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衛兵隊に子供たちを引き渡した後、宿に帰った。
宿では休息した。
色々とあったし、みんな疲れたと思う。
地下は誰も慣れていないから、普段よりも2倍疲れた実感ある。
少しばかり休んでから、ギルドへ向かった。
「報告に行こうか」
「またマリアンヌギルド長から評価されますよ」
「わからないさ。マリアンヌさんは厳しい面もある。簡単には評価されないと思う」
街の人たちは、無事に戻ってきた子供たちの姿を見て歓声を上げている。
「よかった、本当によかった」
エルザが少し涙を見せながら、小さく言った。
「ええ、でもまだ仕事は終わってないわ。ギルド長に報告しないと」
「そうだな、行こうか」
ライラが俺の背中を叩き、ギルドの重い扉を開けた。
ギルドの中に入ると、マリアンヌさんがカウンターに身を乗り出して待っていた。
俺たちが無傷で、しかも子供たちを全員救ったと知ると、彼女は大きく目を見開いた。
「地下から帰りました」
「ご苦労。あんたたち、本当にやってのけたのね!」
「聞いていたよりも酷い光景でした」
「あんな所はもう二度と行きかよ。私は嫌だぞ」
「ライラ、ご苦労さん。ギルドから感謝する。ライラ達以外には成功しなかったと言い切れる」
「わかってくれれば、それでいい」
ライラは今回の依頼はさすがに嫌だったようだ。
俺もなるべくは地下には行きたくないのが本音だな。
フィンは、あのメビウスという男が持っていた不気味な書類を取り出した。
「マリアンヌさん、これを見てください。下水道にいたのはただの魔物じゃありませんでした」
「書類? 貸しなさい」
「どうぞ」
俺が書類を差し出すと、マリアンヌさんはそれを奪い取るようにして読み始めた。
書類をめくるたびに、彼女の顔がどんどん険しくなっていく。
マリアンヌさんでも知らないことが起きていたということかな。
「ドクター・メビウス。魔導帝国の追放者ね。まさかカースの手先になっていたなんて」
「メビウスの名前は知っていたのですか」
「名前は知っていたが、地下にいたとは知らなかった。それでメビウスは?」
「死にました。地下で死んでいます」
「死んだか。わかりました、後で地下から死体は回収とする」
メビウスの死体は後で回収となった。
「改造キメラの実験。王都のど真ん中でこんなことが行われていたなんて」
マリアンヌさんは書類を机に叩きつけた。
エルザが、
「私も驚きました」
「でもねエルザとみんなが止めてくれたおかげで、最悪の事態は免れたわ。感謝する」
「いえ、僕たちはやるべきことをしただけです」
俺が答えると、フィンが隣でフンスと鼻息を荒くした。
「それだけじゃありません! その地図、王都の地下の『祭壇』への隠し通路が載っています!」
フィンの言葉に、マリアンヌさんが再び書類に目を落とした。
「なるほど。カースは正面からではなく、地下から祭壇を狙うつもりだったのね」
「役に立てたようで、何よりです」
「良くやりましたよフィン。あなたのこの情報があれば、衛兵隊と協力して先回りできるわ。大きな一歩よ」
「えっへん! 私の功績とは照れます」
「ふふふ、いいパーティーになったわね」
「はい、最高のパーティーです」
「ギルド長として、あなた達を光栄に思います。じいさんの谷に訓練に出したのが正解だった」
「あの訓練は厳しかったです」
ギルドの中が希望の熱気に包まれた。
周りの冒険者たちからも「よくやった!」「さすが遊撃パーティーだ!」と声が上がる。
いつの間にか、ギルドの冒険者から尊敬されるまでになっているな。
「やるじゃねえかコウイチ」
「ああ、あなたはAランク冒険者ヴォルグ」
「さすが俺様に決闘で勝ったたけはある! あははははは」
「負けたくせに、偉そうだぞヴォルグ」
「ライラよ、今度は俺様と決闘しろよ」
「いつでも相手になってやる」
ギルドで褒めてくれた中にはヴォルグがいた。
彼は以前に俺と決闘したAランクの冒険者だ。
ヴォルグもいて、賑やかになった。
「よし、これで作戦が立てられるわ。でもね、コウイチ」
マリアンヌさんが俺の目を見て、真剣なトーンになった。
「カースとの決戦は、まだ未定に。でも決まれば王都の全戦力を結集させる」
「わかりました。そのつもりでいます」
「その時は俺も一緒に行くぜ」
ヴォルグも協力すると誓う。
うるさいが、頼もしい戦力にはなるだろう。
俺は自分の拳をぎゅっと握りしめた。
「それまで、あんたたちは自由よ。戦いの準備をしておきなさい」
マリアンヌさんはそう言って、俺たちの分の報酬袋を差し出してきた。
ずっしりと重い。
ギルドを出た後、俺たちは昼下がりの王都を歩いた。
「ねえ、お買い物に行かない?」
ライラが明るい声で提案した。
「賛成です! 消耗品や、ちょっといい保存食も買い込みましょう!」
フィンが元気よく跳ねた。
その拍子に、彼女は通りかかった台車の野菜カゴに突っ込みそうになった。
「あわわわっ! 玉ねぎが、玉ねぎが空を舞っています!」
「フィン、落ち着きなさいよ! そんなんじゃ、カースにバカにされますよ」
「はい!」
俺たちは笑いながら、王都の市場を巡った。
決戦はまだだが、不思議と怖さはなかった。
この仲間となら、どんな暗闇も怖くはない。
「コウイチさん、あれ見てください! とっても綺麗なブローチですよ」
エルザが露店に並ぶ青い宝石のブローチを指差した。
「みんなでお揃いでつけませんか? お守り代わりに」
「いいわね! 絆の証って感じでかっこいいじゃない!」
ライラも乗り気だ。
俺は人数分のブローチを買い、みんなに渡した。
シロの首輪と、プニのマントにも小さいのを付けてやった。
「よし、これで俺たちの気合は完璧だな」
俺たちは夕食を買い込んで、宿屋へと戻った。
カースのことは一旦忘れて、みんなで美味しいものを食べるんだ。
今は、明日という未来を自分たちの手で掴み取りたいと思っている。
「みんな、今日は早めに休もう。疲れました」
「ええ。私も剣をたくさん振っな。まだ強くなれる」
ライラの言葉に、俺たちは強く頷いた。
王都の夜が静かに更けていく。
しっかりと休んで、体力の回復をしよう。
いつカースと戦うかわからないからな。




