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アップルパイ・ナイツ  作者: O.K.Applefield
3章
26/30

3-4


 午前中に学校を出て、現地に着いたのは昼頃だった。

 昼食は少し早かったけど、馬車で移動中に学校が用意してくれたサンドイッチを食べた。

 雨が強く降っているので、すぐに精霊甲冑を呼び出して乗り込む。

「やはり来ましたわね、アイラ・マクディアス!」

 私達は同じクラスの人達で集まっていたけど、そこに、別のクラスらしい三体の精霊甲冑がやって来た。

 先頭は全身ピンク色、次いで紫、黄色に塗られた派手な機体ばかりだ。

 その三体に限らず皆が皆派手な為に、私の地味なバロン・ルージュが逆に目立ってしまう。

「丁度良いですわ!先日出来なかった決闘をいたしましょう!」

 ピンクの機体から発せられる声には聞き覚えがあった。

「あ、ええと?」

 とっさに名前が出て来ない。

「ジャンヌ!ジャンヌ・クレイトンですわ!」

 先日、私達の教室にやって来た二年生の女子が、改めて名乗る。

「スザンナだ」

「イライザさんの従姉妹のダリアですわ」

 紫と黄色の精霊甲冑の先輩達も名乗った。

「今はお仕事をしに来てますから、そう言うのは・・・それに前にも言った様に決闘を受けるつもりは有りませんから」

 私はやはり断る。

「おーい、今はそんな事している暇は無いぞ」

 現場の監督とか指導の為に来ているバイロンフォード先生もそう言ってくる。

「そんな事は分かっています!」

 ジャンヌ先輩が叫ぶ。

「だから、決闘と言っても、模擬戦じゃなくて、今回の課外活動でどっちがより活躍するかで勝負しようって事さ」

 何故か頭に血が昇っているジャンヌ先輩に代って、紫色の精霊甲冑のスザンナ先輩がそう言ってくる。

「はあ・・・?」

 私は曖昧に返事をする。

 言わんとする事は何となく分かるけど、社会奉仕活動を勝負事に使うのはどうかと思う。

「活躍で勝敗を決めると言うけど、具体的には?各クラスで班になって活動する訳だから、個人の活躍とか計り様が無いのでは?」

 私の隣に立つウェンディがそう言ってくれる。

 彼女の精霊甲冑はいつもの教導用精霊甲冑ではなく、マナド家所有の水陸両精霊甲冑だ。

 白と青で塗られていて、他の精霊甲冑とは少し違う形をしている。

「あ、ええと、それは・・・」

 ジャンヌさんが口籠る。

 どうやら、勝負の細かい所は考えていなかったらしい。

「そこは、ほら、団体戦にしましょう。お互いが所属する班が積んだ土嚢の数が多い方が勝ちで良いのではないかしら?」

 黄色のダリア先輩がそう提案する。

 彼女は声色に険が無く、喧嘩腰ではない。

「うーん、そう言われてもうちの班のリーダーは私じゃないしな・・・勝手に勝負に巻き込むのも・・・」

 私はそう言う。

「リーダーではないですって?では、誰がリーダーですか!?」

 ジャンヌ先輩が苛立った声を出す。

 私はジルベールを指差す。

 彼の精霊甲冑がビクリと肩を震わせる。

「あ~、ええと、一応リーダーです。俺の采配で負けて、それでアイラさんの不利益になるとなると嫌なんで、こう言う決闘は受けたくはないと言うか・・・」

 彼がそう言う。

 負けた時の事を先に考えるのは、少し後ろ向きかもしれないが、それでも私の事に気をまわしてくれているらしい。

 そう言えば、また何を賭けるのかを決めてはいない。

「別に負けた方に無理難題を押し付けるつもりは有りませんわ!勝者の栄誉だけを賭けますわ!」

 ジャンヌ先輩がそう言う。

「そう言う事ですから、気軽に受けてくれると嬉しいのです。ほら、この人ただ勝ちたいだけですから」

 ダリア先輩がジャンヌ先輩を指して言う。

 どうやら、決闘したくて仕方が無いのはジャンヌ先輩だけの様で、他の二人は付き合っているだけみたいだ。

 それにしても、前回教室に来た時に私にあしらわれた事を反省して、対策は考えている様だ。

 変に何かを賭けると、私が逃げると思っているらしい。

 こうなると断るのも難しい。

「はあ、分かりました」

 時間も無いので、私は渋々承諾する。



 例え雨空の下であっても、空を飛ぶのは気持ちの良い事だ。

 私は自分の精霊甲冑、サファイア・ラークを操り、眼下の土色に濁った川の様子を観察する。

 乱れる気流に揺られながらもゆっくり降下して、川岸に待機している学校のみんなの所に帰る。

 サファイア・ラークは飛行型精霊甲冑で、その名の通りひばり(ラーク)の様な鳥型をしているが、地上では胴部に格納していた足を展開して人の様に二足歩行出来るようになる。

 翼は背中側に折り畳むが、体積的に全体の半分も有るので不格好になってしまう。

 両腕は翼から分離して独立するが、細くて戦闘向きではない。

 私、帝国第一皇子の次女、イリアの精霊甲冑は空を飛んで敵陣偵察を主目的とする特殊型精霊甲冑だ。

「今のところ、氾濫している箇所は有りませんでした」

 引率のバイロンフォード先生に報告する。

「そうか、ご苦労。それじゃあ、急いで対処しなきゃいけない場所は無いな。総員、事前に知らせた担当箇所に土嚢を積んでいけ!焦らなくても良いぞ!」

 先生が、待機していた生徒達に指示を出す。

 今ここに居るのは騎士学校の二年生と一年生から選抜された生徒達である。

 三年生は少し前から校外実習で学校に居なかったので、今回は呼ばれていない。

「お疲れ様。君は休んでいたまえ」

 巨大な人馬型精霊甲冑に乗った異母兄が声を掛けて来る。

 普段は他の生徒に合わせる為と、基本操作を習う為に教導用精霊甲冑に乗る私達だが、こう言った事態に於いては、性能が優れていたり、他にはない機能がある帝室用の機体を出惜しみしたりはしない。

「イザーク兄様、何か楽しそうですね?」

 兄の声色のちょっとした違いに気付いて、私は指摘する。

「ん?そう見えるかい?実はさっき、二年のジャンヌ・クレイトン殿達が、アイラ君にまた決闘を申し込んだのだよ」

「こんな時にですか?」

 兄様の答えに私は呆れた声を出す。

「そこは一応わきまえているみたいで、今回の校外活動でより貢献した方を勝者とする事になったらしい。模擬戦では無いが、少し面白い事になりそうな予感がしないかい?」

 そう言う兄様に、私は更に呆れる。


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