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「しかし、何で俺がリーダーなんだ?」
おれ、ジルベールはぶつくさ言いながらも、現場と資材を確認しながら段取りを考える。
大きな麻袋を領民の人達が大量に用意してくれている。
その袋に土を詰めると、一辺が1.5メートルくらいの立方体に成る。
もちろん、その大きさの土の塊を人間は運ぶことは出来ないので、ゴーレムか精霊甲冑が必要になる。
土は川岸から少し離れた所で採取する必要が有るので、土嚢造りと運搬、設置は分担した方が良いだろう。
土嚢造りはアイラを含む精霊甲冑を器用に動かせる人達に任せ、運搬と設置は他の人に頼む。
「ミシェルは地元の地形を知っているから設置の監督を頼む。ウェンディはもしもの時の為に待機だ」
ウェンディの精霊甲冑、アクア・パールは一応水陸両用ではあるが、主に水中活動に重きを置いた機体で、陸上活動も可能だが、あまり得意とはしない。
川は濁流になっていて、幾ら水中活動が出来る機体でも水に入るのは危険だ。
しかし、彼女の精霊甲冑には特殊機能と言うか、固有魔法が有り、それを見込まれて今回の活動に参加する様に頼まれた様だ。
俺が指示を出すと、各機が持ち場に移動する。
俺も土嚢の運搬作業を担当する事にする。
精霊甲冑用のスコップは人間が扱うには大きすぎるが、精霊甲冑が持つと園芸用のミニスコップくらいにしか見えない。
アイラのバロン・ルージュはそのスコップを使って、器用に土嚢に土を詰めていく。
雨の日はやる気が出ないと言っていた彼女だが、流石に真面目に作業をしている。
俺にリーダーを押し付けたくらいだから、楽をしたいのかと思ったが、そう言う訳でもなさそうだ。
「雨の日はやる気が出ないとか言ってて、そんなに決闘に勝ちたいのか?」
テキパキと作業をする彼女に、俺は聞く。
「・・・別に。負けて失う物は無いし、こんな勝負に興味ないよ。ただね、ここで川が氾濫したらどうなる?」
アイラが逆に聞いて来る。
俺は再度、周囲を見回した。
「小麦畑が水没するか・・・」
今俺達が居る場所は、街から少し離れた田園地帯だ。
「確かに大変かもしれないけど、住宅地が水没するよりはマシじゃないかな?それにほら、川の氾濫で土が豊かになる事も有るんじゃないか?」
俺はそう言う。
「それはそうだけど、秋播きの小麦が収穫前なのよ。流されたら全部だめになる。それに、川の氾濫で確かに土地は肥えるけど、色んな植物の種も流れて来て、後で雑草取りが大変なのよ」
彼女は作業の手を止めずにそう言う。
つまり、アイラとしては二年生の先輩との勝負よりも、川の氾濫から農地と領民を守る事の方が大事なのだ。
ここは彼女の領地では無いのにもかかわらずだ。
その高潔さに俺は自分の小ささを恥じた。
出来上がった土嚢を運ぶ作業に戻る。
アイラ・マクディアスは領民の為になら全力で物事に当たる。
ならば、俺も自分に出来る事をしよう。
だが、一つ疑問が残った。
彼女は最善を目指しているが、それならば何故、俺をリーダーに指名した?
土嚢は人力では動かせないくらいの大きさだが、精霊甲冑からすると買い物袋程度の比率になる。
両手にひとつずつ持って、川まで運ぶ。
川岸ではミシェルが指示を出して、水が溢れそうな箇所に積んで行っている。
彼の精霊甲冑の操縦技術はまだまだで、自身で積むときの動きはぎこちない。
だが、意外にも指示の出し方は上手い。
彼にこの場を任せたのは正解だった様だ。
俺も自分の采配が的確だったことにほっとする。
この現場に引率に来ている教師はバイロンフォード先生を含み三名だけだ。
騎士学校の教師と言っても、全員が精霊甲冑の扱いに慣れている訳では無い。
俺達の担任のリサ先生も学校に残っている。
急な校外活動で指導が間に合っていないので、生徒が自主的に役割分担をする事で作業効率に差が出る。
見た感じ、俺達一年C組の班が一番良く動けている様だった。
アイラは勝負とかどうでも良いと言っていたが、この分なら二年生の先輩達にも勝てそうな感じだ。
「ねえ、リーダー!私、本当に何もしなくて良いの?」
川岸で待機しているウェンディ・マナドが俺に聞いて来る。
彼女の精霊甲冑、アクア・パールは水中では人魚形態に成る為に両足が、魚と言うか、イルカ等の水棲哺乳類のヒレの様に変形する。
その為、陸上を歩くのは苦手なのだ。
ならば、歩かなくても良い土嚢造りの方にまわせば良いのかもしれないが、彼女の機体はもしもの時の為に水の近くに居ていて欲しい。
「申し訳ないが、君は待機だ。川の様子を監視していてくれ」
俺はそう言って、彼女を宥める。
一人分の作業量が減るが、予備の人員は温存しておいた方が良いと思う。
雨が降り続ける空を見上げる。
定期的に川の様子を監視する為に、皇女様の飛行型の精霊甲冑が空に舞い上がって行くのが見えた。
しかし、少ししてから急降下して来た。
「上流から何かが流れて来ますわ!」
低空を飛びながら俺達に警告を発する。




