いざ!旧校舎!
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夕暮れが近づく頃。
晃星と奈緒は学校へとやって来ていた。
この日、晃星がこの学校を訪れるのは初めてだった。
普段は生徒たちで賑わっている校舎も、放課後を過ぎた今は少しずつ静かになっている。
「……」
奈緒は校門をくぐったあたりから、どこか落ち着かない様子だった。
旧校舎の方を見ては。
すぐに目を逸らす。
「ち、ちょっと先生から鍵借りてくるから」
奈緒はそう言って、部室の方を指差した。
「ぶ、部室で待ってて」
一度。
大きく息を吐く。
そして。
「……いや」
晃星が奈緒を見る。
「一緒に行きますよ」
「え?」
「鍵借りるだけなんですよね?」
「そ、そうだけど……」
奈緒は少し迷う。
けれど。
「……うん」
小さく頷いた。
二人は職員室の方へ向かう。
その途中。
「奈緒先輩」
「ん?」
「本当に大丈夫なんですか?」
「……何が?」
「旧校舎」
「……」
奈緒の足が一瞬止まる。
「だ、大丈夫だけど?」
「絶対嘘ですよね」
「怖くないし」
「手、震えてますよ」
「震えてない!」
奈緒は慌てて手を後ろに隠した。
晃星は思わず笑う。
「怖いなら奈緒先輩も待ってていいですよ」
「……」
奈緒は少しだけ俯く。
「でも」
「ん?」
「晃星くんだけだと、色々大変になっちゃうから」
「……」
「だから、一緒に行く」
本当は。
怖い。
ものすごく怖い。
でも。
――伊織ちゃんが行かないなら。
あきくんと二人になれるかもしれない。
そんな期待もあって。
奈緒は自分から一緒に行くと言ってしまった。
「……分かりました」
晃星は渋々頷いた。
「でも、本当に無理なら言ってくださいね」
「うん」
二人は先生から旧校舎の鍵を借りた。
奈緒は鍵を受け取る。
「……よし」
一度。
深く息を吐き、晃星を見る。
「行こう」
「お」
奈緒は意外にも、ズンズンと旧校舎へ向かって歩き始めた。
「急に元気になりましたね」
「べ、別に?」
旧校舎へ近づく。
日が沈みかけ。
校舎の中はすでに薄暗い。
さすがの晃星も。
「……」
少しだけ。
旧校舎を見上げた。
「雰囲気ありますねー」
楽しそうな晃星。
その横で。
奈緒は。
「……」
明らかに勢いを失っていた。
「……」
足が。
少しずつ。
後ろへ下がっていく。
晃星が気づく。
「……奈緒先輩?」
「じゃ、じゃあ行こっか」
「……」
さらに一歩。
後ろへ下がる。
「下がっとる!!」
「さ、下がってないよ!」
「めっちゃ下がっとる!!」
奈緒は顔を赤くする。
「……全然怖くないからね」
晃星は笑いながら鍵を受け取った。
「じゃあ、俺が開けますね」
「……うん」
晃星が鍵を鍵穴へ差し込む。
カチャ。
「……あれ?」
回らない。
もう一度。
カチャカチャ。
「……開かない」
「え?」
晃星が奈緒を見る。
「もしかして奈緒先輩……」
「……」
「鍵、間違えた?」
奈緒は黙る。
「……」
「……おいぃぃぃぃ!!」
晃星が思わず爆笑する。
「な、なんで笑うの!?」
「いや、だって!」
「だってじゃないよ!」
奈緒は顔を真っ赤にする。
晃星は笑いながら。
「はぁー、マジでこういうとこあるから奈緒先輩可愛いんだよなー」
「……っ!」
奈緒は一瞬。
言葉を失った。
そして。
さらに顔を赤くする。
「……わ、私の方が先輩なんだから、そ、そういうこと言わないでよ……」
晃星は笑いながら扉に手をかけた。
すると。
「……あれ?」
ギィィ……。
扉が。
ゆっくりと開いた。
「……え?」
「……」
「開いてるけど……?」
晃星が振り返る。
その瞬間。
「ひゃっ!?」
奈緒が晃星の腕にしがみついた。
「……奈緒先輩?」
「な、なんで開いてるの……?」
二人の目の前に………
誰もいないはずの暗い旧校舎が、口を開けるように静かに広がっていた……




