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第五話:後日の迷宮

「あのあと魔力の痕跡を追いましたが、途中で途切れており、声の主は見つかりませんでした」


「そうか」


事件の数日後。ルイとシャーロットは一緒に迷宮の掃除をしていた。エアが彼女の犯行と同じ方法で殺され、あのあと迷宮は数日間封鎖された。魔法による殺人事件として魔導治安維持局による大規模な捜査の手が入ったが、事件に関与していたとみられる謎の女性は不明なままだ。


「ロットさんとエアさんは、元パーティーメンバーの僧侶さんが所属する寺院で埋葬したとのことです」


「・・・」


「それにしても、動機は意外なものでしたね。もっと男女間のものかと思っていたのですが」


ルイが自分で踏み割った石の床を張り替えながら話す。あのあとエアの身辺を調査したところ、ロットがエアから大金を借りていることが判明した。しかも返済を要求すると、火の魔法で火傷を負わせていじめていたらしい。二人がよく食事をする居酒屋では知られていたことらしいが、いい意味でビジネスライクな関係だったパーティーメンバーはまったく気づいていなかったという。いま思えば、パン屋さんで事情聴取したときに彼女の腕に巻かれていた包帯の下にはロットから付けられた火傷の跡があったのだろう。


「殺されても仕方がないな」


火傷させていじめていた相手に高温の熱で全身蒸し焼きにされる。因果応報ね、というシャーロットの言葉にルイが眉をひそめる。


「殺された方に、そうされても仕方がない理由はあると思いますが...。僕としては肯定できませんね」


「それは警察だから?」


シャーロットの言葉にルイが少し考え込む。


「分かりません。でも被害者がどんな悪人だろうと、殺すことを肯定してはいけない、と思います」


「・・・随分と優しくて綺麗な世界に生きてきたんだな」


シャーロットに鼻で笑われ、ルイが少しムッとする。しかし、ハッと何かを思い出したようにまたしゃべりだした。


「そういえば、調査中におかしなことを聞きましてね」


「なんだ?」


「宿屋の主人の話では、最近エアさんの部屋から毎晩誰かとしゃべっている声が聞こえてきたらしいです。でも、聞き耳を立てても聞こえるのはエアさんの声だけ。随分と気味悪がっていましたよ」


「・・・そうか」


「主人が言うことには『我らが父』とエアさんは相手に呼びかけていたそうで。宗教的なものか、それとも特定の誰かなのか、当局で調査中なのですが…」


『我らが父』という言葉を聞いた瞬間、シャーロットの手が一瞬ピクリと止まる。だが、あまり時間をおかずに再び黙々と掃除を続けた。その様子にルイは気づいていない。


「ところで、この大岩が落ちていたのってエアの魔法のせいなんですか?」


ルイが肉体魔法で砕き、今は通路に石の粒となって散乱している大岩だが、死体から少し歩いた先に落ちていた。下降気流ダウンバーストの発生時にでも落ちたのかとルイは推測したのだ。しかし、


「関係ないな。もともと崩落しやすい層だったから、単に風化して落ちてきただけだ」


シャーロットが天井を見上げる。迷宮はいつから存在しているのか、誰にも分からない。魔法歴史学者にも解き明かせなかった最大の謎だ。ただ、見るからに年季が入っている見た目は造られてから相当の年月が経過していることを物語っている。崩落したのは自然の流れだったのだろう。ほー、とルイは納得した表情で頷いている。


「ところで!シャーロットさんって、もしや女性ですか?普段は声が中世的で分からなかったんですが、抱えた時に随分小柄だな~と思ったので」


さっきまでの真剣な雰囲気はどこへやら、突如おちゃらけはじめたルイが興味津々にシャーロットへ近づく。シャーロットはそんな彼を鬱陶しそうに手で追い払った。


「邪魔だ、警察」


「警察呼びに戻った。またルイって呼んでくださいよ!」


「いいから、口じゃなく手を動かせ。仕事をしないなら帰れ」


「僕にそんなことを言っていいんですか?!せっかく、この前のパン屋さんでたくさんパンを買いこんできたのに」


ジャジャーンと自らの口で効果音を演出し、ルイがシャーロットを釣り上げようと、ポケットから取り出したパンが入った紙袋をゆらゆらと左右に揺らす。シャーロットは一瞬のスキを見逃さず、彼の手からシュゴォォォ!と素早く袋ごとパンを吸い取った。


「・・・ごちそうさま」


「ちょっと、また僕の分がないじゃないですか!2つくらい吐き出してくださいよ!」


パンをゲットするために、わざわざ朝から並んだのに!と、ルイが半泣きでシャーロットの防護服を揺らす。まだまだ元気そうにシャーロットにちょっかいをかけるルイだったが、彼はまだ知らなかった。今日は迷宮の15階層まで掃除をするため、このあと十数時間ぶっちぎりで掃除をし続けることになることを。


【第一の事件/おしまい】

「第一の事件:断熱圧縮編」を最後までお読みいただきありがとうございました!


現在、第二の事件を鋭意執筆中です。


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