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ブラック企業の社畜だった俺は、転生したらスキル無限獲得になった ~底辺人生からチートになって、最強に成り上がる~  作者: 奥野ミズオミ


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3

 ライラの案内で森を抜けた俺たちは、獣人族の集落ではなく、人間の街を目指していた。



 ライラの集落はもう少し森の奥にあるらしく、まずは人里離れた集落より、人間の街「セルタ」の方が情報も物資も手に入りやすいだろうというライラの判断だった。



「街までは、あと半日くらいだ。私が案内するから、はぐれないようにな」



「うん」



 俺の足は『俊足』スキルの恩恵で、ライラの歩調に全く遅れをとることはなかった。



 むしろ、少し駆け足でついていけるくらいだ。この身体能力の変化には驚くばかりだ。



 日本とこの世界の違いだな。



 道中、俺はライラに色々とこの世界の常識を尋ねてみた。



「ライラ、この世界って通貨とかあるのかな」



「当たり前だ。基本は銅貨、銀貨、金貨だ。人間も私たちも共通で使っている」



「へえ、結構共通の仕組みなんだな」



「交易があるからな。貨幣が統一されていないと不便だろう」



 ライラは相変わらずぶっきらぼうだが、質問にはきちんと答えてくれる。その優しさが嬉しかった。



 普通に考えても通貨は必要ではある。次は冒険者が俺の知識の冒険者なのかも確認したい。



「冒険者っていうのは、どんな仕事なんだ?」



「依頼を受けて魔物の討伐や採集、護衛なんかをするプロの人間たちだ。お前は記憶喪失で無一文なんだろう? まずは冒険者登録をして、日銭を稼ぐのが一番手っ取り早い」



 ライラの提案は理にかなっていた。前世では会社員だったが、この世界ではスキルがある。



 冒険者として生きていく。その覚悟が少しずつ固まってきた。



「じゃあ、俺も冒険者になるよ」



「そうか。お前、さっきのゴブリンの時も、私がいなくてもなんとかしそうな雰囲気だったしな。見込みはあると思うぞ」



 そう言われて、少し照れる。実際は腰を抜かしていたのだが、スキルのおかげでそう見えたのかもしれない。



 会話をしながら、俺たちは順調にセルタへと向かっていた。



 森の中は魔物が出るため緊張感があったが、ライラが隣にいると思うと、不思議と安心できた。



 これも絆の効果だろうか。不思議な感覚だな。



 昼過ぎになり、遠目に大きな城壁が見えてきた。あれがセルタ街っぽいな。



 おお、街って感じする!



 ゲームの世界に没入した感じする。



「あれがセルタか。大きいな」



「ああ。この辺りでは比較的大きな交易都市だ」



 城壁の前には門があり、兵士たちが通行人を確認している。



 ライラはフードを深く被り、頭の耳が見えないようにしていた。



 なぜ隠したのかな?



 都合の悪いことでも?



「獣人族は差別されるのか?」



「まあ、人間の中には快く思わない奴もいる。トラブルを避けるためだ」



 少し寂しそうに答えるライラ。異世界でも差別問題はあるんだな、と少し暗い気持ちになった。



 前世の世の中の方が、もしかしたら進んでいたのかもしれない。



 門をくぐる際、俺とライラは兵士に呼び止められた。



「おい、お前ら。身分証はあるか?」



 身分証なんて持っているわけがない。転生してきたのだから。



「すみません、私は記憶喪失で」



「記憶喪失だぁ? 怪しいな。どこから来た?」



 兵士は剣の柄に手を当て、俺を睨みつけてきた。まずい、疑われている。



 その時、ライラが前に出て、懐から金属製のプレートを取り出した。



「この者は私が保護した。冒険者ギルドで登録する予定だ。これは私の冒険者証だ」



 兵士はライラのプレートを見ると、態度を変える。



「Cランク冒険者か。それなら話は別だ。ギルドへの同行、許可する。ただし、街で問題を起こすなよ」



「分かっている」



 ライラはクールに答える。Cランクってこの世界では、どのくらいすごいんだろう。



 俺の知識では中級クラスの強さだと思われるな。



 ライラのおかげで俺は難なく街に入ることができた。ライラ、ナイスフォローだ。



 街の中は人で溢れていた。石畳の道には露店が並び、活気に満ちている。



 豚の丸焼きらしきものから、見たこともない果物、武器や防具まで、ありとあらゆるものが売られていた。



 匂いも音も、全てが新鮮で、俺は圧倒されていた。日本とは全く違う風景だ。



 まるでゲームの世界に没入したみたい。



「すごいな、この街!」



「初めて見る顔だな。記憶喪失とは言え、少しは驚くかと思ったが」



「前世、じゃなかった、記憶を失う前は、もっと大きな街に住んでいた気がするんだ」



 苦し紛れにごまかしながら、俺は周囲を見渡す。目指すは冒険者ギルドだ。



 ますがに日本みたいに自動車は走っていないし、電車もないが、馬車はあるか。



「ギルドはあっちだ」



 ライラに導かれ、俺たちは街の中心部にある大きな石造りの建物へと向かった。



 そこが冒険者ギルドらしい。ちょっと緊張する。



 中に入ると、さらに活気があった。



 多くの冒険者らしき人々が、酒を飲んだり、依頼の張り紙を見たりしている。



 皆、傷だらけの鎧を着ていたり、大きな武器を持っていたりして、いかにもプロといった感じだ。



 俺の服装だと完全に冒険の素人だよな。ライラが案内してくれる。



「ここで登録するんだ。受付はあっちだ」



 ライラは受付カウンターを指差した。俺たちはカウンターへ向かう。全部お任せする。



 そこには綺麗なお姉さんが座っていた。こういうところは、前世の役所と変わらないな。



「すみません、新規の冒険者登録をお願いします」



 ライラが冒険者証を見せながら言う。お姉さんはニコリと笑って俺を見た。



「はい、承知いたしました。では、こちらの書類にご記入をお願いします。お名前と、簡単な経歴を」



「あの、実は記憶喪失で、経歴とか分からないんです」



 面倒な作業だな。俺が正直に言うと、お姉さんは少し驚いた顔をしたが、すぐに笑顔に戻った。



「あらあら、そうなのですね。では、分かる範囲で大丈夫ですよ。お名前は?」



「コウイチです」



「コウイチさんですね。年齢はいくつくらいでしょうか?」



 俺はステータスで確認した年齢を伝える。見た目も20歳に見えるだろう。



「二十歳くらい、だと思います」



「分かりました。では、こちらの水晶玉に手を当ててください。あなたの魔力量と適性ランクを測定します」



 お姉さんに言われるがまま、俺はカウンターに置かれた手のひらサイズの水晶玉に手を当てた。



 これって漫画で見たことある展開で、魔力量を計測するみたいだ。



 魔力なんてあるのか分からないが、ステータスには「魔力:5」と表示されていた。微々たるものだが、ゼロではない。



 水晶玉が淡い光を放ち始める。5と判定されるのかな。



「ふむふむ魔力はそこそこですね。耐久も平均的。筋力と敏捷が少し高め、あら?」



 あら、とは?



 お姉さんが驚いた表情を見せる。ライラも興味深そうに覗き込んでいる。



 元は日本人で転生したとかまで判定できるのか?



「どうしたんですか?」



「いえ、この数値は筋力と敏捷、一般の成人男性の倍近くありますね。あなたは何か特別な訓練を?」



 しまった。『剛力』と『俊足』スキルの効果がステータスに反映されているんだ。



 一般人の倍って、結構すごいんだな。あれだけ歩いたのに疲れにくいからな。



「ええと、まあ、昔から鍛えていたというか」



 またしても苦しい言い訳をする俺。スキルのことを説明するのは面倒だ。



「なるほど。この身体能力なら、初期ランクはEではなく、Dランクから始められますね。適性職は剣士か斥候でしょうか」



 Dランクスタート!? いきなりランクアップだ。これは嬉しい誤算だ。



 スキルのおかげで、俺の冒険者人生は順調な滑り出しが決定。



「Dランクからでお願いします」



「はい、ではこれがあなたの冒険者証になります。裏面にはあなたの簡単な情報が刻印されています。大切にしてくださいね」



 笑顔が素敵なお姉さん。お姉さんから渡されたのは、ライラが持っていたものと同じような金属製のプレートだった。



 俺の名前とDランクの文字が刻まれている。今日から俺は冒険者だ。



「ありがとうございます」



 俺がプレートを受け取ると、ライラが満足そうに頷いた。



「Dランクスタートとはな。やはり見込みがあったな、コウイチ」



「ライラのおかげだよ。ありがとう」



 俺はライラに心からの感謝を伝える。本当に、彼女がいなければ今頃どうなっていたか分からない。



 不思議なことに日本では女の子と気持ちが伝わることはなかったのに、ライラとは通じている。



 上を見たらきりがないが、Dランクからのスタートなら不満はないかな。



 登録を終えた俺たちは、依頼の張り紙が貼られた掲示板の前へと移動した。



 そこには様々な依頼が書かれていた。



 「ゴブリン討伐」「薬草採取」「荷物運び」など、初心者向けのEランク依頼から、もっと難易度の高いCランク依頼まで様々だ。



「まずはEランクの簡単な依頼からこなして、この世界に慣れるのがいい。薬草採取なんかは安全でいいぞ」



 ライラがアドバイスしてくれる。俺もその意見に賛成だった。



 いきなり無双できるわけじゃないし、地道にレベル上げをするのが堅実だ。



「薬草採取の依頼にしよう。明日の朝一番で森に行こう」



「そうだな。今日はもう遅い。宿を取って休もう」



 俺たちは冒険者ギルドを出て、宿屋を探すことにした。



 スローライフっぽくテント生活もあるのだろうが、外は危ない気もする。



 街にはいくつか宿屋があるらしく、俺たちは「夕暮れの剣亭」という名前の宿屋に入ることにした。



 宿屋の主人に話を聞くと、安価な部屋なら泊まれるとのことだったので、そこに一泊することにした。



「宿の代金は私が支払う。コウイチは金はないのだろ」



「助かる。俺も稼げるようになる」



 宿は大事だしな。俺は無一文なので、ライラが立て替えてくれた。



 最初の依頼で稼いで返すつもりだ。夕食は宿屋の食堂で取ることにした。



 俺は豚肉と野菜の煮込みを注文した。ちょっと楽しみ。異世界の料理ってワクワクする。



 ライラは肉料理をがっつり食べている。獣人族は肉が好きなんだろうかな。



「ライラ、その料理美味しい?」



「ああ、最高だ。肉は正義」



 満面の笑みで答えるライラ。さっきまでのクールな戦士の雰囲気はどこへやら、可愛い少女の顔になっていた。



 そのギャップが可愛くて、俺は少し笑ってしまった。夕食後、俺たちはそれぞれのベッドに戻った。



 疲れているのか、すぐに寝息を立て始めた。俺はベッドに横になりながら、今日一日の出来事を振り返っていた。



 ブラック企業で死んだと思ったら異世界に転生して、ゴブリンに襲われて、ライラに助けられて、冒険者になった。



 あまりにも情報量が多くて、頭がパンクしそうだ。でも、不思議と絶望感はない。



 むしろ、これからの生活に少しだけワクワクしている自分がいた。これも『絆結び』スキルのおかげかもしれない。



 ライラという仲間ができたことで、一人じゃないという安心感がある。本当にライラと会って良かったな。



 ライラ本人は俺を邪魔だと思っているかというと、嫌ではなさそうかな。



 もし嫌ならば、俺と街に来ることもないとは思う。



 ステータスウィンドウを開いて、自分の能力を改めて確認する。



 『剛力』と『俊足』。



 この二つのスキルが俺の武器だ。明日は薬草採取だが、きっと森の中では役立つのを期待する。



 明日の朝一番で薬草採取に行くこと、宿代をライラに返すこと、そしてこの世界で強く生きること。



 やるべきことはたくさんある。俺は静かに目を閉じ、明日からの冒険に備えて眠りについた。



 異世界での二日目は、こうして慌ただしくも、希望に満ちた形で幕を閉じた。

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