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青春分岐点が増えていく  作者: こむぎ


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後悔よりも反省を

「……ふざけんなよ」


虎太が一条の胸ぐらを掴む。


「おい、一条……!」


拳を握り締める虎太。


「部長!」


伊織が慌てて虎太の腕を掴む。


「離せ、天川!」


「ダメ!」


「話して分かる相手じゃねえだろ!」


「でも、一番殴りたかったあっきーが殴らなかったんだから、部長がやったらダメ!」


「……」


虎太の拳が止まる。


伊織はそのまま虎太を見つめる。


「月姫が止めて、あっきーは止まれたんだから……部長も止まってよ」


虎太はしばらく黙ったあと、ゆっくりと拳を下ろした。


「……くそっ」


その時だった。


「一条くん?」


部室の入口から真央の声がした。


「虎太? 何があったの?」


真央が部室へ入ってくる。


一条は真央を見ると、気まずそうに視線を逸らした。


「……私は、これで失礼する」


バツが悪そうにそう言って、一条は部室を出ていった。


「……?」


真央が一条の背中を見送る。


「何があったの?」


虎太と伊織が、さっきまでの出来事を真央に説明する。


「……お姉ちゃんは、この事知ってたの!?」


奈緒が怒りにも似た声で尋ねる。


「え?」


真央は驚いた顔をする。


「知らない……そんな話、聞いてない」


「そんな一個人を追い詰めるようなこと……」


「生徒会のみんなも知らないと思う。少なくとも私は知らなかった」


伊織が口を開く。


「生徒会長も感じ悪いのはそうだけど……私、もっと嫌なのはあの副会長のツインテール」


「副会長?」


「うん。あの子、なんか嫌な感じがする」


真央は少し考える。


「……一条くんの性格的に、ここまで細かく資料を集められる人間じゃないと思う」


「……」


「多分、あの子……」


真央はそう呟き、言葉を止めた。



———その頃、月姫は涙を拭いながら、誰かを探すように駅の方へ歩いていく。


しばらく歩いたところで、学校帰りの美都と出会った。


「つ、月姫ちゃん?」


美都が月姫に気づく。


月姫は美都を見ると、思わず抱きついてしまった。


「わぁっ……!」


突然のことに驚く美都。


けれど、胸の中で泣いている月姫を見ると、優しく背中を撫でる。


「だ、大丈夫だよ……」


美都は月姫を落ち着かせながら、ただ事ではないことを感じ取る。


そしてユタカに連絡を入れ、美都は月姫を連れて彼らの最寄り駅まで向かった。


駅でユタカと合流すると、ユタカに呼ばれた雅人もやってくる。


「とりあえず、いつもの喫茶店行こう」


四人は馴染みの喫茶店へ向かう。


店に入ると、ユタカが店のおばちゃんに声をかける。


「おばちゃん、奥のテーブル借りるねー」


「はいはい、どうぞ」


四人は奥のテーブルにつく。


月姫は持っていた資料をテーブルの上に置き、みんなに見せた。


そして、よろずやで何があったのかを話していく。


ユタカと雅人は資料に目を通す。


「……間違っちゃないけど、ところどころおかしなところいっぱいだな」


雅人が資料を見ながら言う。


「だよな」


ユタカも頷く。


「とりあえず、今回の問題は花火の時のなんだろ?」


月姫が頷く。


「うん」


「その相手、地元の隣の中学だって言ってたよな?」


「うん……」


「じゃあ、俺が話つけてくるよ」


ユタカが笑顔になる。


「隣の中学なら、すぐ見つかるだろ」


雅人も資料を手に取る。


「じゃあ俺は、この資料を持って、駅で聞き込みされた奴らにこれを確認してみるよ」


「うん」


「生徒会と討論会って話もあるなら……」


ユタカが美都を見る。


「見積もりの件、美都の親父さんに頼めないかな?」


「え?」


美都が目を瞬かせる。


「見積もり?」


「うん。あっきー、最初は俺の親父に旧校舎の見積もりを頼もうとしてたんだよ」


「そうなの?」


美都は知らなかったように驚く。


「じゃあ、私のお父さんに頼めるか聞いてみる」


美都の父親の会社は、全国で名前を知られている超大手の建設メーカーだった。テレビCMも流れているほどの会社で、建設業界でも広く知られている。


「えっ……」


雅人が驚く。


「美都ちゃんの親父さん、そんなすげえ会社やってんの?」


月姫も驚いた顔で美都を見る。


「う、うん……まあ」


美都は少し照れながら頷いた。


「ま、任せて」


美都が言う。


ユタカと雅人は資料をテーブルに置くと、月姫を見る。


「月姫ちゃんは何がしたい?」


「え?」


突然聞かれて、月姫は戸惑う。


雅人も優しく聞く。


「今回のこと、月姫ちゃん自身はどうしたい?」


月姫は少し俯いて、しばらく黙る。


そして顔を上げる。


「……私は…あっくんのそばにいたい」


その言葉に、ユタカと雅人が顔を見合わせる。


「……そっか」


ユタカが優しく笑う。


「じゃあ、それでいいじゃん」


雅人も頷く。


「うん。月姫ちゃんは、あっきーのそばにいてあげて」


月姫は小さく頷いた。


「……うん」


「も、もう大丈夫だよ」


美都も優しく微笑む。


「…みんな……本当にありがとう」


涙ぐむ月姫。


「とりあえずバナナジュース飲もうぜ」


「前にあっくんときた時に教えてもらったんだ」


「美味しいだろ?」


と雅人。


「また一緒に飲みたい」


「すぐ飲めるよ。だから安心しな」


ユタカも言う。


落ち着きを取り戻した月姫。


次は私があっくんを支えるんだ!と強く決意する。



———その頃。旧校舎の前で、晃星は一人、地面に寝転んでいた。


ぼんやりと空を眺めていると、声が聞こえてくる。


「晃星?」


「…ん?」


下の名前で呼ばれて、晃星が体を起こす。


「あ、おばちゃん……」


そこにいたのは教頭だった。


「どうしたの? 元気ないじゃん」


「まぁ……ちょっとね」


晃星は苦笑する。


「昔の俺の素行が悪かったこと、いろいろ調べたみたいでさ。それを友達が悪いみたいに言われたんだよね」


「そっか……」


「それ聞いたら、目の前が真っ白になってく感じがしてよろずやのこととかも考えずに、暴れそうになっちゃって」


晃星は旧校舎を見る。


「自分で大事なもんを全部ぶっ壊しちゃうとこだった。」


少し黙ってから、晃星が呟く。


「今でもまだ、自分の感情のコントロールすらできない欠陥人間なのに……人の役に立つことなんて考えられないな」


「でも、暴れなかったんでしょ?」


「……うん」


「じゃあ、ちゃんと止まれたじゃん」


「月姫が止めてくれたんだよ」


晃星は少し俯く。


「泣きながらさ。それも、あんな必死になって……」


「……」


「それが申し訳なくて」


「晃星!」


教頭の声が強くなる。


「……え?」


「あんた、そんなにいい友達がいるのに、自分のことを欠陥人間とか言っちゃダメだよ!」


「……」


「自分で自分をそんなふうに思ってたら、あんたの周りにいる子たちが可哀想だよ!」


晃星は黙って聞いている。


「あんたもまだまだ子供なんだから、人に迷惑かけるなんて当たり前だよ?」


「……まあ、そうだけど」


「友達をバカにされて怒るのだって、普通のことでしょ」


教頭は晃星を見る。


「私、依頼の時に『一人じゃないだろ?』って聞いたでしょ?」


「うん」


「みんな晃星の味方なんだよ。ちゃんと助けてくれる子たちなんだから」


「……」


「だから、自分で自分の可能性を決めつけちゃダメ」


教頭は少し笑う。


「そんなことしたら、あんたの友達がどんな子たちなのかも知らないのに決めつけた生徒会と同じになっちゃうよ?」


晃星は少し考えてから、ふっと笑った。


「……そっか」


「そうそう」


「一時の過ちなんて、長い人生いくらでもあるんだから。そういう時は後悔するんじゃなくて、反省すればいいんだよ」


「うん」


「だから、いつもみたいに元気な晃星がみたいわ」


教頭が笑う。


晃星も笑顔を返した。


「おばちゃん、ありがと。なんか先生みたいだな」


「おばちゃんじゃなくて、教頭だからね!」


「ははっ」


「ふふっ」


二人の笑い声が、旧校舎の前に響いた。


「今日はもう帰りな」


「うん。そうする」


晃星は立ち上がり、制服についた土を軽く払った。


「おばちゃん、ありがとな」


「うん。気をつけて帰るんだよ」


「はーい」


晃星はいつものように軽く手を振る。


そして、校門へ向かって歩き出した。


少し歩いたところで、晃星は空を見上げる。


そのまま晃星は小さく息を吐き、歩き出した。

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