24話
ギルド長室を出た。
俺はそこで、ようやく大きなため息を吐いた。
「ふぅ。緊張したな」
俺が言うと、隣にいたライラがニヤニヤしながら笑った。
「コウイチ、あんなに肩に力が入って。面白かったわよ」
「仕方ないだろ。あんなすごい美人に見られたら誰だって緊張するよ」
俺は苦笑いしながら頭をかいた。
年上のお姉さんではあるが、美人だったからな。
「でも、遊撃パーティーに選ばれるなんて。光栄ですね!」
エルザが嬉しそうに杖を抱きしめた。
「そうですよ! ギルドのバックアップがあれば、もうお金の心配もありません!」
フィンが鼻息を荒くして言った。
「あわわっ。興奮しすぎて、階段を踏み外しそうになりました!」
フィンがよろけたのを、俺は慌てて支えた。
「フィン、落ち着けって。まずは装備を整えに行くぞ」
ギルドの支援金はかなりの額だった。
俺たちは王都で一番の賑わいを見せる、商業地区へ向かった。
立ち並ぶお店の数に、俺は驚く。
お店が多いな。
「すごいな。どこから見ればいいんだ?」
「まずは武器屋よ! 私の剣、少し刃こぼれしてたのよね」
ライラが俺の手を引いて歩き出した。
着いたのは「鉄の咆哮亭」という大きな武器屋だった。
店の中に入ると、熱気とハンマーの音が響いていた。
「いらっしゃい! 威勢のいいパーティーだね」
筋骨隆々の店主が、汗を拭いながら声をかけてきた。
「いい剣を探してるの。魔力の通りが良いやつをお願い」
ライラがそう言うと、店主は奥から数本の剣を持ってきた。
「これはミスリル銀を混ぜた特製品だ。軽くて丈夫だぞ」
ライラが一本のショートソードを手に取った。
シュッ、と鋭い素振りを見せる。
「いいわね。これなら私のスピードに付いてこれそう」
ライラは満足そうに微笑んだ。ライラにピッタリだな。
次に俺が、一本のロングソードを手に取った。
カッコいいな。まるでゲームに出てくる剣だな。
その瞬間、俺の『絆結び』のスキルが微かに反応した。
「店主、この剣は何でできてるんだ?」
「ああ、それは魔導鋼といってね。持ち主の魔力に合わせて性質を変えるんだ」
持ち主で変わるのか。俺にも反応するのかな。
俺は「剛力」と「火魔法」を少しだけ剣に流してみた。
すると、剣身がほんのりと赤く熱を帯びた。
変化したぞ!
「これだ。これならみんなの力を合わせやすい」
俺はその剣を買うことに決めた。
「コウイチさん、とってもかっこいいです!」
エルザが拍手してくれた。
「あ、私も! 私も何か強そうな武器を……!」
フィンが大きな斧を手に取ろうとして、重さに耐えきれず後ろにひっくり返った エルザが拍手してくれた。
「あ、私も! 私も何か強そうな武器を……!」
フィンが大きな斧を手に取ろうとして、重さに耐えきれず後ろにひっくり返った。
「ドーン!」
すごい音がして、フィンが床に転がった。
「フィン! 大丈夫か?」
「ふえぇ。武器が私を拒否しました」
フィンは目を回していた。重た過ぎたのだろうな。
「あんた、魔法使いなんだから重いのは無理でしょ」
ライラが溜息をつきながらフィンを立たせた。
結局、フィンには魔力を増幅させる綺麗なブレスレットを買うことにした。
次はエルザの番だ。
魔法具の専門店「星の雫」へ入った。
店内は不思議な薬や、光る石でいっぱいだった。
「エルザ、好きなのを選んでいいよ。俺たちの命を守る大事な杖だからな」
「ありがとうございます、コウイチさん」
エルザは真剣な表情で、一本の美しい杖を選んだ。
「これは『世界樹の枝』から作られた杖です。回復魔法の効果を高めてくれます」
エルザがその杖を持つと、彼女の周りに柔らかな光が溢れた。
「これで、もっとみんなを癒せるようになります」
エルザの優しい笑顔に、俺は胸が熱くなった。
俺も負けてられないな。誰かのために強くなりたいと思える。
異世界に来て、俺は本当に大切なものを見つけたんだ。
「シロにも何か買ってあげよう」
俺はシロの頭を撫でた。
シロは「わふん!」と嬉しそうに鳴いた。
ペットショップのような店で、シロに丈夫な革の首輪を買った。
そこには防御力を高める魔法がかけられている。
シロも戦闘では戦うからアイテムは必須だな。
「似合ってるぞ、シロ」
「くぅ~ん」
シロはしっぽをブンブンと振って喜んだ。
「良かったな」
「ぷるんぷるん!」
プニも自分をアピールしてきた。
欲しいってことかな。でもスライムに合うアイテムがあるのかな。
「プニのは売ってないだろうな」
「ありますよ。プニにはそうね、この不思議な色のマントを似合う」
エルザはプニの体に合わせて、小さな魔法のマントをかけた。
プニはマントをスーパーマンのように誇らしげに跳ねた。
「みんな、いい装備になったな」
俺は満足して街を見渡した。
「あ! コウイチさん、あっちに美味しそうなケーキ屋さんが!」
フィンが指差した。
「さっきご飯食べたばかりだろ」
「デザートは別腹ですよ! 古代の文献にもそう書いてあります」
本当かよ! 嘘っぽいぞ!
フィンの適当な言い訳に、みんなで大笑いした。
俺たちはケーキを買い込み、王都の公園で食べることにした。
美味しそうなケーキだこと。
噴水があり、花が咲き乱れる美しい公園だ。
「おいしい。こんなに甘くて美味しいもの、食べたことないわ」
ライラが顔をほころばせている。
「本当に。幸せな味ですね」
エルザもケーキを一口ずつ大切に食べていた。
フィンは口の周りをクリームだらけにしていた。
「コウイチさん、私、このパーティーに入って本当に良かったです!」
フィンが満面の笑みで言った。
「俺もだよ。みんながいてくれるから、俺は頑張れるんだ」
俺は素直な気持ちを伝えた。
ライラが少し顔を赤くして、俺の肩に頭を乗せた。
「これからも、よろしくね。リーダー」
「ああ。絶対にみんなで生き残って、この世界を守ろう」
俺たちは沈み始めた夕日を眺めながら、決意を新たにした。
新しい装備。新しい絆。
俺たちの新しい冒険が、これから本格的に始まる。
ザルガスの言葉が忘れられないな、
魔王軍四天王の脅威。
不安はあるけれど、この仲間となら乗り越えられる。
俺は自分の剣をぎゅっと握りしめる。
「よーし! 明日からは猛特訓だ!」
「ええーっ!? せっかく美味しいもの食べたのに!」
フィンの叫び声が、響いた。
俺たちは笑いながら、今夜の宿へと歩き出した。
王都アステリアに来て、何かが動いた感じだな。




