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「グォォォォォッ!」
キメラの声が狭い地下通路に反響した。
三つの頭が、それぞれ別の方向に動いて俺たちを威嚇している。
ライオンの頭が火を吹く。
山羊の頭が毒を吐き。
蛇の尻尾が鞭のようにしなる。
ヤバそうな魔物だな。
「こんな化け物が王都の地下にいたのか!」
「なんてデタラメな魔物なの! 属性がバラバラじゃない!」
ライラがミスリル剣を構えながら叫んだ。
「解析します! ダメです、魔力波形が滅茶苦茶で弱点が絞れません!」
フィンが手元の魔導書を必死にめくりながら声を張り上げる。
キメラが鋭い爪を振り下ろしてきた。
「剛力!」
俺は魔導鋼の剣でそれを受け止めた。
ギギギィィッ!
凄まじい力が腕に伝わってくる。
こいつ、強いぞ。
女の子が心配だな。
「重いな! エルザ、女の子を頼む!」
「はい! 聖なる守り(プロテクション)!」
エルザが杖を振る。
隅っこで震えていた女の子の周りに光の膜を張った。
これで一安心だ。
あとは目の前の化け物を片付けるだけだ。
しかし楽ではないが。
谷での訓練の成果を出せる機会でもある。
俺たちの成長が試されるな。
「ライラ、右の山羊を頼む! 俺は正面のライオンを抑える!」
「任せなさい! 俊足!」
ライラが残像を残すほどの速さで駆け出した。
彼女の剣が、毒を吐こうとしていた山羊の首を鋭く切り裂く。
「メェェェッ!」
山羊の頭が苦しそうに鳴き、毒液が辺りに飛び散った。
「うわっ、危ないわね!」
ライラは軽やかなステップでそれを避けた。
だが、キメラは一筋縄ではいかなかった。
「シャァァッ!」
尻尾の蛇が、死角からライラの背後を狙って伸びてきた。
蛇が来るぞ!
「危ない!」
俺が助けに行こうとした。
しかし正面のライオンが火炎放射で道を阻む。
邪魔だな!
「くそっ、間に合わない!」
その時、俺の肩から青い影が飛び出した。
まさか?
「ぷるるんっ!」
プニだ。
プニは空中で自身の体を平べったく変形させた。
「液体化・盾形態か!」
プニが透明な壁のように広がる。
蛇の牙を包み込んだ。
ガチィィン!
蛇の鋭い牙がプニの体の中に食い込む。
液体状の体には傷一つ付かない。
素晴らしい!
「ナイスだ、プニ!」
「助かったわ、プニちゃん!」
ライラがその隙に距離を取る。
プニはさらに形を変え、蛇の体にベッタリと張り付いた。
「ぷにぷにー!」
そのまま重量を増やして、尻尾の動きを封じ込める。
プニが命がけで頑張っている。
俺たちも頑張る。
「今だ! フィン、援護を!」
「了解です! 古代魔法・泥の拘束!」
フィンが足元の汚水を操り、キメラの足元を泥沼に変えた。
「グォッ!? !」
キメラの巨体が大きく揺らぐ。
「エルザ、一気に決めるぞ!」
「はい! 聖なる雷!」
エルザが杖を天に掲げると、地下の天井から激しい雷光が降り注いだ。
バリバリバリッ!
キメラが全身を痙攣させて叫び声を上げた。
ハンパないな。
雷の衝撃でライオンの火が消え、山羊の意識が遠のく。
「チャンスだぞ」
「これで終わりだ! 絆の共鳴・一閃!」
俺は「真理の盾」の光を剣に。
一直線に突き進んだ。
キメラの胸にある魔力核。
「空間把握」で見えていた急所を、正確に貫く。
ここだ!
ドォォォン!
激しい爆鳴と共に、キメラの巨体が崩れ落ちた。
異形の怪物は黒い霧となって霧になっていく。
残ったのは、冷たい下水道の空気。
俺たちの勝ちだろう。
女の子は大丈夫かな?
「倒したか?」
俺が剣を収める。
エルザが女の子の元へ駆け寄った。
「大丈夫ですよ。もう怖くありません」
エルザの優しい声に、女の子がようやく声を上げて泣き出した。
「よかった。間に合って本当によかったわ」
ライラが剣の血を拭いながら、ため息をついた。
「でも、変ですね。このキメラ、首に何か付いています」
フィンが消えかかった死骸の一部を拾い上げた。
そこには、真鍮で作られた小さなタグが付いていた。
「何て書いてあるの?」
「『試作三号』と。 誰かが意図的に作ったってことかな」
フィンはタグに刻まれた不気味な数字を見つめる。
「実験なら危険だな」
「こんなことが地下であったとは驚きですよ」
これはただの魔物の襲撃じゃない。
王都の地下で、恐ろしい実験が行われている証拠だ。
「わふん!」
シロが奥の通路を向いて、鋭く吠えた。
シロ、何かあるのか?
「まだ何かいるのか?」
シロの「夜目」が、暗闇の先にある違和感を捉えているようだ。
「助けたのは、この子だけじゃないみたいだぞ」
まだ終わっていないのか。
緊張感が高まる。
俺たちはシロの後に続いて移動。
さらに下水道の奥へと足を踏み入れた。
そこには、さらなる驚愕の光景が待っていた。




