨みつける。
その時だった。
ズズズ、ズシン!
とんでもない地鳴りが足元から襲ってきた。
「な、なんだ!? 地震か!?」
「コウイチさん、上です! 地面じゃない、下から突き上げてきます!」
下?
フィンの叫びと同時に、果樹園の土を突き破って「それ」が現れた。
軽自動車、いや、大型トラックくらいあるんじゃないかっていう、デカすぎるハチ。
マジか!
「デカい!」
「クイーンキラービーです!」
「クイーン・キラービー。冗談だろ、あんなの勝てるのか!?」
女王蜂のお尻についた針は、もはや針っていうか巨大なランスだ。
あんなので刺されたら、一撃で串刺しにされる。
「楽しいはずが、なんでこうなる!」
「ビギィィィィッ!!」
鼓膜が破れそうな鳴き声。
女王蜂が羽を震わせると、周囲のハチたちがミサイルみたいに俺たちに向かって飛んできた。
とんでもないぞ!
「やらせるかよ! みんな、陣形を組め! 妖精さんを絶対に守るんだ!」
「了解! これでも喰らいなさい!『俊足・乱れ斬り』!」
ライラが風になった。
目にも止まらない速さで女王蜂の周りを駆け抜ける。
鋭い斬撃を叩き込んでいく。
火花が散り、金属音が響く。
「ギギッ!? ギィィィッ!」
怒ったクイーンの女王蜂が、さらに大量の部下を弾丸のように放ってくる。
「させるか!『真理の盾』!」
俺は一歩前に踏み出し、黄金の障壁を展開した。
ハチの弾丸が次々と盾に当たって弾け飛ぶ。
けど、数が多すぎて防戦一方だ!
「フィン! その黄金リンゴを使え! エルザに魔力を分けるんだ!」
「わ、わかりました! えーい、ヤケクソです! あむっ、はい、半分こ!」
フィンが黄金リンゴを豪快にかじり、残った半分をエルザの口にムギュッと押し込んだ。
「むぐっ!? ふぇ? わ、わわわっ! すごい、魔力が、体の底から溢れてきます!」
エルザが杖を掲げる。
そこから今まで見たこともないような、真っ白で巨大な光の渦が巻き起こった。
「これで終わりです! 悪しき羽音よ、静まりなさい!『聖なる裁き(ホーリー・ジャッジメント)』!!」
ドォォォォォォォォン!!
空が割れたかと思った。
天から降り注いだ巨大な光の柱。
逃げようとしたクイーンの女王蜂を真っ向から直撃した。
煙が晴れると、そこには女王蜂の姿はどこにもなかった。
主を失ったキラービーたちも、逃げ去っていく。
「やったぞ、エルザ!」
「凄い! これがエルザの魔法か!」
「私の魔法も役に立てたみたい」
「フィンも良くやったよ」
「そうでしょう、うんうん」
フィンは納得した顔に。
「いやいや元はと言えばフィンの話から、こうなったのだぞ」
「そうでした」
果樹園に、温かくて穏やかな日差しが戻ってきた。
「ありがとう。本当にありがとう。これでまた、お花を育てられるわ」
妖精の女の子が、パタパタと飛んできて、俺の鼻先にちゅっとキスをした。
「うわっ!?」
「あーっ! コウイチさん、ズルいです! 僕も頑張ったのに!」
「ふふ、絆が芽生えましたね、コウイチさん」
エルザがクスクス笑う。
その瞬間、俺の頭の中に不思議なログが流れ込んできた。
『スキル:妖精の加護を獲得しました』
「お、自動回復スキルか! 毒と麻痺が無効、これはカース戦でめちゃくちゃ助かるな!」
「新たなスキルを獲得したようね」
「また絆で強くなれる」
「果樹園に残ります。コウイチのことは忘れませんよ」
「わかった。また果樹園に遊びに来ます」
「またね!」
俺たちは妖精さんと別れ、夕暮れの帰り道を歩き出した。
「黄金リンゴ、半分になっちゃいましたけど、すっごく甘くて美味しかったです! コウイチさんも一口食べればよかったのに」
フィンが満足そうにお腹をポンポン叩いている。
困ったものだな。
「まったく、あんたの食いしん坊には困ったものね。でも、おかげで助かったわ」
「妖精さんも助けられたのはフィンのおかげでもありますね」
「あまり褒めるとフィンは反省しないからな」
「そうね」
ライラが笑いながら、フィンの肩をポンと叩いた。
俺は空中にステータス画面を呼び出し、新しく加わったアイコンを確認した。
【ステータス】
名前: コウイチ
年齢: 20歳
スキル:
* 『絆結び(コネクション)』Lv.MAX
* 『剛力』(ライラ):筋肉モリモリ、力持ち。
* 『俊足』(ライラ):めちゃくちゃ速く走れる。
* 『火魔法(初級)』(エルザ):指先から火が出る。
* 『魔力感知』(エルザ):魔物の気配がわかる。
* 『液体化』(プニ):体を水みたいにできる。
* 『毒耐性』(プニ):毒を食べても平気。
* 『嗅覚強化』(シロ):鼻がすごく良くなる。
* 『夜目』(シロ):暗いところでも見える。
* 『胞子散布』(マッシュモン):眠り薬や回復の粉をまく。
* 『自然同化』(マッシュモン):景色に隠れる。
* 『魔力自動回復』(ダンジョンコア):魔力が勝手にたまる。
* 『空間把握』(ダンジョンコア):周りの形が全部わかる。
* 『魔力譲渡』(ダンジョンコア):仲間に魔力をあげる。
* 『古代文字解読』(フィン):昔の難しい字が読める。
* 『罠感知』(フィン):罠があるのがわかる(でも本人はかかる)。
* 『魔力節約』(フィン):魔法をちょっとの魔力で使える。
複合スキル:
* 『剛炎一閃』:火のついたパンチを打つ。
* 『絆の共鳴』:みんなの力を合わせてパワーアップする。
* 『光輝・絆連斬』:光り輝く剣で切り刻む。
*『真理の盾』:精霊リステリアとの絆。
(魔王軍の『呪い』『腐敗』『精神汚染』を完全に遮断する聖域を作る)
*『古代の叡智』:
(魔法の詠唱速度が上がり、消費魔力が半分になる)
*『妖精の加護』:(戦闘中、常に体力が微回復し続ける。毒・麻痺を無効化する)
「よし。これでまた絆が強くなった」
俺は遠くに見える王都の巨大な門を見上げた。




