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俺たちは昨夜のパーティーの興奮が冷めないまま、冒険者ギルドへと向かった。
エドワード伯爵家を守り抜いたニュースは、すでに街中に広まっていた。
もう噂になっているようだな。
ギルドの扉を開ける。
俺たちが入って来ると、中の様子は一変した。
地鳴りのような歓声が上がった。
「ねえ、今までにない雰囲気だぞ」
「入りにくい感じする」
「入りましょう」
入りにくい感じだが、そのまま入った。
「おい! 英雄のお帰りだぞ!」
「あのバルモン伯爵を捕まえたんだってな! すげえよ!」
見知らぬ冒険者たちが、次々と俺の肩を叩いてくる。
ここは、実力と結果が正当に評価される世界。
憧れの存在になったのかな。
悪い気はしないが、照れてしまう。
「いつもよりも増して憧られているぞ」
「ライラも男性から人気です」
「私は強いだけじゃないってことか」
「ライラ、顔が赤いな」
「そ、そんなに見るなよ」
確かにライラへの声援もあった。
可愛いから人気が出たっぽいな。
「コウイチ、ライラ、エルザ、フィン。こっちへ来なさい」
カウンターの奥で、マリアンヌさんが手招きしていた。
彼女の隣には何か置かれているのが目に入る。
何かな?
豪華な金縁の証明書みたいな感じする。
「あんたたち、今回の功績は王宮からも高く評価されたわ」
「地下でも戦ったし、貴族にも貢献したからかな」
「そうだな、エドワード家から王宮に伝えられたそうだ。そこで王宮からも伝達がある」
「王宮か、話が大きくなったな」
「凄いです。王宮から褒められることは大変な名誉ですよ!」
「それで、王宮からの評価どんなものですか?」
「それは今から伝える。コウイチたちのパーティーには、本日をもって、パーティーをAランクへ昇格させます!」
「おおおお!」
「Aランクだってよ! 最速のランクアップだろう!」
「やるなあ!」
その瞬間、ギルド内が今日一番の盛り上がりを見せた。
信じられないがうれしい。
「やったぁぁ! Aランクですよ、コウイチさん!」
フィンが飛び跳ねて、案の定エルザの足を踏んだ。
「あ痛っ。でも、本当におめでとうございます、みんな!」
「全員の活躍ですね!」
「危ない場面もあった。でも私たちは負けなかったもんな!」
ライラもエルザも歓喜した。
言われるように最速の速さかもしれない。
「最初はDランクだったのにな」
「今じゃDランクはなつかしい」
俺たちが昇格の喜びに浸っていると、ギルドの入り口が静かになった。
カシャン、カシャンと、整った足音が近づいてくる。
「誰かな?」
「冒険者ですかね」
そこに現れたのは、真っ白なマントを羽織った四人の男女だった。
装備のすべてが高級品で、一目でエリートだと分かる姿。
圧倒的な存在感がある。
「他の冒険者とは違う」
「誰なんです?」
そこへ男が来て、
「マリアンヌ、例の合同任務の件だが」
先頭に立つ金髪の男が、透き通った声で言った。
彼は俺たちを見ると、鼻で笑った。
なんだ、なぜ笑う?
「君たちが噂の新人か。足を引っ張らないでくれよ」
「なんですって! 失礼ね!」
ライラが即座に食ってかかった。
「おっと、怖いお姉さんだ。僕はフォルダム。Aランクパーティー『白銀の翼』のリーダーだ」
フォルダムと名乗った男は、俺の胸元にある新しいギルド証をジロジロ見た。
「運だけで上がってきたAランクじゃ、今回の遠征は厳しいと思うけどね」
「運かどうかは、現場で判断してくれよ」
俺は冷静に言い返した。
遠征とか知らないが、俺たちをバカにしているのはわかる。
いきなり来て上から目線なのはムカッと来る。
「まあまあ、二人ともそこまでにして」
マリアンヌさんが地図を広げて割り込んだ。
「ちょっとマリアンヌさん。任務って何のことかな。私たちは聞いてませんが」
「エルザの言うのはわかります。これから説明します。今回の任務は、王都から遠く離れた『忘却の古森』の調査よ」
「忘却の古森? 聞いたことない」
エルザは知らないと。
「最近、森の奥から不気味な魔力の波動が観測されているわ」
「その任務ってのは忘却の古森に行って魔物とかと戦えってことか」
「ライラの言った通りです。とても危険になる。だからコウイチたちにも参加して欲しい」
「まだ私たちは参加すると決めてないぞ。勝ってに決めないで」
「アハハハ、怖いのか獣人?」
「怖いだと、私が古森が怖いわけあるか!」
「じゃあ参加でいいよな」
「参加でいい!」
ライラは相手の挑発に乗った形で参加すると言い切る。
ライラは俺を見ると、俺も参加でいいよと頷く。
そこまでライラをバカにされて黙っていられないからな。
「カースとの決戦前に、忘却の古森の危険を取り除いておきたいの。忘却の古森はかなり危険度が高い」
つまり、これは王都を守るための重要な前哨戦というわけだ。
いきなりの展開で俺たちは戸惑うけども、説明されれば、参加するのは当然だ。
「白銀の翼とあんたたち、二組のAランクで行ってもらうわよ」
「僕たちだけで十分だと思うけど、ギルドの命令なら仕方ない」
「私たちだけで十分だよ。白銀の翼なんて要らねえ」
「十分だと? ふざけるなよ、お前らこそ邪魔するな。言っておくが最初は僕たちだけの任務だったのだ。そこへ急にコウイチのパーティーも参加となったのだ。つまりは僕たちの手助けってことだ。わかったな」
フォルダムが仲間たちに合図を送った。
仲間らはヘラヘラと笑っている。
Aランクのパーティーらしいが、俺たちを完全に下に見ているのはムカつく。
協力したくもないが、一緒に行くなら協力する他ないか。
「明日の朝、北門に集合だ。遅れないでくれよ、新人君」
「逃げるなら今だぜ、新人さん」
「あははははは、明日だぞ」
彼らはギルドを去っていった。
言うことが全て気に入らないな。
特にライラは苛ついているな。
「ムカムカします! あの人、絶対性格が悪いです!」
フィンが頬を膨らませて怒っている。
「実力はあるんだろうけどね。でも、俺たちには俺たちのやり方がある」
俺は仲間たちの顔を見て、力強く頷いた。
「ライラもムカムカしないで行こう」
「ムカつくぞ」
ライラは落ち着かせたい。
とりあえずマリアンヌさんには、俺たちは任務に参加するとは言った。
「2つのパーティーで協力しなさい。白銀の翼はとても有能な集団ですから」
「協力できればいいですが」
協力するように言われたものの、本当にできるか自信はないか。
翌朝、俺たちは指定された北門へと向かった。
そこには、特注の馬車を用意したフォルダムたちが待っていた。
「おはよう。歩いて行くつもりだったのかい?」
「いや、俺たちも馬は用意してある」
俺たちは自分たちの愛馬に乗り、遠征を開始した。
王都を離れ、景色がどんどん険しくなっていく。
フォルダムたちは移動中も陣形を崩さず、完璧な連携を見せていた。
エリートと言われるだけあって、基礎はしっかりしている。
数日の移動を経て、俺たちは『忘却の古森』の入り口に到着した。
木々が異常に巨大化し、空が見えないほど枝が重なり合っている。
険しい森のようだな。
「ここからは馬を置いて徒歩で行く。僕たちが先行するから、君たちは後ろを付いてきて」
ヴォルグが命令口調で言った。
いちいち命令してくる。
「上から目線なのが嫌だ」
「ライラ、落ち着け。協力すると決めた」
「わかったよ」
ライラは早くも苛ついているな。
「空間把握、起動」
俺はこっそりスキルを使い、森の奥を探った。
ギルド長のマリアンヌが言っていたように、危険度は高い。
探った結果はヤバそうな森だ。
不用意に進むのは危ないのは伝えよう。
「フォルダム、待て。この先、空気の密度がおかしい」
「ふん、新人の勘かい? 僕の探知魔法には何も映っていないよ」
フォルダムは俺の助言を無視して、森の奥へと足を踏み入れた。
彼には探知魔法があるらしい。
その探知には問題ないと言うことか。
仕方なく俺たちは従う。
森の中は、不気味なほど静まり返っていた。
鳥の声一つ聞こえない。
「シロ、何か感じるか?」
「グルル」
シロが低く唸り、毛を逆立てている。
「エルザ、防御魔法の準備を。ライラはいつでも抜けるように」
「はい」
「はいよ」
完全には信用はしない。
俺が指示を出すと、白銀の翼のメンバーがクスクスと笑った。
なぜ笑う?
「怖がりだね。このあたりには低ランクの魔物しかいないはずだよ」
「俺にはそうは思えませんが」
「あははははは」
「あはははは、新人は僕たちの言う通りに従えばいいのさ」
めっちゃ笑うな。
この森は危険だと俺のスキルでは通告しているのにな。
それとも余裕で倒せるってことなのか。
白銀の翼が俺が思っている以上に強いとなる。
その余裕はすぐに打ち砕かれなければいい。
パキッ、と乾いた音が響いた。
何か来るぞ。
次の瞬間、周囲の巨大な木々が、まるで生き物のように動き出した。
「な、なんだ!? 木が襲って、うわああ!」
白銀の翼の魔導師が、伸びてきた根っこに足を捕られて宙吊りになった。
「伏せて!」
俺は叫びながら、魔導鋼の剣を抜き放った。
森全体が、一つの巨大な罠へと変貌していた。




