友達に恵まれすぎてる!
討論会まで、残された時間は二週間。
学園よろずやの四人は、旧校舎のリフォームについて具体的に調べるため、学校の外にも足を運んでいた。
学校の近くにある工務店やリフォーム業者を一軒ずつ訪ねていく。
「旧校舎のことで相談したいんですけど……」
「危険なところとか、リフォームが必要な場所を見てもらえませんか?」
「無料で見積もりしてくれるところってありますか?」
できるだけ費用を抑えられる方法を探しながら、相談に乗ってくれる業者を探していく。
さらに、商店街にも足を運んだ。
「旧校舎が取り壊されるかもしれないんですけど、何か聞いたことありますか?」
「昔の旧校舎のこと、何か知ってる人っていますか?」
商店街の店主たちにも話を聞いていく。
すると――。
「え? あの旧校舎、なくなっちゃうの?」
「昔、あそこで学校行事をやったこともあるんだよ」
「子どもたちが使える場所として残してほしいけどなぁ」
取り壊しを惜しむ声が、次々と聞こえてくる。
「そうなんだ……」
伊織が驚いたように呟く。
晃星も周囲を見渡す。
「学校の中だけじゃなくて、地域の人たちにも思い出があるんだな」
奈緒は聞いた話を一つずつメモしていく。
「これも討論会で話せるかもしれないね」
「うん」
虎太も頷く。
「リフォーム費用だけじゃなくて、地域の人たちがどう思ってるのかも、ちゃんと調べておこう」
四人は再び資料を手に取り、次の場所へ向かって歩き出した。
しばらく歩いていると、晃星がふと足を止めた。
「……あ!」
「どうしたの?」
奈緒が振り返る。
「いや、ちょっと思い出した」
晃星はスマホを取り出す。
「ユタカの親父さん、確か工務店やってたんだよな」
「ちょっとユタカに聞いてみるわ」
晃星はそのままユタカに電話をかけた。
「……あ、もしもし?」
『おう、あっきー!』
「ユタカ、今ちょっといい?」
『いいけど。あ、そうだ! 今ちょうどあっきーの話してたとこだわ!』
「俺の?」
『そうそう!』
ユタカが笑う。
『さっき美都から聞いたんだけどさ、駅にあっきーのこと調べてる童顔の美人女子がいたらしいぞ!』
「え? 俺のこと?」
『そう。南中の奴らに、桐生晃星って知ってる?って聞いてたらしい』
「ん? ファンかな?」
『とうとう世間があっきーの良さに気づいたな!』
「なんだよ、それ!」
二人で笑う。
ひとしきり笑ったところで、晃星が本題を切り出した。
「でさ、ユタカの親父さんって建築関係の仕事してるよね?」
『そうだけど?』
「実はさ、学校の旧校舎をリフォームする案を考えててさ。リフォームが必要なところとか、危険なところを一回見てもらえないかな?」
『旧校舎?』
「うん。それで、もしできるなら無料で見積もりとかもしてもらえないかなって」
晃星は少し申し訳なさそうに続ける。
「無理なら無理でいいんだけどさ」
『いや、あっきーの頼みならなんとかしてくれるように頼んでみるよ!』
「ほんと!?」
『おう! 親父に聞いてみるわ!』
「ありがとう、ユタカ!」
『任せとけ!』
電話を切る。
晃星はスマホをポケットにしまうと、ふっと笑った。
「持つべきものは友達だな!」
伊織が晃星を見て笑う。
「あっきーは友達に恵まれてるね」
「それは俺の自慢できるとこかな」
晃星はそう言って、嬉しそうに笑った。
その日の夜。
いつものように、晃星は月姫とゲームをしていた。
「そういえば、よろずやのみんな頑張ってるね!」
「まあなー」
晃星はゲームを操作しながら答える。
「とりあえず、あと二週間で学校側に、生徒会の案よりコストを抑えつつ、いい案を出さないといけないからな」
「有名大学に進学するためのエリート用校舎とか、運動部のフィジカルトレーニングルームとかだよね?」
「そうそう。あれよりコストを抑えて、ちゃんと学校にとって意味のある案を出さないと」
「でも、ユタカくんのお父さんにリフォームの見積もりをしてもらえるかもしれないんだよね?」
「うん。そこは結構大きいな」
晃星は少し笑う。
「伊織ちゃんにも言われたけど、俺ほんと友達に恵まれすぎてるわ」
「ふふっ。あっくん、珍しくやる気だね」
「珍しくってなんだよ!」
晃星も笑う。
「まあ、新学期早々いろいろあって疲れるけどさ」
晃星は笑いながら、ゲーム画面を見つめる。
「ゲームだけじゃなくて、月姫はいろんな話してくれるし、俺の話も聞いてくれるから楽しくてさ。なんか、こうやって話してると疲れが癒やされてくんだよね」
「……あっくん」
月姫は少し照れながら、嬉しそうに笑った。
「じゃあ、今日もいっぱい話そっか」
「そうしよう!」
二人はまたゲームを再開し、楽しそうに話しながら夜の時間を過ごした。
しばらくして、月姫がふと思い出したように口を開く。
「そういえば……明日、よろずやの話し合い、見学に行ってもいい?」
「えー、全然来てよ!」
晃星はすぐに答える。
「めっちゃ嬉しい!」
「……え?」
月姫が少し驚いた顔をする。
「そんなに?」
「だって月姫が来てくれるなら、楽しいじゃん!」
「……ふふっ」
月姫は思わず頬を緩ませる。
(あっくん、そんなに喜ぶなんて思ってなかった……)
そう思うと、胸の奥がじんわり温かくなる。
「……じゃあ、行くね」
「うん!待ってる!」
「……楽しみ」
月姫は嬉しそうに笑いながら、画面の向こうで頬を緩ませていた。
(……あっくん、かわいいなぁ)
そのまま月姫は、しばらくニヤニヤが止まらなかった。




