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青春分岐点が増えていく  作者: こむぎ


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できれば君は大人しくしてて

駅へ向かう途中、校門を抜けると、さっきまで月姫の周りにいた生徒たちもすっかりいなくなっていた。


月姫は立ち止まって、奈緒と虎太に振り返る。


「奈緒先輩。一ノ瀬部長……今日は一緒に来てくれてありがとうございました」


「ううん、全然いいよ。月姫ちゃんも大変だったね」


奈緒が優しく笑うと、虎太も頷いた。


「まあ、あれだけ囲まれてたらな。無事に学校から出られたなら何よりだ」


「ほんとにありがとうございました」


月姫は二人にぺこっと頭を下げる。


そして晃星の方を見ると、少し恥ずかしそうに口を開いた。


「……もう他の生徒もいないし」


「ん?」


「……腕組んで帰ろっか」


「えぇ!?」


晃星の顔が一気に真っ赤になる。


「ちょ、月姫!? 急に何言ってんの!?」


「……っ」


言った月姫自身も、みるみる顔を赤くしていく。


二人とも真っ赤な顔で、差し出しかけた腕をどうしていいのか分からず、その場で固まってしまう。


「…………」


「…………」


結局、どちらからも腕を組むことはできない。


「……じゃ、じゃあ帰ろっか」


「……うん」


二人は腕を組むことなく、そのまま並んで歩き始めた。


「じゃあねー! 気をつけて帰るんだよー!」


奈緒が手を振る。


「また明日なー!」


虎太も手を振る。


晃星と月姫も振り返って手を振った。


二人の姿が駅の方へ遠ざかっていく。


それを見送りながら、虎太が首を傾げた。


「……なあ、奈緒」


「ん?」


「あいつ、なんで人気者の月姫ちゃんからあんなにグイグイ言われるんだ?」


「…………」


奈緒は答えず、二人の後ろ姿を見つめる。


そして、頬をぷくっと膨らませた。


「……さあ?」


  二人で家に着き、リビングに入ると、伊織が二人を見て首を傾げた。


「あれ? 二人で帰ってきたんだ? なんかあったの?」


「いや、今日さ……」晃星が今日の出来事を話し始める。


「生徒会長が部室まで来てさ。生徒会が生徒と向き合って問題を解決すれば、こんな部活は必要ないって言ってた」


「え!? 生徒会長が?」


伊織が驚く。


月姫は少し俯きながら、続けた。


「……それなのに、私みたいに男の人に付きまとわれたりして困ってる子はどうするのって、あっくんが聞いてくれたの」


「うん」


「そしたら……『そんなものは自分でなんとかしろ!!』って言われた」


月姫はそう言って、さらに少し俯いた。


「……」


伊織と晃星の母が顔を見合わせる。


そして――。


「「向き合う気ないじゃん」」


二人の声がぴったり重なった。


「だよなぁ……」


晃星も苦笑する。


「『生徒と向き合う』って言っておきながら、即突き放すなんてそれはないでしょ」


伊織は呆れたように言うと、すぐに表情を変えた。


「明日来たら、私がガツンと言ってあげるよ」


「え?」


月姫が顔を上げる。


「伊織……問題大きくしちゃダメだよ」


「任せて!」


胸を張る伊織。


その横で、晃星は嫌な予感しかしなかった。


(……うん。問題が大きくなる気しかしないから、やめて)


晃星は心の中でそっと呟いた。


その頃、生徒会室では――。


一条龍成と副会長である藤宮梨愛が、生徒会室で向かい合っていた。


藤宮梨愛は、いつものようにニコニコとした笑顔を浮かべながら、一条を見る。


「一条先輩、さっきはよろずやの一年にかなり踏み込まれちゃってたね!」


「……あの生意気な一年はなんなんだ!」


一条は苛立ったように机を叩く。


「生徒会長である俺に、あそこまで言ってくるとは……!」


「まあまあ」


藤宮は楽しそうに笑う。


「私が調べておくね」


「調べる?」


「うん。あの一年生が何者なのか、ちょっと気になるし」


藤宮はそう言って、さらに嬉しそうに微笑んだ。


「あんなに先輩に物怖じする事なく自分の意見を言うなんて面白くて」


「……面白い?」


「そう」


藤宮は楽しそうに目を細める。


「だから、楽しみにしててくださいね。一条先輩」

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