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ブラック企業の社畜だった俺は、転生したらスキル無限獲得になった ~底辺人生からチートになって、最強に成り上がる~  作者: 奥野ミズオミ


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2


 最悪の切り殺される展開は回避できたようだから、安心した。



「おい、立てるか?」



 少女は俺の目の前に剣を突き立て、手を差し伸べてきた。その表情は真剣そのもので、わずかに警戒の色も含まれているように見えた。



 そりゃそうだよな、いきなり森の中で怪しい男が倒れてたんだから。



「あ、ああ、なんとか」



 俺はその手を取って、なんとか立ち上がった。


 少女の手は、見た目以上にゴツゴツしていて、戦いの跡が刻まれているようだった。



「助かった。ありがとう」



 頭を下げると、彼女は少しだけ尻尾をパタパタと振った。


 まるで機嫌がいいときの犬みたいだ。



 その仕草に、少しだけ警戒心が解けた。攻撃はしないよな。



「礼には及ばない。この森は最近ゴブリンが多くてな。たまたまパトロール中だったんだ」



 少女はそう言って、剣についた血を草で拭う。


 その手際も慣れたものだった。



 剣士らしいしぐさだ。俺も最強の剣士になってやってみたいが、困難だろうな。



 会話をしても大丈夫そうだし、名前を言ってみようかな。



「俺はコウイチ。君は?」



 自己紹介をしてみる。異世界で初めての人間との会話だ。



「ライラだ。獣人族の戦士」



 ライラ、か。いい響きだ。名前を聞けたことで、一歩距離が縮まった気がした。



「ライラ、本当にありがとう。君がいなかったら、俺は食われていたよ」



「気にするなと言っただろう」



 ライラは少しぶっきらぼうにそう言うと、周囲を見回した。



「それより、お前こんな森で何してるんだ? 冒険者か? だとしたら装備が貧弱すぎる」



 図星だった。俺はただ転生したばかりの、スーツから麻のシャツに着替えただけの一般人だ。



 どう見ても冒険者には見えないから、どうしよう。



 思いつきで言ってみる。



「いや、その実は、記憶喪失なんだ」



 苦し紛れに嘘をつく。転生者だなんて言っても信じてもらえないだろうし、もし怪しまれて捕まったりしたら最悪だ。



 ここは定番の「記憶喪失」で乗り切るしかなく、果たしてライラはどう反応するかな。



「記憶喪失か。なるほどな」



 ライラは顎に手を当てて、納得したような表情を見せた。


 意外とあっさり信じてくれた。



 前世の知識では、記憶喪失設定は怪しまれるものだったが、この世界ではよくあることなのかもしれない。



 何とかなりそうだ。



「とりあえず、ここじゃ危険だ。私がいる集落まで案内してやる。そこで詳しい話を聞こう」



「いいのか?」



「ああ。見捨てるわけにもいかんだろう」



 ライラは少しだけ頬を赤らめたように見えたが、気のせいだろうか。



 クールな戦士様といった雰囲気で、強さもあるが、優しさもあった。



 異世界に転生して最初に会ったのがライラで助かったな。



 性格の悪い冒険者とかだと、奴隷に売られることもありそうだし、とりあえず生きているから良かった。



 相談したところ、俺たちはライラの集落を目指して歩き始めた。



 知らない森の中を歩きながら、俺はライラに色々と質問してみたいことがあった。



「ライラの集落って、どのくらい遠いんだ?」



「ここからなら、二時間ほどだな。近道を通る」



「そっか。この世界って、魔物ってたくさんいるのか?」



「たくさん、というほどではないが、油断はできない。特に最近はゴブリンの数が増えている。お前みたいな無防備な奴が一人で歩ける場所じゃない」



 最後の一言は少しトゲがあったが、的を射ている。


 俺は苦笑いするしかなかった。



 ただ森には魔物は多く生息しているのはわかった。



 ライラがいればゴブリン級の魔物ならば、討伐してくれそう。



 今のところ俺のスキルは何も変化はなく、最弱のままだ。



 スキルを獲得できるようだが、条件があるのか。



 今は条件に達していないとしたら、謎になってきた。



「ライラはずっとこの森にいるのか?」



「ああ。ここは私たち獣人族の縄張りだ。私はここで生まれ育った。里を守る戦士としてな」



 誇らしげに胸を張るライラ。その姿は堂々としていて、頼もしい限りだ。



 獣族は異世界では必ず登場する種族であるから、ライラと会っても違和感はなかった。



 しかし日本で異世界の作品に触れていない人が転生してきたら、混乱するだろうな。



 そこは俺がオタクなのに救われたと思える。



 誇らしいライラに対して、前世の上司とは大違い。


 あのクソ上司が転生したならゴブリンに食われるのを望む。



「戦士ってことは、いつもああやって魔物と戦ってるのだろ」



「まあ、仕事だからな。それが私の役目だ」



「まだ若くて可愛いのに大変だな」



「可愛いだと」



 会話をしながら歩いていると、少しずつライラに対する警戒心が解けていくのが分かった。


 彼女はぶっきらぼうだが、根は優しいのだろう。



 記憶喪失の俺を見捨てず、集落まで連れて行ってくれるんだから。


 可愛いと言ったら少し言葉に詰まっていたが。



 俺はふと、自分のスキル『絆結び(コネクション)』を確認してみた。




【スキル】


『絆結び(コネクション)』Lv.MAX



 このスキル、ライラに使えるんじゃないか? 信頼できる仲間と出会い、心からの絆を結ぶことでスキルを獲得する。



 今、俺はライラに心から感謝し、信頼し始めている。これは絆なんじゃないか?


 単なる俺の単純な発想でも、試してみる価値はあるかもしれない。



 俺はライラの横顔をじっと見つめた。彼女は前を向いて歩いている。



「ライラさ、強いんだな」



「まあな。鍛えてるから」



「俺もライラみたいに強くなりたいな。この世界で生きていくために」



 俺が素直な気持ちを口にすると、ライラは足を止めて俺の方を向いた。


 琥珀色の瞳が揺れる。



「お前、本気で言ってるのか?」



「当たり前だろ。もうゴブリンに怯えて逃げ回るのは嫌なんだ。自分の身は自分で守りたい」



 その時だった。



 俺の視界に、再び半透明のウィンドウが浮かび上がった。



――スキル『絆結び(コネクション)』が発動しました。



――仲間:ライラ(獣人族・戦士)との絆が成立しました。



――ライラの特性に応じたスキルを派生獲得します。



――スキル『剛力』を獲得しました。



――スキル『俊足』を獲得しました。



 何だこれは!



 生きてきて経験したことのない何かだぞ。



 俺のスキルが起動したのなら、面白い。



 ウィンドウが消えると同時に、俺の体に変化が現れた。


 内側から湧き上がってくるような力強い感覚。



 足元が軽くなったような、そんな不思議な感覚だ。



 思わず自分の拳を握りしめた。



「これ、は」



「どうした、コウイチ?」



 ライラが不思議そうに俺を見ている。


 俺は彼女にバレないように、そっと自分のステータスを確認した。






【ステータス】


名前: コウイチ


種族: ヒューマン


年齢: 20


レベル: 1


HP: 100/100


MP: 50/50


筋力: 10 → 20


敏捷: 10 → 20


魔力: 5


耐久: 10


運: 1


スキル:


『絆結び(コネクション)』Lv.MAX


『剛力』Lv.1(NEW)


『俊足』Lv.1(NEW)




 やったぞ!



 筋力と敏捷が跳ね上がっている!



 しかも新しいスキルが追加されている。これはすごい。



 本当にスキルを獲得できたんだ。ライラとの絆で。あまりの嬉しさを抑えた。



「いや、なんでもない。ちょっと力が湧いてきた気がして」



 俺は慌てて笑顔を作ってごまかした。ライラは少し不思議そうな顔をしたが、それ以上は追求してこなかった。


 変な男だと思われたかな。深く考えずに先に進もうか。



「そうか。まあ、早く集落に行くぞ」



「集落よりも街がある」



「街でもいいよ」



 俺の足取りはさっきよりもずっと軽くなっていた。獲得した『俊足』スキルのおかげだろうか。



 ライラの歩調にも余裕でついていける。気持ち楽に歩けるな。



 ライラと二人で、獣人族の集落ではなく近くの街に向かう道すがら、俺は確信した。



 この『絆結び』スキルは、間違いなくチートスキルであって、外れスキルではないと思う。



 友達よりも深い関係になるなんて俺には無理だと思ったし、不可能と決めつけていて、でもやってみたらできた。



 仲間が増えれば増えるほど、俺は強くなれる。


 ブラック企業で死んだ俺に与えられたセカンドチャンス。



 この世界では、一人で抱え込まず、仲間と協力して生きていくことが、生き残るための鍵なんだ。



 ライラという初めての仲間を得て、俺の異世界無双の物語が、今、本当に始まったんだと実感した。


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