いざ!!餃子パーティー
二人の姿が見えなくなると、ユタカがニヤニヤしながら口を開く。
「あいつ、デレデレだったな」
「だな」
雅人も笑いながら頷く。
すると、結衣が月姫の後ろ姿を見ながら笑った。
「月姫ちゃん、頑張ってるね」
「かなり頑張ってるな」
雅人も頷く。
その横で、伊織はソファで眠っているママに目を向けた。
「……」
伊織は静かに立ち上がると、近くにあったタオルケットを手に取った。そして、起こさないようにそっとママの身体にかける。
みんなのほうを振り返ると、人差し指を口元に当てた。
「シーッ」
そして、あっきーの部屋を指差す。
「……あっきーの部屋に移動しよ」
みんなも静かに頷き、音を立てないようにリビングを出ていった。
あっきーの部屋に入ると、ユタカが伊織を見る。
「伊織ちゃん、優しいよな」
「え?」
「なんか、あっきーみたいだな」
「私が?」
「うん。周りのことちゃんと見てるところとか、似てる気がする」
結衣も頷いた。
「うん。私もそう思う」
伊織は少し照れたように笑った。
「……ママ、退院してまだそんなに経ってないし……いつも遊びに連れてってくれたり、送り迎えとかまでしてくれるから」
少しだけ声を落として続ける。
「だから、休める時はちゃんと休ませてあげないと。無理してほしくないしね」
「……」
みんなが伊織を見る。
伊織は少し考えてから、
「じゃあ、ママが起きた時に一人だとびっくりするから、私ママのところにいるね」
そう言って、リビングへ戻っていった。
雅人が感心したように呟く。
「ほんと娘じゃん」
「ほんと優しい子だね」
結衣も笑う。
「ああいうこと自然にできる子ってあっきー以外でもいるんだな」
ユタカも頷いた。
しばらくすると、ユタカが時計を見る。
「つか、あっきー達遅くね?」
「確かに」
雅人も頷く。
結衣が冗談っぽく言う。
「二人で遊びに行ってたりして」
ユタカと雅人が顔を見合わせる。
「まさか」
「いや、でも……ある?」
ユタカがニヤニヤする。
「夏休みの最後に、忘れられない思い出作ってたりして?」
「あんた達、バカなの?」
結衣が呆れたように言う。
「「あっきーだもんね」」
二人はすぐに真顔になった。
しばらくして、玄関のほうから声が聞こえてきた。
「ただいまー!」
あっきーと月姫が帰ってきた。
「お、帰ってきた」
ユタカが笑う。
二人がリビングに入ってくると、ユタカがニヤニヤしながら声をかけた。
「おせーよ、お前ら」
「え? そんな遅かった?」
あっきーが時計を見る。
「いやー、あまりにも遅かったからさ。二人で夏休み最後の思い出作ってたりしてんのかなーって思ってたわ」
「はぁ!?」
あっきーが驚いた顔をする。
月姫も少し顔を赤くする。
「な、何言ってるの!?」
すると月姫が、笑いながら説明した。
「あっくんの友達と会っちゃって……」
「え?」
ユタカが首を傾げる。
「友達って、ヒロキとかたかちゃん? それかトモキ?」
月姫は首を横に振る。
「ううん。もっと小さい子」
「……小さい?」
「うん。猫ちゃん」
「猫!?」
ユタカが思わず声を上げる。
月姫が笑いながら続けた。
「首輪してたから飼い猫だと思うんだけど、すごくあっくんに懐いちゃって」
「最近よく見る猫でさ、会うといつも触ってたら懐いちゃって」
あっくんも笑う。
「歩こうとしても足にスリスリしてくるし、止まってもずっと離れないんだよ」
「ふふっ。ほんとずっとだったよね」
月姫も楽しそうに笑う。
「だから、ちょっと一緒に遊んでたら遅くなっちゃったの」
「猫にはいつもモテるな!」
ユタカが笑う。
「人間の女からはモテないって言いたいのか!?」
あっくんも笑いながらツッコむ。
その時、あっくんがふとソファを見る。
「……それより、なんで伊織ちゃん寝てるの?」
ソファでは、伊織がタオルケットをかけてもらったまま、気持ちよさそうに眠っている。
あっきー達が帰ってきたタイミングで目を覚ましたママが伊織を見ながら、優しく笑った。
「私が寝ちゃってね。伊織ちゃんだけ一緒にいてくれたんだけど、そのまま一緒に寝ちゃったんだろうな」
「ああ……そういうことか」
あっくんが伊織を見る。
ユタカもソファのほうを見る。
「伊織ちゃん、優しいな」
「うん」
結衣も頷く。
「あっきーくんのお母さんが一人にならないように、ずっと一緒にいてくれたんだ」
あっくんは少し笑って、
「伊織ちゃんらしいな」
と呟いた。
月姫も伊織を見ながら、優しく笑う。
「伊織はほんと優しいから」
リビングに、穏やかな空気が流れた。
そんな穏やかな空気の中、あっきーママがふと思い出したように口を開いた。
「そうだ、みんなに聞くことあるんだけど」
「何?」
あっきーが聞く。
「今日はあっきーの好物の手作り餃子の予定だったんだけど、ユタくん達も一緒に食べてく?」
「え? いいの?」
雅人が驚いたように聞く。
「でも、申し訳ないな」
すると、あっきーママがニコッと笑った。
「その分、働いてもらうから!」
「働く?」
「買い出しとか餃子包むの手伝ってもらうの!」
雅人が笑う。
「なるほど」
すると月姫が思い出したように口を開いた。
「あっくんママ、ランチの時に話してた餃子の作り方、今日教えてもらってもいい?」
「全然オッケー!!」
あっきーママが嬉しそうに笑う。
「月姫ちゃん、一緒に作ろうね」
「うん!」
月姫が笑顔で頷く。
「お昼の時に、あっくんがママの餃子大好きって聞いたから、私も作れるようになりたいなって」
「じゃあ今日は、月姫ちゃんにしっかり教えないとね」
「お願いします!」
二人が楽しそうに話していると、ユタカが口を開いた。
「俺はいいよ。彼女のところ行くから」
「じゃあ彼女も連れてきたらいいじゃん!」
「え?マジで?」
「一人増えるくらい問題ないって!」
あっきーママは胸を張る。
「ホットプレート二台使って、ジャンジャン焼けばいいんだから!」
ユタカは少し考えてから苦笑した。
「俺の彼女、あっきーは会ったことあるじゃん?」
「ああ、あるある!めっちゃ美人だよな」
あっきーも頷く。
「前に会った時も、あっきーのこと『面白いし、話しやすい』って言ってたけど」
「そうだった気もするな」
あっきーも思い出して笑う。
「たださ……あいつ、お嬢様育ちだから基本、ちょっとコミュ障みたいなとこあるんだよな」
ユタカが少し心配そうに続ける。
「俺とは普通に話せるけど、知らない人がいっぱいいると結構固まるんだよ。だから、いきなりこんな人数のところに連れてきて大丈夫かなって」
あっきーが笑って言った。
「聞いてみたら?」
「そうだな」
ユタカはスマホを取り出した。
「ちょっと聞いてみるわ」
あっきーママが笑う。
「連れてきたらいいじゃん! 一人増えるくらい本当に問題ないから」
「ホットプレート二台あるしな」
あっきーも笑う。
「そうそう。ジャンジャン焼けばいいんだから!」
ユタカはスマホを操作しながら、
「じゃあ、聞いてみる」
と笑った。
すると、あっきーママが急に張り切ったように立ち上がった。
「じゃあ、明日から学校だから、今日は早めからやろっか!」
月姫がすぐにママを見る。
「あっくんママ、退院してまだそんなに経ってないんだから、私がやるから無理しないで」
ママが嬉しそうに月姫を見る。
「ありがと!」
そう言って、月姫をぎゅっと抱きしめる。
「わあっ……!」
月姫は驚きながらも、嬉しそうに笑った。
「じゃあ、追加の材料を雅人くんと結衣ちゃんと息子に買ってきてもらおうかな!」
「全然行くよ!」
雅人が頷く。
「じゃあお願いね!」
あっきーママはテキパキと指示を続ける。
「ユタくんは彼女を迎えに行って、月姫ちゃんは、とりあえずある分の材料だけ下ごしらえしよっか」
「うん!」
月姫が笑顔で頷く。
「じゃあ俺、彼女迎えに行ってくるわ」
ユタカもスマホを手に取った。
「気をつけてね!」
そして、あっきーママがソファを見る。
そこでは伊織が、タオルケットをかけられたまま気持ちよさそうに眠っていた。
「あと伊織ちゃんは……」
ママが伊織を見て、ふっと笑う。
「このままで!!」
「「あははは!」」
みんなが笑う。
「まあ、今日はいっぱい遊んだもんね」
月姫も眠っている伊織を見ながら、優しく笑った。




