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ブラック企業の社畜だった俺は、転生したらスキル無限獲得になった ~底辺人生からチートになって、最強に成り上がる~  作者: おーちゃん


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34話

 特訓三日目の朝、俺たちは滝の裏側にある洞窟を探索していた。



 みんな頑張っているな。


 まだまだ特訓は継続しよう。


 すると、川のほとりに小さな小屋があるのを見つけた。


 煙突から細い煙が上がっている。


 小屋かな?


「誰か住んでいるのかしら? こんな辺鄙な場所に」


 ライラが不思議そうに小屋を見つめた。


「隠者、というやつでしょうか。気になります!」


 フィンが好奇心に勝てず、トコトコと小屋に近づいていった。


「危ないぞ、フィン。勝ってに行動するな」


 案の定、入り口の小さな段差でフィンが派手に転んだ。


「あだだだっ! 鼻が、鼻が小屋の扉に激突しました!」


 フィンが騒ぐと小屋から人の声が。


 誰だ?


 人がいると聞いてないが。


「騒がしい連中じゃな。修行の邪魔じゃわい」


 中から低い、しわがれた声が聞こえてきた。


 扉がゆっくりと開き、一人の老人が姿を現した。


 老人がなぜここに?


 腰まである白い髭に、鋭い眼光。


 背筋がピンと伸びている。


 ただ者ではない雰囲気が漂っているな。


 いったい何者なのか。


「すみません、邪魔をするつもりはなかったんです」


 俺は慌ててフィンを立たせて、老人に謝った。


 老人は俺の腰にある魔導鋼の剣をじっと見つめた。


「ほう。その剣、そしてその魔力の質。お主ら、ギルドから来たな?」


「ええ。マリアンヌさんに紹介されて、ここで特訓をしています」


 俺が答えると、老人はふっと笑う。


「マリアンヌの小娘か。相変わらず人使いが荒いようじゃな」


「こ、小娘!? ギルド長をそんな風に呼ぶなんて」


 エルザが驚いて口を押さえた。


「わしの名はバルカス。昔、少しばかり剣を振るっておった隠居人よ」


「バルカス? まさか、五十年前の伝説の冒険者、金剛のバルカス様ですか!?」


 フィンが目を丸くして叫んだ。


 知っているのか。


 かなりの有名な人物てことか。


「何じゃ、まだわしの名を知る若者がおったか」


「相当に強い人なのか」


「もちろんですコウイチ。この人は英雄です」


「英雄でしたか」


「英雄がなんでこんな奥で暮らしてんだよ」


「もう引退したんでな、冒険者はな」


 敵ではなかったら良かった。


 それにギルド長とも知り合いらしい。


 どんな関係かは知らないが。


 バルカスさんは笑いながら、俺たちを小屋の中へ招き入れてくれた。


 部屋の中には、ボロボロになった大きな盾と、数々の勲章が飾られていた。


「私はライラ。実は魔王軍と戦っています。四天王カースと今後戦うつもりだ」


「お主ら、四天王カースと戦うつもりなのか」


 バルカスさんは囲炉裏の火を眺めながら、静かに語り始めた。


「カースの腐敗の呪いは、わしの仲間を何人も奪っていった」


「奴の正体は、かつての聖騎士の成れの果てじゃ。慈悲の心を捨て、闇に魂を売った男よ」


「聖騎士が、魔族に?」


 俺は言葉を失った。


 正義のために戦っていたはずの人間が、なぜそこまで堕ちてしまったのか。


 もっと話を聞きたい。


「奴を倒すには、ただの力では足りん。心の奥底にある絶望に打ち勝つ光が必要じゃ」


 バルカスさんは、俺の胸元に手をかざした。


「お主の『絆』、それはまだツボミのようなもの。もっと深めるのじゃ」


「過去、わしらは信じ合う力が足りなかった。だから、奴を仕留めきれなかった」


 老人の瞳には、深い後悔の色が混じっていた。


 敗北したって意味みたいだな。


 俺はバルカスさんの震える手の上に、自分の手を重ねた。


「バルカスさん、俺たちは負けません。あなたの分まで、俺たちがカースを倒します」


「頼もしい言葉じゃ。お主に免じて、わしの秘蔵の戦術を教えてやろう」


 偉大な人に教えてもらえるのは嬉しい。


 どんな教えなのかな。


 バルカスさんは立ち上がり、庭にある大きな岩を指差した。


「カースの霧は、一瞬の隙を突いて心に入り込む。盾を張るだけでなく、全員の魔力を円のように循環させるのじゃ」


「魔力の円。そうか、みんなの魔力を繋げっぱなしにするのか!」


 俺はハッとして、ライラとエルザ、フィンと手を取り合った。


「わふん!」


 シロも俺の足に体を擦り寄せてきた。


「みんなの魔力を一つに。やってみるよ!」


 教えはシンプルな考えだった。


 しかしシンプルな物ほど難しいかな。


 言われることは理解できても、実際に行動できるかは別だ。


 でもやってみる価値はある。


 俺が中心となり、光の鎖がみんなを繋いでいく。


 バルカスさんはその様子を、満足そうに眺めていた。


「これじゃ。これこそが、わしらが辿り着けなかった『本当の絆』よ」


「お主らなら、あの悲劇を繰り返さずに済むかもしれんな」


 俺たちはその日、バルカスさんから魔王軍の戦い方を徹底的に叩き込まれた。


 実戦経験に基づいたアドバイスは、どんな教科書よりも重みがあった。


「厳しいぞ、大変だぞ。老人は」


「これくらいで文句は言うでないライラ」


「うう、頑張るか」


「百万倍ためになります!」


 フィンの元気な声に、バルカスさんもガハハと笑った。


 特訓はさらに熱を帯びていく。


 伝説の冒険者から受け取った教えを、俺は絶対に忘れない。


 夕暮れ時、俺たちはバルカスさんの小屋を後にした。


「コウイチ、次は戦場で結果を出すのだ。期待しておるぞ」


 老人の言葉を背中で聞きながら、俺は一歩一歩、力強く谷を歩いた。


 特訓は明日で終わりだ。


 王都へ戻れば、カースとの決戦も近くになる。


 俺の心には、バルカスさんから託された希望が、熱く燃え上がっていた。

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