表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アップルパイ・ナイツ  作者: O.K.Applefield
4章
PR
43/44

4-12


 イリア皇女が飛行型精霊甲冑を出してきた処で、私、アイラ・マクディアスには、この戦法は読めていた。

 急降下して来る彼女の機体をしっかりと見据えて、待ち受ける。

 通常、陸戦型精霊甲冑に空を飛ぶ相手を攻撃する手段は無い。

 だから、飛行型精霊甲冑の操縦者は比較的安全である。

 サファイア・ラークをお姫様に与えた関係者は、それだけ彼女の事を考えていたと言う事だろう。

 皇帝の孫なのだから当たり前の事だけど、それでも少し羨ましい。

 また、その事に対してイリア様が複雑な気持ちを持っている事も想像できる。

 ともかく、勝負は一瞬で決まるだろう。

 相手が上空を飛んでいる間は私に攻撃手段は無いし、それはサファイア・ラークも同じだ。

 お互い攻撃のチャンスは、サファイア・ラークが急降下して進路が交差する時だけだ。

 ふと、真面目に待ち受けずに、回避したらどうなるだろうかと考える。

 サファイア・ラークは速いが、全力で横に跳べば攻撃を避けられない事は無いはずだ。

 もちろん、こちらから攻撃しなければ勝てないけど、私としてはそれでもかまわない。

 皇女様を『お姉様』と呼ぶのは嫌だし、呼ばれるのも嫌だ。

 時間まで逃げ続ければ引き分けになる。

 一瞬、そんな考えが頭をよぎったけど、直ぐにその思考を振り払ったのは、皇女様の真剣な顔を思い出したからだ。

 この試合はただの授業の一環でしかないし、賭けの対象もふざけた物だった。

 でも、彼女には何かの決意が有った様に思う。

 私は剣を構え直す。

 わざと負けてあげる事も考えない。

 多分、イリア皇女も勝ち負けを重要視していない様に思う。

 ただ、真剣勝負をする事こそに拘っている様に思えた。



 飛行魔法で空に舞い上がった私のサファイア・ラークを見ても、アイラさんのバロン・ルージュには動揺の色は見えなかった。

 冷静に剣を構えて、私の攻撃を待ち受ける。

「流石です」

 私はそう呟く。

 サファイア・ラークの翼を操り、進路を定める。

 一旦、急上昇からの急降下をするが、降下する角度を抑えて、地面と平行して飛ぶ様にする。

 幾ら精霊甲冑が頑丈だからと言って、真上から地面に激突したら中の人間は無事ではないだろう。

 進路にバロン・ルージュを据える。

 向こうも迎撃する準備が出来ている様だ。

加速ブースト!!」

 私は飛び立つ時に使った飛行魔法を再度使う。

 急降下の勢いで滑空していたサファイア・ラークが更に加速する。

 アイラさんは姿勢を低くして、私の攻撃を避けながら、剣で斬り付けるつもりの様だったけど、それより早くサファイア・ラークを肉薄させる。

 兜に装着したダガーがバロン・ルージュの頭部をかすめる。

「浅いかっ!?」

 ギリギリのところでかわされた。

 いや、アイラさんは手にした剣をこちらの機体に当てていた。

 でもそれは攻撃の為ではなく、剣をこちらに当てて反動で自機の姿勢を下げる動作の補助にしていたのだ。

 ほんの一瞬の交差でそこまで出来るのは流石と言って良い。

 サファイア・ラークはバロン・ルージュの上を飛び過ぎる。

「手強い!!」

 私は自機を再上昇させながら、息を吐く。



「双方、浅い!」

 教導機に乗った審判の教師が判定を下す。

 お姫様の飛行型精霊甲冑が、再び上空を旋回する。

「お姫様にしてはなかなかやるじゃないか?」

 私、セーラ・マクディアスは隣で観戦しているレオンハルト皇子にそう言う。

「私の娘だからな。・・・と言いたいところだが、正直なところここまで出来るとは思っていなかったよ」

 皇子はそう答える。

「だが、これで勝負は決まったかな?昔戦った疾風のナントカと同じだ。私にも、アイラにも同じ戦法は二度は通用しない」

 私は余裕の笑み彼に向ける。

「・・・それはどうかな?」

 一瞬不機嫌になったかと思ったが、レオンハルトは不敵に笑い返してきた。



 イリア様のサファイア・ラークが上空で旋回して、私のバロン・ルージュ目がけて、再び急降下して来る。

 今度は正面からではなく、真横から迫るが、私は直ぐに正対する様に向きを変える。

 さっきの急加速には驚いたが、一度見たので、次は対処出来ると思う。

 負ける気はしない。

 自機のバロン・ルージュは私の意志に忠実に動いてくれる。

 だけども、今乗っている精霊甲冑がバロン・ルージュではなくてグラン・ヴァインだったら一回目で私の勝ちだっただろうと考えてしまう。

 それどころか、グラン・ヴァインだったら飛行魔法も使えるから、上空を飛ぶ相手にもジャンプして直接攻撃出来る。

「ふっ」

 私は軽く息を吐いて、その妄想を振り払う。

 今ここに有るもので、出来る事をする。

 それだけだ。

 皇女様のサファイア・ラークが迫る。

 今回は再加速しない。

 フェイントだろうか?

 どちらだったとしても、私は対処出来る。

 ・・・と思ったら、サファイア・ラークがいきなり変形した。

 かなりの速度で飛んでいる最中に鳥を模した形態から、二足歩行の人間形態に成ったのだ。

 兜に装着していた短剣ダガーを再び右手に握る。

 私は、さっきよりも更に驚いた。

 完全に想定外の奇襲である。

 でも、急に空気抵抗の大きい形に成った為に、相手の精霊甲冑はバランスを崩す。

 低空を飛んでいたので、片足を地面に着けた際につんのめる様になる。

 イレギュラーな動きなので対処が難しい。

 それでも、イリア様は右手の短剣ダガーだけは前に突き出す。

 私は一瞬どう動くべきか迷う。

 もう目の前に相手に機体は迫っていて、避け様は無い。

 相手の武器をかわしたとしても、機体どうしは激突してしまう。

 精霊甲冑の操縦席には慣性制御魔法が掛けられているけど、想定以上の衝撃が与えられた場合には、その加速度を消しきれない。

 ぶつかったら、お互い酷い事になるだろう。

 私はとっさに剣から手を放し、突き出された相手の腕を掴む。

 サファイア・ラークの勢いに逆らわずに、私はバロン・ルージュを後ろに倒れ込ませる。

 後転しながら勢いを受け流し、片足で相手の腹部を蹴り上げて投げ飛ばす。

 帝都騎士学校では精霊甲冑の実技の他に、生身での剣技や格闘技の授業もある。

 今使ったのは、外国の投げ技主体の格闘技の技だ。

 教官が一度使って見せたのを見ただけだったけど、土壇場で使う事が出来た。

 飛ばされたサファイア・ラークは空中で再度飛行形態に変形する。

 地面に激突しない様になるべく高く放り投げたのが良かったみたいだ。

 サファイア・ラークは、また警戒する様に上空を旋回する。

 二回も攻撃をかわされて攻めあぐねているみたいだ。

 結局、三回目の攻撃が来る前に、制限時間になる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ