32話
俺たちは眠い目をこすりながら、再びギルドへと向かった。
街の中は、昨夜の図書館の事件で持ちきりだったようだ。
「おい、あのパーティーじゃないか?」
「ああ、昨日キングオークを倒した奴らだぞ」
通りを歩くだけで、冒険者たちが道を空けてくれる。
日本では、満員電車で肩身の狭い思いをしていたのに。
今はまるで、ヒーローになったような気分だ。
ギルドの中に入ると、昨日以上の熱気が俺たちに。
なんだこれ。
あの女性はギルド長では。
「コウイチ! 待ちかねたわよ!」
受付の奥から、ギルド長のマリアンヌさんが姿を現した。
彼女はいつになく真剣な表情をしていた。
「図書館の騒ぎ、あんたたちの仕業ね。ザガンを倒したんだって?」
「ええ。カースの刺客でした。本を守るために必死でしたよ」
俺が答えると、マリアンヌさんは深いため息をついた。
「四天王の刺客をこうも簡単に。あんたたち、本当に底が知れないわね」
彼女は俺たちを二階の特別室へと案内した。
マリアンヌさんから褒められるのは嬉しい。
しかし少し厳しい顔になる。
「でもね、カースとの戦いはまだお預けよ」
部屋に入ると、マリアンヌさんが地図を広げた。
「カースは今、王都の地下深くにある『封印の祭壇』を狙っているわ」
「封印の祭壇? 何が封印されているんですか?」
エルザが心配そうに尋ねた。
「かつての魔王の一部よ。それが解放されたら、この国は終わりね」
マリアンヌさんの言葉に、部屋が凍りついた。
本当ですか。
終わりって言い切ったのは衝撃だな。
「カースは慎重な男よ。今は自分の魔力を温存して、手下に祭壇を探させているわ」
「じゃあ、俺たちは何をすればいいんですか?」
「特訓よ。今のあんたたちなら、祭壇に近づく前にカースの『呪いの霧』にやられるわ」
マリアンヌさんはニヤリと笑った。
「王都の近くに、聖なる泉がある『清浄の谷』があるの」
「そこで新しい力を完全に自分のものにしなさい」
ライラが新しい剣を握りしめて言った。
「特訓か。望むところよ! 私、もっと速くなりたいの!」
「私も、エルザさんの魔法をサポートする新しい術を覚えます!」
フィンがやる気満々で立ち上がった。
その拍子に、彼女は地図の上にインクをこぼしそうになった。
「あわわわ! すみません! 拭きます、今すぐ拭きます!」
「いいわ、その意気よ。特訓の費用はギルドが持つわ」
マリアンヌさんは俺たちに説明する。
特訓か、面白しろそうだな。
今よりもレベルアップするのは大事だからな。
「コウイチ、あんたは仲間の力を引き出す天才よ」
「自分自身の限界も超えてみなさい。それがカースを倒す唯一の道よ」
俺は力強く頷いた。
自分の成長がみんなの未来に繋がっていると実感する。
「よし、みんな! 清浄の谷へ出発だ!」
俺の掛け声に、みんなが元気に拳を突き上げた。
「わふん!」
シロもしっぽを振って、準備は万端だ。
「プニも行くぞ」
カースとの決戦はまだ先だ。
でも、俺たちは一歩ずつ、着実に強くなっている。




