人を暇つぶしのオモチャにするんじゃない!!
依頼当日の朝。
晃星が部屋でゴロゴロしていると、スマホが鳴った。
奈緒先輩からだ。
ずっと学校にいるのも気が滅入りそうだし、時間までカフェかどこかで時間潰そうか?
「確かに」
晃星は返信する。
じゃあ夕方、駅で集合しますか?
すぐに返事が来た。
そうしようか
待ち合わせまではまだ時間がある。
晃星はスマホを置き、再びベッドに寝転がった。
その時。
ガチャ。
「あっきー」
「おーい」
「いきなり入ってくんなよ」
部屋に入ってきたのは雅人と、その彼女の結衣だった。
「いつもでしょ」
二人は勝手に部屋へ入り、くつろぎ始める。
結衣が部屋を見回した。
「なーんだ。伊織ちゃんか月姫ちゃんいるかなって思ったのに」
「いや、そうそういないよ!?」
「あ、昨日は伊織ちゃんいたな」
「ほらー」
「母さんと買い物行ってただけだぞ」
「月姫ちゃんは?」
「電話してたくらいかな」
結衣が少し笑う。
「一番意外なのは月姫ちゃんだよね」
「何が?」
「月姫ちゃんが自分から男の子と楽しそうに連絡取るなんて、あっきーくんぐらいじゃない?」
「あ、そうなん?」
雅人が聞く。
「他の男相手だと下心が見え見えだったり、格好つけようとするからめんどくさいって言ってた気がする」
「へぇー」
晃星は特に気にした様子もない。
「普通に話しやすいだけじゃない?」
雅人と結衣は顔を見合わせた。
「……まあ、いいや」
「何だよ」
「別にー」
晃星は二人を見ながらため息を吐く。
「ていうかさ、デートの最中に暇だから寄るのやめてくれる?」
「ははは!」
雅人が笑った。
「今日予定あんの?」
「夕方から依頼」
「よろずや?」
「うん」
「誰と?」
「奈緒先輩」
「二人で?」
「依頼だからな」
結衣がニヤニヤする。
「奈緒先輩かわいい?」
「んー。その辺にいたら際立つくらい綺麗かな」
「月姫ちゃんと伊織ちゃんよりも?」
「あー、確かに」
晃星は何も考えずに笑った。
「それくらい美人かもね」
「……」
「……」
雅人と結衣が顔を見合わせる。
「何?」
「いや」
結衣がスマホを取り出す。
「あ、伊織ちゃんと月姫ちゃんに写真送ろ」
「なんで?」
「面白そうだから」
「やめろって」
「はい、撮るよー」
「ちょっと待てって!」
パシャ。
結衣は晃星の部屋で三人が写った写真を撮り、伊織と月姫へ送った。
すると。
ピコン。
結衣のスマホより先に晃星のスマホが鳴った。
「早っ」
月姫からだった。
『なんであっくんの家にいるの?』
「これだけ」
結衣が笑う。
「気になるんだねー」
「俺に聞いてるわけじゃないだろ」
すると今度は伊織から。
『奈緒先輩に変なことするなよ』
「なんだよそれ」
雅人が聞く。
「奈緒先輩と何かあったの?」
「あー」
晃星は何気なく答えた。
「前の依頼で手繋いで買い物してたくらい」
「「は?」」
雅人と結衣が固まる。
晃星は事情を説明した。
奈緒先輩の友達から受けた依頼で、依頼人の弟と一緒に父親への誕生日プレゼントを買いに行った。
その時、晃星と奈緒先輩がラブラブじゃないと、その弟が悲しそうな顔をした。
「だから仕方なく、手繋いで買い物してた」
「……」
結衣がスマホを見る。
「もう二人に送った?」
雅人が聞く。
「うん」
「何を!?」
晃星が叫ぶ。
結衣は笑顔でスマホを見せる。
そういえば前の依頼で奈緒先輩とあっきーくん、手繋いで買い物してたらしいよ〜
「お前ぇぇぇ!!」
その直後。
ピコン。
晃星のスマホが鳴る。
月姫からだった。
『あっくん?』
「ん?」
続けて。
『昨日、デレデレしないって言ったよね?』
「あれ?」
結衣が吹き出した。
「来たねー」
「いやいや」
晃星は首を振る。
「月姫は優しいから。そんなことで怒らないって」
「……」
「……」
雅人と結衣が顔を見合わせる。
晃星はすぐに返信した。
いや、これ前の依頼の話だよ!
そして事情を説明する。
奈緒先輩の友達からの依頼だったこと。
弟が二人をラブラブだと思わないと悲しそうな顔をしたこと。
だから仕方なく手を繋いでいただけだったこと。
少しして。
月姫から返信。
『そっか』
「あ、ほら」
晃星が胸を張る。
「月姫は優しいから」
しかし。
続けてもう一件。
『ずっとじゃなくてよかったよね?』
「……」
「あれれ?」
晃星が首を傾げる。
「どうした?」
「いや」
晃星はスマホを見る。
「なんか、怒ってる?」
「やっと気づいた?」
「でも月姫は優しいから」
「まだ言う!?」
すると。
今度は伊織から連絡が来る。
『聞いてないけど!』
「……」
続けて。
『どゆこと?』
「何でみんな怒るんだよ」
晃星は伊織にも事情を説明する。
すると。
少しして返信。
『まぁ、依頼の時にしっかり聞きます』
「……」
「怒ってるね」
結衣が笑う。
さらに。
『あっきーママには言っておいたから』
「お前、何歳だよ!?」
晃星の叫びが部屋に響いた。
雅人と結衣は腹を抱えて笑っている。
「伊織ちゃんは分かりやすいな」
「月姫ちゃんは?」
「あれ、やっぱちょっと怒ってるのかな」
「伊織ちゃんはともかく、月姫ちゃん可哀想すぎるだろ」
雅人がため息を吐く。
「何で?」
「……」
雅人と結衣は顔を見合わせる。
「本当に分かってない」
「何がだよ」
結衣もため息を吐いた。
「もういい」
「何なんだよ!」
結局、最後まで二人は教えてくれなかった。
しばらくして。
晃星は時計を見る。
「そろそろ準備するか」
「もう行くの?」
「駅で待ち合わせ」
「奈緒先輩?」
「うん」
結衣がニヤニヤする。
「今日は手繋ぐなよ?」
「繋がねぇよ!」
「本当に?」
「依頼だって!」
晃星は必要なものを準備すると立ち上がった。
「じゃあ行くわ」
「俺らも帰るか」
「あの、本当にデートの途中で暇だからって寄るのやめてくれる?」
「また言ってる」
「本気で言ってんだよ!!!」
雅人と結衣を見送り、晃星は家を出た。
そして夕方。
待ち合わせ場所の駅へ向かう。
少しすると。
「晃星くん」
聞き慣れた声がした。
振り返ると、奈緒先輩が手を振っていた。
「お、奈緒先輩」
「待った?」
「全然」
「よかった」
奈緒先輩は笑う。
「じゃあ、まだ時間あるしカフェでも行こっか」
「そうですね」
二人は駅を出て歩き始めた。
その少し離れた場所。
「……」
「……」
雅人と結衣がいた。
「なんかドキドキしますね」
「静かに」
「で、何してんの俺ら」
「尾行」
「なんで?」
「面白そうだから」
「否定できない。」
そう言いながら。
雅人も結衣の後を追った。
遠くから奈緒先輩を見る。
「……いや」
結衣が小声で言う。
「奈緒先輩、これ可愛い過ぎ」
「可愛いな」
雅人も頷く。
「あっきーが美人って言ってたのも分かる」
しかし。
雅人が奈緒先輩をじっと見る。
「……あれ?」
「ん?」
「奈緒先輩って人」
雅人は首を傾げた。
「どっかで見たことあるような……」




